最終更新:2024/5/1
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【僕に下さい。】 (ぼくにください。) 男性2人:女性2人。 お祭り騒ぎがしたい時に、テンションで全てを解決して下さい。 全然関係ないんですけどモーニング娘。さんの「ハッピーサマーウエディング」が2020年でリリースから20周年なんですね。 有償版販売ページは
こちら
。 【織田博信(おだひろのぶ)】 40代男性。サラリーマン(係長) 一人娘の佳苗に「会って欲しい人がいるの」と言われ、玄関先でいざ迎えたら職場の年下上司だった、 人生最大の煮え切らない微妙な感情を抱えている織田家大黒柱。 頭髪以外はまだまだ元気なちょっと頑固なおじさん。最近頭頂部がちょっと気になる。 この本を読んでいて一番大変な目に遭う人。 【織田多恵子(おだたえこ)】 40代女性。パート(スーパーのレジ)。 佳苗(一人娘)がイケメンを連れてきたのではしゃいでいる。 博信(夫)の事が大好きなので、夫も自分の事が好きで自分の言動を面白がってくれていると 絶対に信じてやまないお茶目なマイペースアグレッシブエレガントお母さん。 最近博信のシャンプーをこっそりお高めな物に買えたのに気付いてもらえてないのがちょっと不満。 【織田佳苗(おだかなえ)】 20代女性。アパレル勤務。 お茶目なマイペースお母さんの血を引いてお茶目なアグレッシブお姉さんに成長した織田家の一人娘。 両親(博信・多恵子)が自分を愛していて、自分の言動を面白がってくれていると絶対に信じてやまない。 心身共に大変健全に育った故の行動力がすごい。洗濯物をお父さんの洗濯物と一緒に洗濯されても、 寧ろ、あ、お母さん洗濯してくれたんだ、ラッキー!と怒らないタイプの娘。もうすぐ三十歳。 【遠野良美(とおのよしみ)】 30代男性。サラリーマン(部長) 佳苗と健全なお付き合いを二年程続け、織田家にやって来た、真面目が過ぎる仕事熱心でうっかりさんな青年。 いざ結婚の申し込みだ!と意気込んで織田家を訪ねた所、直属の部下の博信が玄関先で唖然としていたので 「あ、知ってる人がいる!よかった!」とすっかり緊張がとけてしまっている。 織田博信 : 織田多恵子: 織田佳苗 : 遠野良美 : ======================================= <織田家、リビング。四人でテーブルを挟んでいる。良美が勢いよく頭を下げる。> 001良美 :お父さん! 娘さんを僕に下さい! 002博信 :……。 003佳苗 :お父さん。 004多恵子:お父さん、何か言ったらどうなんですか。 005博信 :駄目だ。 006良美 :お父さん! 007博信 :お父さんと呼ぶんじゃない! 008良美 :じゃあ部下! 009博信 :もっと駄目だろ!? この場において最も駄目だろ!? 010佳苗 :どうして!? お父さんの上司のトオノさんはすごく仕事ができる人だって、いつも褒めてたじゃない! 011博信 :それとこれとは話が違う! 012良美 :僕のどこに問題がありましたか、オダさん! コンプライアンスですか!? 013博信 :途端社内の空気持ち込むの止めて! 胃が痛いから止めて! 014多恵子:オダ的には不満はないんだけれど、ねえ。 015博信 :母さんは黙ってなさい! オダを代表するんじゃない! 016佳苗 :お父さんより仕事もできるし、お父さんよりお金持ってるし、お父さんより頭髪の心配もないのよ!? どうして駄目なの!? 017博信 :サラッと父さんの頭髪に言及するお前の性根が気に入らないんだよ! 018多恵子:お父さん、言い過ぎですよ。 019博信 :さっき娘の言った事聞いてた!? 020良美 :僕は言及していません、オダさん! 娘さんを僕に下さい! 021博信 :駄目だ! お父さんでいいから! ここあなた以外全員オダなんで! もうお父さんでいいから! 