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【father'smarch】 (ふぁざーずまーち) 男性3:女性2。「apartment」続編というか補足というか。 有償版販売ページはこちら。 【結花 憲司(ゆいはなけんじ)】 古物商、三十代後半~四十代前半男性。「置いていく事をわかってる」人。鏡花の義父。 人の良い大らかな男性。古物を店頭、ネット販売している。 大学時代同級生の百合と付き合っていたが、鏡花を引きとる事を決め、別れを切り出そうとした際 百合がフィンランドに発って音信不通になってなし崩しに別れている。 義妹の千晶と付き合う潤一郎、義理の娘の鏡花と付き合う紀を本人なりに可愛がっている。 名前は七十二候の「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)」+宮沢賢治氏から。 【栄 百合(さかえゆり)】 ブランドオーナー、三十代後半~四十代前半女性(憲司と同い年)。「置いていかれるのが怖かった」人。 北欧家具を扱うブランドを経営、自ら買い付けを行っている為あまり日本にいない。 大学時代に同級生の憲司と付き合っていた。幼い頃の鏡花に二度程会っている。 憲司が鏡花を引き取る為に別れ話を切り出そうとした際、彼から逃げフィンランドに渡っている。 仕事に打ち込んでいる為、憲司と付き合いを続ける事で鏡花の母親になる事を嫌がった結果だった。 名前は七十二候の「芹乃栄(せりすなわちさかう)」+宮本百合子氏から。 【魚上 紀(うおじょうおさむ)】 会社員、三十代前半男性。「絶対安心できる居場所ができた」人。潤一郎とは仲の良い親戚同士。 潤一郎と千晶に誘われ、潤一郎、鏡花の大学卒業を待ってシェアハウスでの同居を始める。 前作「apartment」での出会いがきっかけで鏡花と付き合い始めて一年程経ち、本質はあまり変わっていないものの、 付き合い始める際に奔放だった女性関係を全て清算している。鏡花とはとりあえず手は繋いだ。 憲司に気に入られている事は理解しているものの、自らの奔放な過去故それとなくやりずらさを感じている。 名前は七十二候の「魚上氷(うおこおりをいずる)」+太宰治氏から。 【草木 潤一郎(くさきじゅんいちろう)】 大学生兼画家。二十二歳男性。「早く大人になりたかった」人。紀とは仲の良い親戚同士。 画家としていくつか仕事をしつつ大学の卒業と、紀、千晶、鏡花とのシェアハウスでの同居を目前に控えている。 歳の離れた彼女、千晶経由で憲司と知り合い、仕事をいくつか紹介されて懐いている。 不愛想で口数は少ないが気は優しい。 名前は七十二候の「草木萌動(そうもくめばえいずる)」+谷崎潤一郎氏から。 【鷹乃 鏡花(たかのきょうか)】 大学生、二十二歳女性。 右米神から目じりに掛けて大きな火傷痕がある。憲司は義父。 「大人になる事が楽しみだったのに上手くいかない」人。 大学の卒業と、紀、千晶、潤一郎とのシェアハウスでの同居を目前に控えている。 趣味で作った九谷焼きをある喫茶店に卸しているが、進路を定める事ができず、憲司の古物商を手伝う事に決めている。 前作「apartment」での出会いがきっかけで紀と付き合い始める。紀が女癖が悪かった事を知らない。 名前は七十二候の「鷹乃学習(たかすなわちわざをなす)」+泉鏡花氏から。 ★千晶(ちあき) 名前のみ登場。潤一郎の年上の彼女。前作「apartment」参照。 憲司の父親違いの妹、鏡花の親戚のフリーライター。 潤一郎、鏡花、紀の三人とシェアハウスでの同居を始める目前。 作中は出掛けており不在。 ​ ★日高 正弘(ひだかまさひろ) 名前のみ登場。憲司、百合の共通の大学時代の友人。 ※星屑のまじない、日高正弘と同一人物。 【配役表】 結花憲司 : 栄百合  : 魚上紀  : 草木潤一郎: 鷹乃鏡花 : ======================================= <シェアハウス内、キッチンに立つ紀。それを後ろから眺める憲司。> 001紀  :……。 002憲司 :……はー……。 <紀の手元を眺める> 003紀  :……。 <やりにくそうにしている> 004憲司 :ほー、卵をねえ……。 005紀  :……あ、あー、あの……。 006憲司 :んー? 007紀  :ど、どうしましたか……。 008憲司 :ああ、ごめんね。 こんなに見られてたらやりにくいよねえ。       でもあんまり手際がいいから、見惚れちゃったよ。 うんうん。 009紀  :そうですかね、どうも……。 010憲司 :うーん、綺麗な顔してるし、気立てもいい、料理もできる。       うちのキョウカでほんとにいいのかい? 011紀  :ん、なんっ……! 012憲司 :ははは、こういう意地悪を言われると思って構えてたんだろう? 013紀  :違いますって! 