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【怪談】 (かいだん) 男性2。 特定の趣味趣向を貶す意図は全くないコメディです。 全人類、全ての命を可愛がれ。 有償版販売ページはこちら。 【一臣(かずおみ)】 20歳以上男性。 泉とはお互いの家を行き来する仲良し。 【泉(いずみ)】 20歳以上男性。 一臣とはお互いの家を行き来する仲良し。 【配役表】 一臣: 泉 : ======================================= <アパートの一室、一臣の部屋。二人で駄弁っている。> 001泉 :なあなあ、お前って怖い話とか、平気? 002一臣:んー? まあ、割と好きだけど。 003泉 :お! よかった、じゃあちょっと聞いてくれよ! 004一臣:あ、聞いたら呪いが移る、みたいなのは気分悪いから好きじゃない。 005泉 :わかったわかった。 まあ、聞いたら呪いが移る系の話なんだけど。 006一臣:あれっ? お前耳ついてる? 007泉 :これは俺が、友達の親戚に犬を譲ってくれた心優しいお姉さんの彼氏の妹から聞いた話なんだけどさ。 008一臣:あぁ、話し始めちゃうんだ……。 009泉 :止めとくか? あ、先に除霊しとく? それとも遺書書く? 010一臣:なんでお風呂オア私のノリで除霊オア遺書なんだよ。 011泉 :塩と札どっちがいい? 012一臣:今度は最悪なビーフオアチキンきちゃったな。 013泉 :ま、両方にしとくか。 今術式書くからちょっと待ってろな。 014一臣:俺ん家廻戦始まっちゃったよ……って待て待て待て! 015泉 :あぶね! お前、術式書いてる時は術者から五十メートル離れろってママに教わらなかったのか!? 016一臣:俺ん家で領域展開すんなよ、そんなの習ってねえし!      その親指ガリッてするの、恐らくそっから出た血で俺ん家の何がしかに何がしかを描くんだろ!? 017泉 :だからお前教わっただろ小二の道徳の授業で 018一臣:習ってない! 俺は! ごんぎつねしか覚えてない! クローゼットに何がしかを施そうとするな!      わかった、聞くから! 怖い話聞くからそこで大人しく座ってろ! 019泉 :なんだよカリカリしてー……ごんぎつねって確か国語じゃん。 020一臣:そこじゃねえんだわ……救急箱、どこに置いたっけなー……。 021泉 :ふーん……二人っきりだね。 022一臣:何!? 023泉 :へー。 ちゃんと部屋、綺麗にしてんだ。 024一臣:怖い怖い怖い怖い! え!? 急に何!? 025泉 :や、なんかぁ、救急箱とかいう丁寧な暮らししてる系男子の発言出たから合わせようと思って……。 026一臣:お前の偏見ってものすごい偏り方してない? 027泉 :なんかゴメンな。 俺が目がデカい可愛い系で受け顔の男じゃなくて。 028一臣:何の話!? 怖いけど!? 029泉 :ありがちじゃん、指怪我してそれを攻めが咄嗟に舐めて二人の恋が始まる商業BL。 030一臣:あるっぽいだけでないから! 何!? どした!? 何読んだお前!? 031泉 :いや、俺もこの怪談聞いた時すげービビったからさ。      お前に呪い移しちゃう訳だし、申し訳ないなーと思って。 場を和ませたかったんだよ。 032一臣:俺に呪い移すのは確定なんだ……。      まあ、その呪いってどう対処したらいいか、までちゃんと話せよ。 ほれ。 033泉 :ありがと。 え、マジでちゃんと救急箱じゃん。 034一臣:一人暮らし始める時姉ちゃんに持たされたんだよ。 035泉 :あー! なるほどねー! あの商業BLしこたま買ってるねーちゃんな! 036一臣:お前さ、友達の姉ちゃんに対する印象ってもっと何かあるだろ。 037泉 :まあまあまあ、よし。 俺の指の怪我もひと段落した所で! 038一臣:お前が勝手に怪我したんだけどな。 039泉 :あ。 この救急箱、抗うつ剤とか、ちょっと死にたいなーって気持ちの時の薬ってちゃんと入ってるか? 