022良美 :……お父さん……! <ちょっと和解できた風> 023博信 :まだ娘をやるとは言ってないんだからね!? ちょっと和解できた風にするの許さないからね!? 大体、その……カナエはどうして父さんと同じ会社からチョイスしたんだ。 え? 娘婿が上司、上司って! 父さんな、お前に言わなかったけど年下の上司ってちょっとこう、……なあー!? 時代すごいなー! 令和だもんなー!? 父さん時代にどうついていけばいいか、まだわかってないんだぞ!? 024佳苗 :だって、お父さんがトオノさんの事、すごく褒めてたから……。 025良美 :オダさん……! <ちょっと和解できた風> 026博信 :まーだ! まだ和解してないからね!? 今実況見分してるからもうちょっと待ってね!? 027多恵子:ほらほら、とりあえずお茶でも召し上がって下さい。 バームクーヘンもありますよ、バームクーヘン。 028良美 :あ、恐縮です、頂きます。 029博信 :……お父さんが褒めてるからって、その。 カナエの生涯を任せる相手なんだぞ。 お前はそれでいいのか? 030佳苗 :うん。 お父さんの話なら間違いないと思ったし、それに実際お付き合いしてみて、 031多恵子:これね、七福堂(しちふくどう)で買ったの。 知ってる? 洋菓子さん! 032良美 :ああー、あの名店の! あそこのショートケーキ、僕大好きで! 033多恵子:まあ! 今度用意しておくわね! 034良美 :ああそんな、今度は僕が買ってきますよ! 035佳苗 :だから、お父さんにもお母さんにも、みんなにおめでとうって祝福されて結婚したいの! 036博信 :ちょっとごめんな娘。 妻ぁ! 盛り上がってるんじゃないよ妻ぁ! 娘すごく良い事言ってたよ!? 037多恵子:あらやだお父さん、ヤキモチ妬いちゃって。 038博信 :妻ぁ! そうじゃないんだ妻ぁ! 娘の話聞いてたぁ!? 何ショートケーキって!? 039多恵子:お父さん、以前ナカタさんから頂いてますよ。 あの名店七福堂のショートケーキ。 040博信 :そうじゃないんだよ! 041多恵子:やーね、お父さんったら騒いじゃって、ごめんなさいね。 カナエはうちの一人娘だから。 それに、カナエってばお父さんっ子だったから。 お父さんも寂しいのと、ちょーっとね、頭が、ね? 042良美 :頭が。 043佳苗 :そうそう。 頭がね。 044博信 :頭アタマ連呼するんじゃない! 045多恵子:頭が固いって話よ? ねえ? 046佳苗 :ねー。 047良美 :ねー! 048博信 :三対一は卑怯だろ! キミ、キミも混ざるんじゃないよ! 049多恵子:じゃあ、私達もお父さんの話を聞きますから。 050博信 :三対一は否定しないんだな……! 051多恵子:お父さんも二人の話、聞いてあげて下さいな。 ほら、バームクーヘンもありますから。 052博信 :……まあ、そうだな。 とりあえず話は聞こうか。 053多恵子:ところで、バームクーヘンってどういう意味か知ってる? ドイツ語で木のケーキって意味でね、 054博信 :母さん母さん、今バームクーヘンの話はいいんだよ。 なんで今日はそんなにバームクーヘンを推してくるんだ。 055多恵子:ほら、二人もこのバームクーヘンみたいに年輪を重ねてって、 056博信 :終着点が遠いんだよ、母さんの話は! 私が話すからちょっと待ってなさい! ……あー……その、なんだ……。 057佳苗 :……。 <固唾を飲んで博信の言葉を待っている。> 058良美 :……。 <なんの話が飛び出すんだ?と思っている。> 059多恵子:……。 <お父さん頑張って!と思っている。> 060博信 :──……そう見つめられたら、それはそれで話しにくいんだが。 061良美 :成程、素直にお喋りできないと。 062博信 :津波のようにボケ倒してくるじゃない……。 キミ、会社でのキミとギャップがすごいな。 こんな所で知りたくなかったよ。 063良美 :恐縮です。 064博信 :あー……ああ、そうだ。 