014憲司 :私もそのつもりで来たんだけどねえ。       こんなにいい人がキョウカの彼氏だなんて、ぐうの音も出ないよ。       キョウカと並んだら、とんだ美男美女のアベックじゃないか。 015紀  :あ、アベック……。 <潤一郎、リビングにやってくる。> 016潤一郎:あ、ども。 017憲司 :おお、こんにちはジュンくん。 018潤一郎:チアキなら出掛けてますよ。 019憲司 :今日はチアキじゃなくて、キミに用があって来たんだ。 020潤一郎:俺に? 021憲司 :そう。 オオハシさんから。 <封筒を渡す>       あの風景画、大層気に入っていたよ。 022潤一郎:開けても? 023憲司 :勿論。 024潤一郎:<封筒の中身を確認する> ……こんなに、もらえません。 025憲司 :本店にもキミの絵を置きたいそうだ。 風景画、五十号。       その前金も入ってると言ってたよ。 026潤一郎:……。 027憲司 :気に入られているんだよ。 どうする? 断るなら、私から話しておくけれど。 028潤一郎:描きます。 029憲司 :本当に? よかった! そしたら早速電話をしてこよう。 隣の部屋、借りるね。 030潤一郎:来週の月曜に、一度伺うと。 031憲司 :わかった。 伝えておくよ。 <憲司、退席する。> 032紀  :じゅ、ジュンちゃん! 033潤一郎:なんだ。 034紀  :なんっ、なんであの人とそんなに親し気なの!? 035潤一郎:今見てたろ。 何度か客を紹介してもらって 036紀  :<遮る> 裏切者! 037潤一郎:裏切者って。 038紀  :あー緊張する! 僕、付き合ってる子のお父さんにあんなに好かれた事ないんだよ! 039潤一郎:好かれてるなら別にいいだろ。 良い人だぞ。 040紀  :い、いんだけど……いいんだけどさ……!       こう、無条件に好意的に見られると、何となく罪悪感があって……! 041潤一郎:何か罪悪感が湧く事でもしたのか。 キョウカに。 042紀  :してないよ! 043潤一郎:する予定があるのか。 044紀  :あるよ! 付き合ってるんだもの! 文句ある!?       一年! この一年手しか繋いでないんだよ!? 045潤一郎:……一応このシェアハウスの管理人は俺だからな。 風紀、云々かんぬん。 046紀  :う、……ケチ! いいだろ別に、付き合ってるんだからさぁ……。       ジュンちゃんはどうなの、ねえ。 今まで触れないようにーとは思ってたんだけど。 047潤一郎:<紀の言葉を無視して> それに、チアキの姪だろ。 お前叔母の前で同じ事言えんのかよ。 048紀  :チアキちゃんの前ではー……言わないよ! ジュンちゃんしかいないから言ってるんだろ! 049潤一郎:悪かったって。 拗ねるな。 050紀  :もう、ジュンちゃんといい、キョウカちゃんといい!       最近の子ってマセてるというか、大人っぽいよね! 僕敵わない! 051潤一郎:拗ねるな、拗ねるな。 悪かった。 052鏡花 :<玄関から> ただいまー! 053紀  :え、あ、キョウカちゃん!? 帰るなら連絡くれたらよかったのに! 054鏡花 :いいの、いいの。 ジュンくん、おっす。 055潤一郎:おっす。 メシ食ってくか。 056鏡花 :食べる! 057紀  :連絡くれたらよかったのに。 ああ、こんなに荷物抱えて! 重かったでしょ。 058鏡花 :大丈夫。 ケンジさん、ここにいたりする? 059紀  :いるぞ、あっちで電話してる。 060鏡花 :ああやっぱり。 アパートに行ったらいなかったから、ここじゃないかなって思って。       オサムさん、荷物はいいから、コーヒー淹れてもらえませんか。 お客さん来てるの! 061紀  :え、お客さん? わかった。 062鏡花 :<玄関に向かって> どうぞー。 こっち、リビングになってるんで、座って下さい。 063百合 :ありがとう。 ここに住んでるの? 064鏡花 :金沢から、この通り。 荷物移してる所なんです。 私が住むのは再来週からで。       みんなでリノベーションしたんですよ! 065百合 :そうなの。 楽しそうでいいわね。       <リビングに入る> こんにちは。 066紀  :こんにちは、そちらに掛けて下さい。 067潤一郎:どうも。 068鏡花 :ええっと。 こちら、サカエユリさん。       で、こっちが一緒に住む予定の、オサムさんとジュンイチロウくんです。 069百合 :初めまして。       キョウカちゃんとチアキちゃん、こんなイケメンと一緒に住むの? ユイハナ、怒らなかった? 070鏡花 :怒んないですよ、別に。 071紀  :ユイハナって、ケンジさんのお知合いですか? 072鏡花 :そうそう。 ユリさんね、ケンジさんの知り合いっていうか── 073憲司 :さ、サカエ? 074百合 :久しぶり。 変わらないのね、元気にしてた? 