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【星屑のまじない】 (ほしくずのまじない) 男性2:女性1。 「のろい」と「まじない」のお話。 【志野 直文(しのなおふみ)】 26歳、学芸員。 【日高 正弘(ひだかまさひろ)】 26歳→28歳、営業職。 【志野 硝子(しのしょうこ)】 26歳→28歳、図書館職員。 ​【配役表】 志野 直文: 日高 正弘: 志野 硝子: ======================================= <三人、カフェの小さなテーブルについている。> 001直文:「僕、もうあんな大きな暗闇の中だって怖くない。      きっと皆の本当の幸(さいわ)いを探しに行く。      どこまでもどこまでも、僕たち一緒に進んで行こう。」 002硝子:宮沢賢治、銀河鉄道の夜。 003直文:「俺達はブレーメンヘ行くところだ。 キミも一緒にどうだい?      死ぬくらいなら、それよりもマシな事はどこへ行ったってあるさ。」 004硝子:グリム童話、ブレーメンの音楽隊。 005直文:「僕の体は、純金で覆われている。 一枚一枚剥がして、貧しい人にあげよう。      人とはそうして、分けあいながら生きていくものだ。」 006硝子:オスカーワイルド、幸福な王子。 007直文:「ああ弟よ、君を泣く」 008硝子:君死にたもう事なかれ。 ……与謝野晶子。 009直文:<しばらく考え込み、悪戯を思いついたように笑ってから>      「ジュリエットに一目会いたくて、月に誘われてここまで来たんだ。      あなたへの思いが溢れて、気が付いたらここに来ていた。」 010硝子:…… <溜息> 011直文:「あなたに会えたから、もう死んだって悔いはない。      大丈夫、生きる希望が沸いてきた。」 012硝子:……もう。 013直文:ははは。 <お前の番だと硝子を顎で指す。> 014硝子:<溜息> ……。      「ロミオ、橋の上の恋人と、運命の再会。 なのにあなたはモンタギューの跡取り。      ねえお願い、名前を捨てて。 私はなんの肩書きもないロミオと、ずっと一緒に踊っていたい。」 015直文:「きっとそうしよう。 美しい音楽に誘われて、優しく口づけを交した時から。      ロミオはもうジュリエットのものだ。」 016硝子:本当なの? こんなに恥ずかしい言葉を言わされて、上手くつけ込まれて。      私を弄(もてあそ)ぶ為に誘い出しているんじゃないの。 017直文:弄ぶ為に指輪まで用意して? 018硝子:旧家モンタギューは、指輪の一つも用意できないの? 019直文:その指輪の出資所(しゅっしどころ)は、俺の財布。 給料三ヵ月分。      弄ぶ為だけになんてとてもじゃないけど無理だよ。 020硝子:あらそう。 ウィリアムシェイクスピア、ロミオとジュリエット。      随分気に入ったのね。 021直文:ショウコも。 台詞、覚えてたんだ。 022硝子:印象的だったから。 023直文:あの役者、上手かったな。 生まれて初めての観劇はショウコの見立てで正解だった。 024硝子:それは何より。 それで、どう? 025直文:どう、って、俺の台詞なんだけど。 026硝子:みんな「のろい」の言葉にしか聞こえなかった。 027直文:本日は割と本気のチョイスだったんだけどな。 028硝子:ついに与謝野晶子まで引っ張り出すとは思わなかったわ。      物語の作中に、人に希望を与える「まじない」があるかどうかって話じゃなかった? 029直文:読み手の受け取り方次第、って逃げ道はまだ有効? 030硝子:有効よ。 私は「のろい」と受け取るけれども。 031直文:手厳しいなぁ。 032硝子:いいじゃない。 受け取り方が、価値観が違うから、今の私達がいるんでしょう。      あ。 茨姫と雪の女王の引用がなかった事は褒めてあげる。 033直文:そりゃあ、どうも。 