二人は、その。 そういう付き合い始めてどれくらいになるんだ。 065多恵子:やだお父さん。 新婚さんがいらっしゃいな番組の見過ぎですよ。 もっとリラックスして。 066博信 :じゃあどう切り出せばいいんだ。 067多恵子:今からアタックチャンスにしますか! 068博信 :母さん、お茶目はいい加減にしなさい。 069多恵子:まあ、ふふ、アタックチャンスに成功したから、ふふふ、こうしている訳なんですけれども。 070博信 :言いながら面白くなってるんじゃないよ! 071良美 :ほんとだ。 カナちんのお父さんとお母さん、すごく仲が良いんだね。 072佳苗 :でしょ? よっちんも絶対好きになってくれると思ったんだ! 073博信 :ほらそこイチャイチャしない! ん!? カナちん!? よっちん!? 074佳苗 :結婚したら、ちゃんとヨシミさんって呼ぶもん。 075良美 :僕も、結婚したらカナエさんって呼びます! だから娘さんを僕に下さい! 076博信 :駄目! 隙あらばか! いい度胸だ! 077多恵子:ほらほらヒロちん、血圧が上がっちゃいますよ。 078博信 :お前も張り合うんじゃない! 079佳苗 :えっと! お父さんが聞きたいのって、馴れ初め? だよね、あれ何年前だっけ? 080良美 :二年前、だったかな? ほら、カナちんの髪がまだ長かったから。 081佳苗 :あ、そっかそうだね! 時の流れヤバいね! 082博信 :……に、二年!? 083良美 :はい。 お付き合いを始めて、丁度二年程になります。 084博信 :二年前って、キミ、赴任してきたばかりじゃないか!? 085良美 :ええ。 丁度その頃、カナちんに出会って。 086博信 :あくまでカナちんを突き通す気なんだな……! 087良美 :僕は。 ……赴任してきたばかりで、正直、周りに友達と呼べる人もいなくて。 仕事と家と、往復する生活をしていたんですけれども。 そんな時、カナちんに出会ったんです。 本社の前で。 088博信 :……。 089良美 :今でもよく覚えています。 そうだ、雪が降ってる日だったかな。 カナちん、僕が落とした社員証を拾ってくれて。 090博信 :赴任早々何をしでかしているんだキミは……。 091良美 :そこで、カナちんのヒールが折れてしまって。 思い出のハンカチを探していて、僕のコートに髪が絡まっちゃって、前の彼氏に振られたばかりで。 092博信 :情報量が多いな。 093良美 :社員証のお礼とヒールの修理をかねて、駅前のイタリアンのお店に入って。 そこで意気投合しました。 094博信 :……それで、二年。 付き合ってきたと。 095良美 :はい。 096博信 :成程。 ……わかった、腰を据えて将来の話をしよう。 反対するのは、それからでも遅くはないのかもしれんな。 097良美 :……ありがとうございます! 098佳苗 :ありがとう、お父さん! よかったね、よっちん! 099良美 :ああ! 俺頑張るよ! カナちん! それでは、僕とカナちんが結婚する事によるメリットについて資料をご提示しますので、 100博信 :ご提示しなくていい! 相変わらず見やすい資料だな! ご丁寧にどうも! 101佳苗 :ほらねよっちん、そんなに畏(かしこ)まらなくてもいいんだよ、リラックスして! 102良美 :そうみたいだ。 空回っちゃってごめんね、カナちん。 103博信 :お父さんはもう絶対に突っ込まないぞ……! 104佳苗 :じゃあ改めて、紹介するね。 総合商社に勤めてる、ヨシミさん。 105博信 :ああ、知ってる。 106佳苗 :背はまあ、大きい方だし、優しい人。 107良美 :へへ……。 <照れ笑い> 108博信 :この件(くだり)、どっかで聞いたな? 109佳苗 :お父さんと一緒で、釣りが趣味なの。 110博信 :待ちなさいカナエ。 111佳苗 :だってお父さんが、釣り好きの人には悪い人は 112博信 :カナエ、その辺にしなさい! 取り返しがつかなくなる! 