075憲司 :ああ、僕は元気で……キミも変わらな <百合に頬を引っ叩かれる> 076紀  :いっ!? 077潤一郎:うわ…… <唖然とする> 078鏡花 :ゆ、ユリさん!? 079百合 :相変わらずね。 十五年近くほっぽいて、よくもまあヘラヘラできるわね。 080憲司 :……き、キミもその、すぐ手が出る所は変わらないんだね……。 081百合 :あそこがいいわね。 表、出なさいよ。 <ベランダに向かう> 082憲司 :僕は慣れてるからいいけど、若い子達がびっくりするだろ。       ほら、煙草、煙草はいいのかい!?       ……ごめんね、これはなんていうか、そのー……恒例行事。 あはは。       ちょっと、ベランダを借りるよ。 <百合、憲司、退席する。唖然とする三人。> 083鏡花 :……か、……彼女、なんだって……。 084紀  :……か、彼女。 085潤一郎:昔の。 086鏡花 :うん。 大学生の頃、ケンジさんが私を引き取る前に付き合ってた人、って、ユリさんに聞いてる。 087紀  :……あー、なるほど……。 088潤一郎:行き会ったのか。 よくわかったな。 089鏡花 :アパートに行ったら、その前で。 見覚えのある人だなって思って。       向こうも私の事、覚えててくれたみたいなんだけどー……。 090潤一郎:まあ、お前を引き取る前に付き合ってたんなら、そういう事だな。 091鏡花 :ねえどうしようジュンくん! 喧嘩してるのかな、会わせるべきじゃなかったのかな!       話しやすかったから、ついベラベラ色々喋っちゃって……! ああ、どうしよう! 092紀  :ちょっと心配だし、僕こっそり様子見てようか? 093潤一郎:<溜息> ……あのな、落ち着け。       あの人、ケンジさん引っ叩いた時、ちょっと笑ってたぞ。 094紀  :え? 095鏡花 :そうなの? 096潤一郎:<頷く> 恒例行事、なんだろ。 ……ほっといてやればいい。       それよりキョウカ。 アトリエ、お前のスペースの話がしたかったんだ。 097鏡花 :あ、……うん。 098潤一郎:なんだよ、歯切れ悪いな。 099鏡花 :あ、……私ね、ケンジさんのネット販売、手伝おうと思って。 100紀  :えっ!? 101潤一郎:……自分で、作らないのか? 102鏡花 :作るよ、作るけど。 趣味で続けるのがいいんじゃないかなー、って……。       だから、ジュンくんのアトリエ、ちょっと間借りする感じで大丈夫。       喫茶店にも、もうちょっと置いて欲しいし。 103紀  :キョウカちゃん、何かあったの? 僕そんなの初耳だよ。 104鏡花 :ごめんね、この話しようと思って、今日こっちに来たんだ。 105潤一郎:そうか。 お前がそれでいいなら、構わない。 106紀  :ジュンちゃん! 107潤一郎:本人が気乗りしないまま作っても、仕方ないだろう。       メシ作るの代わる。 くれぐれも、外の二人にちょっかい出すなよ。 <潤一郎、キッチンへ向かう。> 108紀  :……ねえキョウカちゃん。 何かあったの? 109鏡花 :何か、って訳じゃないよ。       ほら、ケンジさんももういい歳だし。 サイト見た事ある?       もう十年以上サイトの構成変えてないって聞いて、       じゃあ私が手を入れてもいいかなあって、思って。       あ、お給料は見合った分ちゃんともらうって、約束もしてるから 110紀  :<遮る> 僕が言いたいのはそういう事じゃなくてさ。       あのね、僕、キョウカちゃんの彼氏なんだから。       嫌な事とか、困った事とかあれば、もっと言ってくれていいんだよ。 111鏡花 :ああ、オサムさんが頼りないとかじゃなくて、その……。 112紀  :何? 113鏡花 :……大学の、友達とか、ジュンくんとか、見てて。       窯元だったり陶芸教室だったり、みんな順調に就職先、決めててね。       私だけ、あぶれちゃって。 114紀  :うん。 115鏡花 :やっぱり、好きなだけじゃ駄目なのかなあ……って、思いまして。 116紀  :そっか、それで悩んでたんだね。 117鏡花 :うん。 こっちには、ケンジさんも、オサムさんも、チアキさんもいるから。       こっちに戻るのは、納得してるの。 118紀  :うん。 119鏡花 :でも、自分で窯を構えたりだとか、その……色々、不安で。       ケンジさんの仕事、手伝いながらでもできるかなって、思って。 120紀  :うん、そうだね。 どうしたってお金が必要だから、その通りだと思う。 121鏡花 :だよね、よかった。 122紀  :ねえ、でも。 ジュンちゃんの名前が出たのは、どうして?       ジュンちゃん、特に就職先を決めた、って訳じゃないよね。 123鏡花 :……うん。 