040一臣:……流石にどのご家庭も常備しねえんじゃねえかな……。 041泉 :あーまじか。 じゃあ万が一何かあったら、俺買ってくるから! 042一臣:何、そんなヤバい話なの!? ちょっとコンビニのノリで死にたくなる呪いなの!?      そんなヤバい呪い移そうとしてるの!? 043泉 :まあ、お前くらい図太ければ大丈夫だと思ってるけどな! 044一臣:それをものすごいスマイルで言えるお前の図太さよ……いいわ、とりあえず話してみ。 045泉 :これは俺が、友達の親戚に犬を譲ってくれた心優しいお姉さんの彼氏の妹から聞いた話なんだけどさ。 046一臣:さっきも聞いたけど何なんだよ、その近いようですごく遠い場所からやってきた怪談。 047泉 :それがさ、俺この話聞いて調べてみたんだけど、隣の市で実際に事件になってたんだよな。 048一臣:マジで? へー。 049泉 :ちょっと興味沸いた? 050一臣:おー。 で、今お前が呪われてる、と。 051泉 :俺がー……というか、もっと大勢呪われてるんじゃないかな。 052一臣:マジか。 ヤベエじゃん。 053泉 :若者特有の軽薄な感想を頂いた所で、本題に入るぞ。 054一臣:……おう。 055泉 :俺に話してくれた、友達の親戚に犬を譲ってくれた心優しいお姉さんの彼氏の妹の友達の父方の 056一臣:うん、おっけ。 とりあえずその、お前にこの話を教えてくれた子を仮にAちゃんとしてもらっていいか? 057泉 :ミドリちゃんなんだけど……。 058一臣:じゃあもうミドリちゃんでいいよ、はいはい本題本題! 059泉 :まあ、ミドリちゃんとなんやかんやでお友達の、アオちゃんって子がいるんだけど。 060一臣:カラフルだな。 061泉 :アオちゃん、受験勉強の為に塾に行っててさ。 一人で暗い中を帰る事が増えてたんだ。      その道中である日、タタタ……って、ほんとに小さな音がしてさ。 何かが横切る、みたいな。 062一臣:おお。 でもそれって猫とかー、小さい動物なんじゃねえの? 063泉 :アオちゃんも最初はそう思って、無視してたんだ。      でもさ、動物なら。 ある日を境に毎日、その道を通る度に。      決まった場所からそんな音が聞こえてくるのは。 ちょっとおかしいって思うだろ? 064一臣:まあ、音の主を探してみたりはするかな。 065泉 :そう! アオちゃんも不思議に思って、探してみたんだ。      けど特に音がする様な物は見当たらなくて、代わりにみつけたのがー……。      住んでいた老夫婦が亡くなって以来、誰も入ってない筈の、古い平屋の一軒家。 066一臣:お、おお……。 067泉 :そのご夫婦、近所でも仲良し夫婦ってちょっと有名でさ。 アオちゃんも老夫婦の事は知ってた。      両親が夕食の席で、あの夫婦の次男坊はどうしようもない奴だ、って話してたんだとさ。 068一臣:子供の前でそんな話すんなよ……。 069泉 :まあまあ。 まず奥さんが亡くなって、後を追うように旦那さんが亡くなって。      じゃあどうして家がそのまま残ってるのか。 土地を継いだ次男坊が家を放置してたんだ。      夫婦が亡くなったのが去年。 庭も建物もすっかり荒れ果てた。 070一臣:……割と最近の話なんだな? なのに荒れ果ててるのか。 071泉 :そうそう。 そんな場所から、毎晩毎晩、小さな音がしてる。 アオちゃんはそれに気付いちゃった。      気付いてしまった所為なのか、はたまた別の切っ掛けがあったのか。      音は、日に日にアオちゃんに近付いてきた。 072一臣:……なあ、次男坊がいるって事は。 長男はどうしたんだ? 073泉 :長年連絡が取れないらしい。 両親の葬式に出席してたのかは、俺もわかんない。 074一臣:そうか……。 で、そのアオちゃんに音が近付いてきて? 075泉 :うん。 最初は小さかったタタタ、って音が、少しずつ大きくなって。      時々、ペタ、ペタ、って音に変わっていった。      