113佳苗 :ね? おとーさん。 114多恵子:まあ! とってもグッドでおまけにモーニングね! 115博信 :アウトー! 116多恵子:ほらほら、さあさあ! 馴れ初めも聞けた事だし、お式はどこにしましょうね? 新婚旅行は? 決めてるの? 117佳苗 :もう、お母さんったら! 気が早いよ! 118博信 :そうだぞ母さん! 私はまだ認めてないからな! 119多恵子:お父さん、カナエがこんなオダジョー似の子つかまえてくるなんて、二度とないわよ! 120佳苗 :お母さん! もうっ、怒るぞ! 121多恵子:あらあら、ごめんなさい。 誰に似たんだか、この子ってば面食いでねえ。 122良美 :さーてーは、お母さん似ですね? 123多恵子:嫌だヨシミさんたら! 大正解! 124博信 :仲良しか! 125佳苗 :やめてよお母さん、恥ずかしいってばー! お父さんよりよっちんの方がイケメンだよー! 126博信 :お前、お前! だからテンションが高かったのか! 127多恵子:あっそうだ! ほら、ヨシミさん! ヨシミさんのご家族にも、ご挨拶をしないと! 128良美 :……僕の家族は、大丈夫です。 その、ゆっくりで。 129多恵子:……えっ……? 130佳苗 :よ、よっちん。 無理しなくていいんだよ? 131博信 :この温度差で尚……! 132良美 :ありがとう、カナちん。 僕の家族への挨拶は、またいずれ。 133多恵子:……ごめんなさいね、気付いてあげられなくて。 134良美 :いえ。 僕がちゃんと、言い出さなきゃいけなかったのに。 お気を使って頂いて、すみません。 135博信 :……あー……人生、出会いもあれば、別れもある。 まあ、その。 これからキミに聞く話にもよるが、もし、もしもだ、もし万が一そうなれば。 ……キミは、私達の家族の一員だ。 136良美 :……はい。 137博信 :キミの話次第だぞ。 私が納得して、キミさえ構わないのなら。 部下の私が言うのも何だがね。 ……上司と部下の関係を超えて、キミのご家族の分まで、立派な家族になろうじゃないか。 138良美 :ん? 139博信 :ん? 140良美 :僕の家族……? 141博信 :……亡くしてるんじゃ、ないのか? 142良美 :いえ、一昨日ポメラニアンのゴロウの子供が産まれたばっかりで。 143博信 :は? 144良美 :それでうち、今ポメラニアンフィーバーでして。 結婚とか言い出す雰囲気じゃないなあって。 145博信 :……はあああああああ!? 146多恵子:なーんだ、そうだったの! お母さん早とちりでしんみりしちゃった! 147佳苗 :すっごい可愛いんだよ、ほら、写真写真! 148多恵子:あらー! ぬいぐるみみたいねえ! いいわねワンちゃん! お父さん、うちにもどうかしら? 149博信 :びっくりしたー! 絆(ほだ)される所だったわー! 父さんびっくりしてうっかり、うっかりする所だったぞ!? 150良美 :うっかりして下さい! 娘さんを僕に下さい! 151博信 :嫌だ! なんで今いけると思ったんだ!? 152良美 :くっ、流石手厳しいな……! 陰でコンプライアンスの鬼と呼ばれているだけある……! 153博信 :そうなの!? え、そんな事言われてんの!? 154良美 :赴任前、オダという係長には気をつけろ、コンプライアンスで重箱の隅を突いてくるぞ、と……。 155博信 :……あれっ、それ悪口だな!? 156佳苗 :お父さん、どうしてそんなに頭ごなしに反対するの!? どうして! 私の人生までコンプライアンスで重箱の隅を突いてくるの!? 157博信 :お前は武器を見つけたからって見境なく飛び込んでくるんじゃない! 158佳苗 :私、私もうすぐ三十歳になるんだよ!? いつまでもお父さんの娘じゃ、いられないんだよ!? 159博信 :か、……カナエ……。 160多恵子:カナエ、その辺にしなさい。 161佳苗 :よっちんの事だって! お父さんが若くてイケメンで威勢がいいのが入ってきたって言ってたから! 