でも、同い年なのに、もうお客さんがいっぱい付いてて……、       私も、ジュンくんの絵、すごく好きだけど、……焦っちゃって。 124紀  :……そっか。 あのね、キョウカちゃん。 125鏡花 :うん。 126紀  :僕は、キョウカちゃんが作る器も、ジュンちゃんの描く絵も大好きだよ。       だから応援したいと思ってるし、シェアハウスにキョウカちゃんを誘った。       僕がキョウカちゃんと一緒にいたいから、ってのもあるけどね。 127鏡花 :ありがとう。 128紀  :どういたしまして。 でね。       僕がキョウカちゃんと一緒にいたい、って一番最初に思ったのは、       あの日、公園のブランコで肉まんを分けてもらった時に聞いた、       九谷(くたに)焼きの話のが切っ掛けなんだ。 129鏡花 :超寒かったよね。 130紀  :寒かったね。 僕さ、あの時も話したけど、九谷焼きって知らなくて。       あの日帰ってすぐ、ネットで調べたんだよ。       あの子があんなに楽しそうに話すんだから、きっと素敵な物なんだろうって思って。 131鏡花 :うん。 132紀  :思った通りだったよ。 指が悴(かじか)むのがまどろっこしいと思うくらい、       夢中で、色んな写真を見た。 これが、一度廃窯(はいよう)になって、       それでも人の手で今まで続いたものなのか、って思ったら、どんどん見てた。 133鏡花 :……うん。 134紀  :確かに、周りを見て不安になったり、先の事を心配するのもわかるよ。       わかるから、ケンジさんの所でお金を貯める、ってのも賛成。       でもね。 だから諦めようって思う前に、僕に教えて。       僕はキョウカちゃんが器を作るのを止めちゃうの、寂しいから。       キョウカちゃんが作る器の良い所、いっぱい知ってるよ。       それを作ってるキョウカちゃんの良い所も知ってる。       だから、キョウカちゃんが九谷焼きを好きでいる限り、諦めないでって何回でも言うよ。 135鏡花 :……うん。 136紀  :ね。 僕、このシェアハウスのカバー要員だって、チアキちゃんも言ってたし。       僕は何か作る訳じゃないからよくわかってないんだけど、えーと……スランプ?       な、時期ってあるんでしょ? やっぱり。 137鏡花 :そうだね、ちょっとスランプなのかも。 138紀  :そういう時はさ、美味しい物食べて、楽しい所行って、ぱーっとしようよ!       あ、ねえねえねえ、明日さあ、ビュッフェ行こう、ビュッフェ! 139鏡花 :ビュッフェ? 140紀  :見て見てこれ、苺尽くしのビュッフェなんだってー!       キョウカちゃんが帰ったら絶対誘おうと思ってたんだ! 141鏡花 :……オサムさん絶対、私より女子力あるよね……。 142紀  :お洒落な物が好きなの! あと、キョウカちゃんと一緒に過ごすのも好き。 143鏡花 :……っくあー、敵わない! 144紀  :でしょ、でしょー? 145潤一郎:おい、イチャイチャしてんな。       外の二人はもういいのか。 あんなに心配してた癖に。 146紀  :ジュンちゃんがちょっかい出すなって言ったんじゃないか! 147鏡花 :あ! 私、ちょっと見てくる! 148潤一郎:座ってろ。 149鏡花 :だって! 150潤一郎:俺のオムライスを置いてでも行きたいか。 151鏡花 :わあっ! ……ちゃんとバターにしてくれた? 152潤一郎:ああ。 バターライスだ。 153鏡花 :頂きます! ありがとう! 154潤一郎:積もる話があるんだろう。 首を突っ込む方が野暮だ。 155紀  :そうは言ったって、出会い頭にあんなの見たら気になって! 156潤一郎:キョウカ。 157鏡花 :何? 158紀  :またそうやって無視する……! 159潤一郎:お前の分のスペース、俺が勝手に作るから。 160鏡花 :え? 161潤一郎:諦める理由が他人なら、続けろ。 162鏡花 :……聞いてたの!? 163潤一郎:聞こえてた。       流石に窯は置けないけど、窯なら、どっかで借りるくらいはできるだろ。 164鏡花 :……。 165潤一郎:俺は、たまたまチアキのツテでケンジさんと知り合って、運が良かっただけだ。       お前の器にも、巡ってくる。 166鏡花 :……うん。 167潤一郎:ここ、そういう奴の為のシェアハウスだから。 168鏡花 :……ありがと。 169潤一郎:おう。 <百合、憲司、ベランダから戻る。> 170百合 :あら、オムライス? いいわね。 171憲司 :あー、寒い、寒い。 コーヒーもらえるかな。 172潤一郎:淹れてありますよ。 173憲司 :ありがとう。 気が利くなあ。 174鏡花 :オムライス、食べますか! 美味しいですよ! 175百合 :いいの? 彼氏が作ってくれたんじゃなくて? 176憲司 :キョウカの彼氏は、そっちの眼鏡の彼。 