後ろを振り返っても誰もいない。 でも明らかに、アオちゃんの周りで音がするようになって。      ハッ、ハッ、ハッ、って。 人の呼吸に似た音まで、聞こえ始めた。 076一臣:……そのー、例の次男坊がストーキングしてる、とか……? 077泉 :それはないかな。 次男坊はその時間、パチンコに入り浸ってて。      嫁さんと夫婦喧嘩する声が夜な夜な近所中に聞こえてたらしい。      だから音の主は次男坊ではない、絶対に。 アオちゃんもその結論に至った。 078一臣:ご近所ネットワーク、パねえな……。 じゃあ別の不審者? 079泉 :不審者なら、人間なら。 アオちゃんが振り返った時に姿が見えなくても、      影くらいは一瞬でも、見れそうなモンだろ? それすら見えなかったんだ。 080一臣:ストーキング能力の高い忍者が、 081泉 :はいはい、続けるぞ。      アオちゃんの塾が終わるのが二十二時。 両親が多忙だとアオちゃんも理解してた。      だから塾まで徒歩で行き来してたんだけどさ、流石に怖くなったらしくて。      両親にこの話をしてみた。 でも、お前が受験前でナーバスになってるだけだ、      いざとなったら少し遠回りでも明るい道を通るか、防犯ブザーを鳴らせ、って。      まともに取り合ってもらえなかったんだって。 082一臣:ええ……娘の一大事なのに? 送り迎えくらいしてやりゃいいじゃん。 083泉 :俺もそう思った。 でも、アオちゃんはすごく聞き分けのいい子でさ。      両親が次男坊の事をよく思ってないのも知ってた。      万が一の事があった時、次男坊と関わりたくないんだろうな、って思ったみたい。      でも二十二時過ぎに一人で帰る時に遠回りしたくないし、怖いモンは怖いじゃん?      友達に事情を話して、一緒にその道を通ってから、家に泊まりにきてもらおうって思ったんだ。      ルリちゃんとチグサちゃんっていう子なんだけど。 084一臣:ミドリちゃんといい、アオちゃんの周り、寒そうな色の名前の子しかいねえな。 085泉 :その二人はさ、アオちゃんと学校は違うんだけど、塾で仲良くなって。      時々占いとかおまじないとか、オカルティックな話をする事もあったんだって。      まあ、女の子特有の可愛いタイプの、そういう話。      帰り道で起こるおかしな事を話したら、二人はアオちゃんを心配しながら、すごく面白がって。      ついでに勉強会もしようかって、お泊り会をする事になった。      そしたら。 ルリちゃんが、気になる事を言い出したんだ。      ルリちゃんのイトコ、老夫婦の家の近所に住んでて。 086一臣:おお、またご近所ネットワークだ。      みんな案外他所の家の事見てるんだなー……って思うと、それもちょっと怖い気がするが。 087泉 :まあね。 その老夫婦、犬を飼ってたんだけど。      次男坊はそれが気に入らなくて、よく老夫婦と揉めてた。      言い合いと、犬の甲高い鳴き声がしょっちゅう聞こえてた、って話を 088一臣:犬の!? 何て事しやがる、許せねえ……ッ! 089泉 :犬への感情移入早くない? 090一臣:犬だからな。 悪い、俺が冷静なうちに続けてくれ。 091泉 :あ、うん……。 まあ、そのイトコからの話で盛り上がったチグサちゃんがさ。      次男坊に虐められた犬の霊が彷徨ってるんじゃないかって言い出した。      アオちゃんは勿論怖がった。 当たり前だ、犬の霊に夜道で出くわすなんて俺でも怖い。      でもルリちゃんは、アオちゃんに助けて欲しくて存在を主張してるのかもしれないね、って言い出して。      まあ、そんなこんなで兎に角、三人で確かめてみようってなったんだよ。 そこまではよかった。      お泊り会の当日。 チグサちゃんが、家に入って確かめようって言い出すまでは。 092一臣:結末碌な事にならない怪談話あるあるだよな、余計な事言いだすヤツがいるの。 