162良美 :オダさん……。 163博信 :……確かに、話したな……。 164多恵子:カナエ、お父さんにもお父さんの考えがあるんですよ。 165佳苗 :オダジョー似だって言ってたから! 166多恵子:カナエ! 確かに目元がものすごく似ていますけどね、お母さんから見ればお父さんの方がイケメンですよ! 167博信 :話をややこしくするんじゃない! 168佳苗 :だから! 私本社前で待ち伏せし……あ。 169多恵子:……カナエ!? 170博信 :待ちぶ、なんだって!? 171佳苗 :ちが、お父さんの退社時間に合わせて本社の前で待ってただけで、 172博信 :出待ち!? 173良美 :正直、驚きました。 174佳苗 :そのっ、ちょっとヒールに細工したり、最寄り駅から家まで行ったりしただけだし。 175博信 :それはその、スト……ストなんとかだぞ! 犯罪だぞ! 176良美 :正直、怖かったです! 177佳苗 :違うよストーカーじゃないよ! 夜道って危ないから! ちゃんといつも通りコンビニに寄り道してお茶とたまにお菓子、グミかチョコをね、 買うか牛丼屋さんで夕食食べるの見守って、家に着いてお風呂入る時のガスメーター確認して 部屋の電気が消えるまで見守ってただけだもん! 178博信 :怖い! 179良美 :正直、通報しようかと! 180多恵子:カナエ……だからあの頃は帰りが遅かったのね。 遅くなる時は連絡しなさいって、お母さんいつも言ってるでしょ? 181佳苗 :だって、好きな人の事って全部知りたいじゃない! 一秒も目を離したくないじゃない! 182博信 :アウトー! 183多恵子:わかるわ、その気持ち。 184良美 :えっ、わかるんですか。 185多恵子:でもねカナエ。 カナエも言ってた通り、夜道って危ないのよ。 不審者がいたりだとか、ね? 186佳苗 :うん。 187博信 :遺憾ながらこの件の不審者はカナエを指してる訳なんだが……! 188多恵子:でもカナエも、……好きな人の身に万が一何かあったら、って、思ったのよね。 189佳苗 :うん。 190多恵子:お父さんも、お母さんも。 ずうとあなたの事を、同じように心配してるの。 今日のお父さんを見ていて、わかったでしょう? 191佳苗 :……うん。 192多恵子:今度、ヨシミさんの事を心配する時は。 防犯ブザー、持っていきなさい。 193佳苗 :お母さん! 194博信 :今色んな物が一挙に信じられなくなっているんだが! それにしたってキミ、通報しようかって事はそれに気付いてたんだね!? 195良美 :はい! 196博信 :放っておいちゃ駄目だよ、危ないよ!? 防犯意識持ちな!? いや、結果的にありがたかったんだがね!? 197良美 :でもそれがあったから。 俺、カナちんが社員証拾ってくれた時に。 ああ、やっと会えた、って思って。 嬉しかったんです。 198博信 :……は? 199多恵子:ヨシミさん……? 200良美 :まあ正直、赴任してきた直後にスト、……って、めっちゃ怖いなって思ってたんですけど。 でも、百八十超えてる男がスト……されてるって言っても、まともに対応してもらえる気がしなくて。 201博信 :そんな事はないだろうよ、もっと警察を信じていいと思うよ。 202良美 :……本当は、社員証を拾ってくれた時に、すぐにわかったんです。 あ、いつもついてきてた子だ、って。 コンビニで雑誌立ち読みしてる時に駐車場に隠れてたり、なんなら牛丼屋で隣に座った事もありましたし。 203佳苗 :変装してたのに……? 私だってわかってくれてたの……!? 204良美 :わかるよ。 だって、カナちんだから。 205佳苗 :よっちん……! 206博信 :うーん、今更ながら娘が心配になってきた。 207良美 :俺、そうまでして自分を好きになってくれた子って、カナちんが初めてで。 この子、雨の日も風の日も雪の日だって、いつも俺の傍にいてくれるんだなって思ったら、すごい嬉しくて。 