034正弘:……お前らは、結婚しても相変わらずだなあ。      見ろ、よくわからん言い合いの間に、俺は煙草を四本も消費したぞ。 035硝子:マサヒロ、あなたは吸い過ぎ。 学生の頃から何も変わらないじゃない。 036直文:そうだそうだ。 それに、結婚したからって調子が変わるようじゃ結婚なんかしない方がいい。      よく覚えとけよ、独身貴族様。 037正弘:肝に銘じておくよ。 んで、今のは何だったんだ?      まぁた童話やらなんやら、本の話だと思ったら、最後は口説き文句って。 038直文:あれが口説き文句に換算されるなら、俺はショウコに何百回とプロポーズした事になるなぁ。 039硝子:この人のプロポーズの言葉なんてもっとつまらなかったわよ。      味噌汁を作ってくれでも、パンツを洗ってくれでもなく、結婚して下さいってただそれだけ。 040正弘:それ以上の言葉があんのかよ。 041硝子:あったわ。 042正弘:あったのかよ。 043硝子:宮沢賢治の幸せについての一文、知ってる? 044正弘:月が綺麗ですね、だっけか。 045硝子:それは夏目漱石。 046正弘:だから、読んだ事ねえんだって。 何だよ、どれだよ。 047直文:なあ、なあ! 勘弁してくれって! 話すのかよ! 048硝子:話すわよ。 049直文:わかった、悪かったって! 謝るから! 050硝子:嫌よ。 あなたさっき、私にマサヒロの前で何させたの。 ジュリエットよ、ジュリエット。 051正弘:何なに。 幸せについての一文? ってのは? 052硝子:「何が幸せかわからないです。      本当にどんなに辛いことでも、それが正しい道を進む中の出来事なら。      峠の上りも下りも、皆、本当の幸せに近づく一足づつですから」って。 053直文:ああああ……気恥ずかしいんだから、せめて俺がいない所で話してくれよ…… <頭を抱える> 054正弘:……えーっと……そんで? それが? 055硝子:今のが告白だって言うのよ? わかりづらいでしょう、つまらないでしょう。 056正弘:ふうん。 で? ショウコはなんて返したんだよ。 057硝子:十分掛かって結婚して下さいって聞き出した後に、「私死んでもいい」って言ったわよ。 058正弘:夏目漱石じゃねえか! 059硝子:知ってるじゃない。 060正弘:そのくらいはな!? はいはいご馳走様! いつまでもお熱いこった! お幸せに! 061直文:もういいから! 062正弘:手貸してやったつもりだったんだけど、なんでお前が照れてるんだよ。 063直文:酔ってたんだよ、勘弁してくれよ。 064硝子:私が照れるタイミングなんてあった? マサヒロ、あなたも下手ね。      引用は結構よ、グダグダしてたのは気に入らなかったけど。      ちょっと嬉しかったし、何よりわざわざ私に告白する為に      銀河鉄道の夜から引用するなんて(素敵じゃない) 065正弘:おーおー、文学部の茨姫! は相変わらずだな。 066硝子:ちょっといい加減それやめてよ。 067正弘:で、惚気話はいいんだよ。 さっきのは? 068硝子:……人の書く物語に、人の希望に成り得る言葉はあるかどうか。 069正弘:希望? なんだそりゃ。 070直文:人を生かす為の言葉が、物語の中にならあるんじゃないかって。 071正弘:……へえ? 人を生かす為の言葉。 <呼び出し音。> ※続きは有償版をご購入の上お楽しみ下さい。 2015.7.25 初版 羽白深夜子 2015.9.28 更新 羽白深夜子 2019.4.2 更新 羽白深夜子 2022.3.15 有償版作成 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子 引用 「銀河鉄道の夜」 宮沢賢治 「ブレーメンの音楽隊」グリム童話 「幸福な王子」オスカーワイルド 「晶子詩篇全集より『君死にたまうことなかれ』」与謝野晶子 「ロミオとジュリエット」ウィリアムシェイクスピア サイトへ戻る