093泉 :興味が勝っちゃったんだって。 勿論、アオちゃんは止めた。      でも話してるうちに、ルリちゃんも乗り気になっちゃって。      大丈夫、ちょっと走れば私のイトコが住んでるから。 何かあればそこに逃げ込もうって。 094一臣:イトコ大困惑の大迷惑じゃん。 095泉 :あ、勿論その日も変な音は聞こえてた。      実際に怪現象に直面して、二人はテンション上がっちゃったんだろうね。 096一臣:でも家主の居ない家に入るのって、シンプルに不法侵入なんだよなあ。 若い子って無敵だなあ。 097泉 :三人でスマホのライトを頼りに恐る恐る家の中に入れば、建付けが悪くなってて、どこからか異臭もしてた。      元々が古い平屋だったけど、壁や畳は何故かボロボロ。 明らかに、人間がやった様には見えなかった。      それもそうなんだよ。 ルリちゃんが事前に近所のイトコにそれとなくこの平屋について聞いたら。      次男坊は老夫婦の葬式を最後に、一度も、家に入ってすらいなかったそうだ。 098一臣:勘付けイトコ……聞かれた時点でこの子達の好奇心故の不法侵入に勘付いてくれ……。 099泉 :時々家が軋む音がする。 磨りガラスに影が横切る。 例のタタタ、って音も、何度も聞こえる。      チグサちゃんが先頭を歩いて、怪現象が起こる度にそれを写真に収めた。      でもおかしな事に、写真には何も映らない。 それを不思議に思って、彼女達は動画を撮り始めた。      動画を撮り始めた頃、アオちゃんが、ある一室から何度も音が聞こえると気付いたんだ。      平屋の一番奥の部屋。 そこは、古めかしいクローゼットがぽつん、と置かれたままだった。 100一臣:おお。 ……ちょっと本格的になってきたじゃん。 101泉 :だろ? 軋んでるんだ、そのクローゼットが、明らかに。      ハッ、ハッ、ハッ、て。 アオちゃんが、他の二人も道中聞いた人の呼吸に似た音も聞こえる。      ──そのクローゼットの中から、何重にも重なって。 102一臣:は……? 103泉 :三人は顔を見合わせて、これは明らかにおかしい、そう言い合った。      チグサちゃんがそのクローゼットに近づいて、コンコン、とノックをして。      誰かいますか? 大丈夫ですか? そう声を掛けた。 当然返事はなかった。 104一臣:いや警察呼べ? 105泉 :三人は顔を見合わせて。 そっと、チグサちゃんが取っ手に手を掛ける。 106一臣:ルリちゃんのイトコ、今なら間に合うから駆け付けろ……! 107泉 :他の二人も、チグサちゃんの肩口から行く末を見守ろうと顔を覗かせ、      そして……意を決してクローゼットを開けた! 108一臣:ああ、グッバイチグサちゃん……! 109泉 :そのクローゼットの中には、ぎゅうぎゅうにひしめき合う毛玉と、くりくりしたおめめ! 110一臣:ん? 111泉 :薄汚れていてもわかるふわふわの、グルーミングが施されていないコロコロの四肢に三人は 112一臣:犬だーーーーーーーーーーーッ! 113泉 :そう! そんな感じで叫んでたんだって! 114一臣:いや違、それ! 映ってた影だの物音だの、まず間違いなくその家の飼い犬じゃん! 115泉 :ポメラニアンのゴロウがそんな事する訳ないだろ! 116一臣:ポメラニアンのゴロウは誰だよ! 117泉 :ポメラニアンのゴロウはポメラニアンのゴロウだよ! 118一臣:そうだな!? 119泉 :アイツすげーいい子だし、ゴロウの他にもわんさか居たんだ、ポメラニアンが!      俺調べたら隣の市でポメラニアンの多頭飼いで飼育崩壊したってニュースあったもん! 120一臣:飼育崩壊許せねェーーーッ! 121泉 :いやそれもさ、心優しい老夫婦とその家の次男坊夫婦との仁義なきポメラニアンバトルがあっての事でさ、 122一臣:ポメラニアンバトルはものすごく気になるんだけど!      物音だの呼吸音だの、全部その多頭飼いのポメラニアンの仕業じゃねえか!      