177百合 :そうなの!? 178紀  :あ、あー……あはは……。 179憲司 :キッチンの彼は、チアキの彼氏。 <ソファーに座りながら> 180百合 :まあ、まあ。 てっきり逆だと思ってたわ。       ねえ彼氏、ユイハナにいじめられたら、私に連絡してね。 181紀  :いや、そんなそんな! 182憲司 :いじめた覚えはないよー。 183紀  :<小声> いやぁ……!? 184鏡花 :あの、外で何の──ッたあっ!? <潤一郎に小突かれる> 185潤一郎:ユリさんもコーヒー、淹れますか。 紅茶がいいですか。 186百合 :コーヒーにしてもらえる? 一杯だけ砂糖も入れてね。 187潤一郎:はい。 188鏡花 :うー……! <潤一郎を睨む> 189潤一郎:<小声で> 馬鹿。 190憲司 :サカエ、その子も画家さんだよ。 話を聞いたらどうだい。       良い絵を描くよ。 191百合 :絵を描くの? ふうん、ポートフォリオは? 192潤一郎:……あります。 ご覧になりますか。 193百合 :そう。 描きかけで構わないわ。 モノは今ある? 194潤一郎:こっちがアトリエになってます。 描きかけでいいなら、今三点ほど。 195百合 :コーヒーは後でいいわ。 見せて頂戴。 <百合、潤一郎、アトリエへ向かう。> 196憲司 :ブランドオーナーをやってるそうだよ。       フィンランドで買い付けて、こっちでネット販売を主にしてるらしい。 197紀  :オーナーさん、へええ……。 198憲司 :あれだけ気が強いのも納得できるだろう? 一国一城の主なんだ。       ネットで品物も見せてもらったんだけどねえ、すごくお洒落だ。       今じゃあんなデザインもできるんだね。       自分でコー……ん? ああ、作ったって言ってたから、驚いたよ。 199鏡花 :その、びっくりしたよ……。 200憲司 :……悪かったね。 でも、それだけの事を昔彼女にしたんだ。 当然だ。 201鏡花 :私がいたから、別れた? 202憲司 :僕がキョウカを引き取ると決めて、別れようと話をする前に、彼女はフィンランドに。       僕と彼女が自分で決めたんだ、キョウカが罪悪感を感じる事はないよ。 203鏡花 :でも。 204憲司 :それに。 こうしてまた会わせてくれたのはキョウカだろう?       ありがとう、本当に。 私も気に掛かってはいたんだ。       ……あの通りいつも自信満々で、背筋がしゃんとしてて、気が強くて、気まぐれで。       僕の事なんて、忘れていると思ってたよ。 それがまさか、出会い頭に引っ叩かれるなんてね。 205紀  :確かに驚きましたけど。 ゆっくり話せたみたいで、よかったです。 206憲司 :ありがとう。 ほんと、悪かったね。       ああ、ひと段落したらお腹減っちゃったよ。 オサムくんのご飯、頂いて帰ろうかなあ。 207紀  :あーははは……。 208鏡花 :オサムさんもすごく心配してたんだからね! 209憲司 :ああ、ああ。 悪かったよ。 <百合、潤一郎、アトリエから戻る。> 210百合 :じゃあ、見通しが立ったら連絡して。 楽しみにしてるわ。 211潤一郎:ありがとうございます、来月には。 212憲司 :あれ。 もう話を纏めたのかい。 213百合 :ええ。 あっちの知り合いが画廊に絵を置く人を探していて。 214紀  :えっ、フィンランドに!? 215潤一郎:ああ。 216百合 :上手くいけばビジネスに繋がるわよ。 仲介はしてあげる。       いいわね、タッチがちょっとヘレン・シャルフベックに似てるの。       <潤一郎に向けて> 知ってる? 217潤一郎:名前だけ。 218百合 :ちょっと前に日本で個展もやってたのよ。 今度調べてみて。       英語も少しでいいから、話せるるように努力はして。 219潤一郎:はい。 220紀  :すごい、すごいねジュンちゃん! 置いてもらえたら見に行こうよ! 221潤一郎:飛行機で何時間掛かると思ってるんだ。 222紀  :何時間掛かったっていいよ!       僕、彼の従兄弟なんですけど、ずっと応援してて!       ありがとうございます! 彼の絵が海を渡るなんて、夢みたいで! 223百合 :彼が自分で掴んだチャンスよ。 これからも応援してあげて。       キョウカちゃんも、九谷焼き作ってるんでしょ? ポートフォリオはあるの? 224鏡花 :……その、学生時代の頃の物しか、なくて……。 225百合 :いいじゃない、見せて。 226鏡花 :あ……じゃあ、部屋にあるんで、こっちです! <百合、鏡花、鏡花の部屋へ向かう。> 227潤一郎:ケンジさん、何から何まで世話になって、すみません。 ありがとうございます。 228憲司 :んー? ははは、これもキミの実力なんだから。       これからもキョウカと仲良くしてもらえたら、僕はそれで。 