こうしてこんな俺でも好きになってくれた分、それ以上に、カナちんの事を幸せにします! 208多恵子:ヨシミさん……。 209ヨシミ:だから! カナちん、いや! カナエさんと、結婚させて下さい! お願いします! 210佳苗 :……お、お父さん! 私からも、お願いします! ヨシミさんと、結婚させて下さい! <間。> 211多恵子:……あなた。 212博信 :……カナエ。 213佳苗 :な、何? 214博信 :……ストなんとか、もう、するんじゃないぞ。 215佳苗 :……うん、うん! よっちん以外にはしないよ! 216博信 :そこまで好きなら、私が何を言っても仕方ないだろう。 トオノ部長、いや。 ヨシミくん。 217良美 :はい! 218博信 :キミには、娘のストなんとかを見逃してもらった恩があるんだな。 ……そうでなくても、キミは少々抜けた所はあるが、真摯で、心底真面目な男だと知っている。 何せ、私はキミの部下だからな。 ……娘を、よろしく頼むよ。 219多恵子:不束者だけど、これからよろしくね。 220良美 :……はい! 221佳苗 :よかった、よかったね! よっちん! 222良美 :うん、カナちん! もう俺の家のゴミ漁っちゃ駄目だよ! 223佳苗 :うん! 224博信 :とりあえず二人共。 防犯とか法律とか倫理とか常識について、一から勉強しなさい。 約束だぞ。 225良美 :はい! <佳苗と一緒に> 226佳苗 :はい! <良美と一緒に> 227多恵子:よかったわね。 あら、もうこんな時間。 ヨシミさん、今日はお夕飯うちで食べていってね。 228博信 :母さん、野暮を言うんじゃない。 二人で話したい事もあるだろう、また日を改めてな、飯でも食いにいこう。 ヨシミくんのご家族にも。 ポメラニアンフィーバーが終わってから、挨拶しないとな。 229良美 :是非。 喜ぶと思います! 230博信 :ああ。 母さん、俺の財布。 231多恵子:はいはい。 232良美 :えっと、……いやいやいや! 頂けませんよ! 233佳苗 :お父さん、何してるの!? 234博信 :今日はこれでな、二人でちょっといい物食ってきなさい。 235良美 :いや、 236博信 :いいから。 ……あー、会社じゃ、俺が部下だから、こういう事もしにくいんだよ。 237良美 :……。 238博信 :会社を出れば、キミは俺の息子だ。 職場には持ち込めんから、せめてな。 239良美 :……ありがとうございます。 頂戴します。 240佳苗 :お父さん、ありがとう! 241博信 :ああ。 行ってこい。 早く帰るんだぞ。 <良美と佳苗、退室する。> 242博信 :……はー……ああ……お前に似てちょっとお転婆でマイペース、程度だと思ってたんだがなあ。 243多恵子:昔から行動力だけは人一倍でしたよ。 あの子は。 244博信 :そうだったか? はは、仕事にかまけていて気付かなかったな。 245多恵子:幼稚園の頃は、イケメンな保育士さんのアパートに一人で行ったり。 小学生の頃は、イケメンな担任の先生の奥さんに 246博信 :タエコ、どうしてああなるまで放っておいた? 247多恵子:私も若い頃は、あなたを待ち伏せしたり、押し掛けたり、してたでしょ。 248博信 :完全に、血筋なんだな。 249多恵子:ええ。 250博信 :ええじゃないんだよ、ええじゃ……。 251多恵子:……頑固なのは、あなた似でしょう。 驚いたんですよ、あなたが駄目だなんて言い出すから。 252博信 :……ちょっと言ってみたかっただけだ、なんて、言えないだろう……。 253多恵子:はいはい。 そんな事だろうと、思っていましたよ。 2019.12.31 初版 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子
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