229潤一郎:はい。 230憲司 :いやあしかし。 ジュンくんとオサムくんは、ホントに仲がいいなあ。 231紀  :え。 232憲司 :さっきの。 ほんとに好きじゃなかったら、あんなに飛びつけないだろう。 233紀  :ああ、ははは……。 234潤一郎:自慢の兄です。 この通り見栄えが良いのに、日頃素行も良いし。 235紀  :ぐ、 236潤一郎:誰にでも、ああ、当然女性にも誠実ですし。 一緒にいて、キョウカさんも楽しそうですし。 237紀  :ぬっ、 238憲司 :そうかい、そうかい。 ああ、ほんとにありがたいなあ。       そうだ、今度飲みに行こう! キョウカが世話になってる訳だし、奢っちゃうよ。 239紀  :<やや躊躇って、愛想笑いで> ……是非! お供させて下さい! 240潤一郎:すみません、僕は制作があるので……。       オサムとは飲みに行ける時期がズレるかもしれませんが、その時は。 241紀  :じゅっ!? 242憲司 :ああ勿論! 引き受けてくれたお礼もしたいしなあ、       チアキみたいな難しい子と付き合ってくれてる訳だし、キミにもご馳走させてくれ。       <立ち上がる> ああ、お手洗い、借りるよー。 <憲司、退席する。> 243紀  :ジュンちゃんッ! 244潤一郎:キョウカと付き合う直前になって、女関係全部清算したの。       バラさなかっただけ温情だと思え。 245紀  :……ッ、ほんとに、もう! <鏡花の部屋。> 246百合 :いいじゃない! 結花に喫茶店に卸してるとは聞いたけど、ねえ。       これなら商品として十分通用するわ。 私も一つ欲しい!       どうしてもっと仕事を取らないの? 勿体ない! 247鏡花 :あ、あはは、ありがとうございます……。       ……あの、ユリさん。 248百合 :んー? 249鏡花 :……ケンジさんと、その。 250百合 :……自分の所為だって、思ってる? 251鏡花 :はい、正直。 252百合 :それはお門違いよ。 253鏡花 :お門違いですか? 254百合 :あなたの事情を知って、それでも私を取るなんて言い出したら引っ叩いてるわ。 さっきみたいにね。 255鏡花 :<苦笑する> 256百合 :楽しかったから、私も。 アテのない男を待つのって楽よ。       でもまあ、キョウカちゃんがそうなったら、私は嫌ね。 真似しないでね。 257鏡花 :なら、私だって嫌です。 ユリさんにも寂しい思いはして欲しくないですよ。 258百合 :そう? ……そうなの。 私、子供産めないから。 259鏡花 :え。 260百合 :だからユイハナがあなたを引き取るって聞いた時、安心したのよ。       この人も、一般的な幸せが得られるんだって。 261鏡花 :だから、フィンランドに? 262百合 :そうよ。 私が逃げたの。 私が決めた事。 263鏡花 :ケンジさんと、同じ事を言うんですね。 264百合 :そうよ。 さて、あなたにも渡しておくわね、連絡先。       いい器ができたら連絡して。 こっちの工芸品って、やっぱり海外だとウケがいいのよ。       お礼はちゃんと払うわ。 265鏡花 :もらえませんよ、お礼なんて!       その、ジュンくんみたいに、それ一本でやってく訳じゃないし……。 266百合 :受け取りなさい、あなたが一クリエーターでありたいなら。 あなたが時間を掛けた対価なんだから。       私も勿論、相応しいと思う額しか出さないわよ。       あなたもしかして、今までもそうして受け取らないでいた訳? 267鏡花 :……。 268百合 :あのね、これは見返りじゃなくて評価なの。       評価を受け取らないで次があるなんて、思っちゃ駄目。       ……勿論、買い叩いたりもしないわ。 正当な評価で売り出して、あなたに正当な見返りを。 269鏡花 :……はい、私も、連絡します! 270百合 :ええ。 じゃあ、そろそろ帰るわね。 271鏡花 :え、帰っちゃうんですか? もうご飯になるし、食べて行ったら 272百合 :<遮る> いいの。 じゃあね、次はビジネスの話を期待してるわ。       ああ、それと。 コンシーラーをもうワントーン暗い色にしなさい。 その方が自然に隠れるわ。 273鏡花 :へ、え。 274百合 :今の日本の若い子は、自然な肌色が流行なんでしょ?       ならもうワントーン、落とすべきね。 275鏡花 :あ、はい! 276百合 :……ね。 嫌だったのよ、お母さんの代わりになるのは。 277鏡花 :お母さんの代わり? 278百合 :仕事が好きだから、あなたのお母さんの代わりになるのは嫌だったの。 だから逃げたの。       でも、いざ会ってみたら、こうなっちゃう訳。 279鏡花 :あ、えっと、私は嬉しいです! 280百合 :ならよかったわ。 もうしばらく日本にいるから、今度お茶しましょうね。       ユイハナ抜きで。 彼氏の話も聞かせて。 281鏡花 :<笑う> お姉ちゃんができたみたい。 282百合 :そう? 随分歳の離れたお姉ちゃんね。       ……なら。 お茶をする時にでも、今日ユイハナとした話、バラしちゃおうかしら。 283鏡花 :聞きたい! 284百合 :ならあなたが連絡して。 再来週の水曜まではこっちにいるけど、仕事はしてるから。       あなたも、金沢と行き来してるんでしょう? つかまえて頂戴。 285鏡花 :絶対絶対、連絡しますから! もう逃げたら嫌ですよ! <ベランダでの百合と憲司の会話。> 286百合 :──嫌よね。 アパートの前まで行ったらバッタリ会って。       お互いすぐにわかったのよ。 面影がそのままね、キョウカちゃん。 287憲司 :会わせた事、あったっけ。 288百合 :別れる前に二回、面倒を見たわ。 289憲司 :……ああ、一緒にパフェを食べに行ったね。       その。 なんでまた、急に会いに来たんだい。 290百合 :先週日本に帰ってきたの。 291憲司 :結婚は。 292百合 :してない。 293憲司 :……。 294百合 :もう何とも思わないわよ。 295憲司 :ごめん。 296百合 :……。 297憲司 :……ごめん。 298百合 :煙草、一本頂戴。 299憲司 :いらないのかって聞いたじゃないか、ほら。 全く、若い子を脅かして。 300百合 :<煙草に火をつけて、一口吸ってから>       ありがと。 嫌よね、謝罪って。 日本人の美徳、みたいな所あるけど。 301憲司 :え。 302百合 :自分の為の謝罪なら結構だわ。 これ、今の連絡先。 303憲司 :え? あ、ああ。 304百合 :気が向いたらでいいわよ。 期待はしてない。       一回会って、とりあえず引っ叩いておきたかっただけだから。 305憲司 :来週連絡する。 日本にいるかい。 306百合 :あなたそう言って、約束守った事ないじゃない。 307憲司 :連絡する。 308百合 :……再来週の水曜までは、日本にいる。       キョウカちゃんが一人立ちしたから? 309憲司 :うん。 310百合 :<苦笑する> ……ごめんなさいね、すっかり錆び付いちゃったみたいで、嫌味しか出てこない。 311憲司 :それでいいよ。 理屈っぽい癖にすぐ手が出るのがキミだ。 312百合 :それを余裕綽々です、って顔をして躱してるのがあなたでしょう。 ほんとに腹が立つ。 313憲司 :諦めてくれよ。 それは僕の性分なんだから。 314百合 :諦めていなきゃ、こんなに経ってないわよ。 315憲司 :……僕も驚いたんだよ。 マサヒロに、フィンランドに発ったって聞いた時は。 316百合 :ヒダカくんが喋ったのね。 あの裏切者。 317憲司 :僕が無理を言って聞き出したんだよ。 何だかんだ、彼と一番親しかっただろう。 318百合 :まあ……。 私の部屋に、アドレスも電話番号も何もかも置いてたわ。 319憲司 :そうだったのかい? 320百合 :あなた、自分で決めた事に関しては頑固だから。       キョウカちゃんを引き取る、何が何でも別れる、って、連絡をよこすと思ってた。 321憲司 :それは悪かったね。 マサヒロにやっと聞き出して、そこで力尽きたよ。 322百合 :私の部屋の合鍵は? 323憲司 :今も持ってる。 324百合 :力尽きた割には、未練がましいのね。 325憲司 :家主のいない部屋に、入る度胸はなかった。 326百合 :そう。 ……でも、良い子ね、キョウカちゃん。 327憲司 :そうだろう。 僕には勿体無い娘だよ。 328百合 :陶芸科にいるって聞いたわよ。 329憲司 :うん。 なのに、卒業したら僕の所を手伝うって言うんだ。 330百合 :いいじゃない。 331憲司 :キミ、ちょっと見てやってくれよ。 僕より見る目あるだろ? 332百合 :仕事は別。 333憲司 :頼むよ、頼む。 親の贔屓目なのはわかってるけど。       今も、喫茶店に器を卸したりはしてるんだ。 このまま潰えてしまうのは、僕が嫌なんだ。 334百合 :あの子の性格なら、そういう小さい仕事の方があってると思うけど。 335憲司 :まだ若い、僕みたいな年寄りがするような仕事を手伝わせて、       ……あの子が知る筈だった世界を狭くしてしまうのが、嫌なんだ。 336百合 :……。 337憲司 :……頼む、頼むよ、サカエ。 338百合 :……呆れる、ホントに変わらないのね。 339憲司 :え。 340百合 :自分で決めた事に関しては頑固で、そのくせ他人が決めた事には無頓着で。       課題の提出の直前になっていっつも「頼む、頼むよ、見せてくれ」って泣きついてきたじゃない。 341憲司 :あ、あはは……そうか、うん、そうだね。 342百合 :私も仕事だから。 当人にその気があれば、仲介もするわ。 343憲司 :本当に!? ありがとう、サカエは昔から本当に面倒見が良くて助かる 344百合 :<遮る> でも。 仕事の話だから、あなたからこの話を彼女にしないで。       絶対、一切。 私達の仕事に踏み入らないで。 それが条件。 345憲司 :……わ、かった。 ……ああ、うん、そうだね。 ありがとう。 申し訳ない。 346百合 :自分の為の謝罪なら結構。 彼女の作品が潰(つい)えるのが嫌なんでしょう。       顧客が気に入って、たまたま縁があった私に紹介した、そこに親子の縁も何もない、       彼女の実力、その結果。 わかった? 347憲司 :……ああ。 キミは本当に、その辺りの切り替えが上手いな、昔から。 348百合 :今更おべっか使ったって何も出ないわよ。 349憲司 :おべっかじゃないよ、本心だ。 僕はその辺りどうしても下手だから。       ……うん、そう、下手なんだ、切り替えるのが。 だから、サカエ。 350百合 :何。 351憲司 :やり直す気は、あるのかい。 352百合 :……あはは、上手い事話を持って行ったじゃない。 353憲司 :本当に? 苦心したよ、どう切り出そうかずっと迷ってた。 354百合 :そんな顔してたわ。 355憲司 :嘘だ。 356百合 :ほんとよ。 下手くそ。 357憲司 :……あー、それで、どうなんだい。 358百合 :先にキョウカちゃんの話をして頂戴。 359憲司 :さっきしただろ。 360百合 :あれじゃ納得できない。 嫌よ、日本に留まってまで、コブ付きと付き合うのは。 361憲司 :……キミ、留まる気があるのか。 362百合 :……あなたの話次第よ。 363憲司 :……はは、あはは。 なんだ、そうだったのか。       そうならそうだって、言ってくれよ。 364百合 :もう! じゃなきゃ、帰って早々探したりしないわよ! 365憲司 :探してくれたのかい! キミも変わらないじゃないか!       あれは、ああそうだ、ゼミの飲み会に行こうって時だ。       僕が教室で昼寝をしてたらキミ、一時間も僕の事探してくれてたってマサヒロが 366百合 :<遮る> キョウカちゃんの話! 367憲司 :ああ、はいはい。 ……それで納得してくれたら。 368百合 :ええ、納得したらね。 369憲司 :……うーん。 そうだなあ、何の話をしよう。       ──あの子が陶芸を、と言い出した時に、驚いたけどね、私は嬉しかったんだよ。 370百合 :うん。 371憲司 :両親を早くに亡くして、顔に一生残る火傷の痕(あと)ができて── ​ <百合が帰った後。鏡花がリビングに飛び込んでくる。> 372鏡花 :ジュンくん、ジュンくん! アトリエの話しよう! 373紀  :あれっ? ユリさんは? 374鏡花 :さっき帰ったよ。 アトリエ! どれくらい広さもらえる!? 375潤一郎:お前もか。 376鏡花 :うん! 良い器ができたら連絡する、って! 377紀  :もうご飯にするから、適当に切り上げてね。 378鏡花 :あ、私オムライス食べたし、軽くで大丈夫だからね! 379紀  :はいはい。 キョウカちゃんの作品も、海を渡るかもしれないもんね? 380鏡花 :そう、そうなの! ありがとうオサムさん、そうなったら一緒に見に行こうね! 大好き! 381紀  :だッ!? 382潤一郎:ほら、イチャイチャしてるならアトリエやらんぞ。 383鏡花 :あ、待って待って! 棚の採寸も取りたいの! メジャー取ってくる! 384紀  :……ああー、敵わない! <ベランダでの百合と憲司の会話。> 385憲司 :あ、そうそう。 キミきっと知らないだろう。       良い事を一つ教えるよ。 マサヒロ、結婚したよ。 386百合 :嘘!? 絶対しないと思ってた!       相手は誰? あなたもしかして、式に出たの? 387憲司 :まあ、……色々あって、内々でホントに親しい人だけで、やったから。 388百合 :裏切者! なんで私の事呼ばなかったの!? 389憲司 :誰もキミの新しい連絡先を知らなかった。 自業自得だろ? 390百合 :じゃあそれでいいわ。 ねえ、相手は誰なの! 私の知ってる人?       イヤね本当に、気持ちは若いままで歳だけ食ってると思ってたのに!       みんな大人になってて嫌になっちゃう! 391憲司 :ははは。 本当にね。 392百合 :ねえ、教えて! 相手は誰! 393憲司 :相手ねえ。 キミ、きっと驚くよ。 394百合 :そうでなくちゃ! ねえ、ヒダカくんの奥さんも、私達の式に呼びましょうよ。 395憲司 :ああ、そうだね。 そうしようか。 2018.3.13 完成 羽白深夜子 2020.1.10 修正 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子 サイトへ戻る