そのポメラニアンは全頭もれなく幸せになってんだろうな!? 123泉 :みんな里親にもらわれて幸せになってるってニュースの締めに書いてあった!      あまりの可愛さに、チグサちゃんもルリちゃんもアオちゃんのお家でも一頭ずつ引き取った!      ゴロウも友達の親戚の家にきて、この間子供産んだって! 124一臣:一安心だわー! 人間の強欲であの毛玉達が一頭たりとも不幸になってない事に安堵したわー!      万が一、万が一の事があったら人間許せねえなって、……ちょっと死にたくなるわあぁ……! 125泉 :伏線、回収……ッ! 126一臣:全然納得いかねえけど……! 127泉 :まあ、次男坊もポメラニアンバトルの後は残されたポメラニアン達が気の毒で家を残してて、      今更どうしたらいいかわからない、もういい歳の大人なのに怒られたくない、      って放置しちゃってたらしいんだわ。 128一臣:本当にどうしようもない奴だな!? 飼うなら最後まで責任とれよ!?      え、じゃあ、なんで家とか荒れ果ててたの!? 129泉 :バッカお前、人が住まなくなった人家ナメんなよ、寂れるのあっという間だぞ。      しかも中にはヤンチャなポメラニアンがわんさかいて、まさにポメラニアンフィーバーだ。 130一臣:え? え? 意味深に連絡が取れない長男は!? 131泉 :南アフリカの僻地へ海外赴任! 132一臣:帰ってこいよぉポメの為によぉ! ……でも、ポメラニアン達が幸せになってるならよかったわ……。 133泉 :そう! この話を聞いた人が掛かる呪いは、小さな命達に優しさを持たずにはいられない呪いでした、と……。 134一臣:……いや、ちょっと聞いていいか? 135泉 :ん? 136一臣:そのぎゅうぎゅうになってたポメラニアンって、自力でクローゼットに入ったのか? 137泉 :そうなんじゃない? 138一臣:クローゼットってさ。 引き戸とか両開きとか色々あるけど……アレ、ポメラニアン開けられるか? 139泉 :あっ。 140一臣:ポメラニアンが自力で開けるには、結構高い所に取っ手ついてると思うんだけど。 141泉 :いや、その、それがこの怪談の怖い所でさー! もしかしたら人が詰めたんじゃないかって、 142一臣:お前、「老夫婦が亡くなって以来誰も入ってない」って言ってたよな? 143泉 :あー……っと、えっと。 ポメラニアン達が一致団結して積み上がって取っ手におててを、 144一臣:馬鹿野郎、下の方に居るポメラニアンが可哀想だろ、重くて泣いちゃうぞ。 145泉 :そっか、えーっと、一体だけ変異した巨大ポメラニアンがいて、 146一臣:無理がある! 147泉 :だって怪談だものそのぐらいの齟齬はあるよ! 148一臣:あっちゃダメだろ! あ!? どっから創作だコレ!? 149泉 :クローゼットにポメが詰まってた所だけ……あっ。 150一臣:クローゼットだけ……? 151泉 :う、うん。 いや他意はない、クローゼットについて全く他意はないんだよ!? ぜーんぜん!      ネットニュース見てみろって、ポメラニアンの多頭飼いで飼育崩壊になったってニュースあるからさ! 152一臣:……お前さ。 153泉 :ん? 154一臣:見ただろ。 155泉 :え、何を? 156一臣:すっとぼけんなよ、おい。 見ただろ。 157泉 :……なにがー? 158一臣:このクローゼットの中! 見ただろ! 159泉 :あ! クローゼットで思い出したんだけど、お前知ってるか!?      ニトリのクローゼットって今すげえ開閉しやすいって 160一臣:誤魔化すの下手かよ! 見たんだな!? 161泉 :ちが、さっきお前がコーヒー淹れにいった時、ちょっとだけ開いてて隙間から見ちゃっただけで! 162一臣:何が違うんだよ、ふざけんなよ! 163泉 :ちょ、 164一臣:何見た。 165泉 :……。 166一臣:ほら、言えねえじゃん。 167泉 :いや……。 168一臣:いいか、黙ってろよ、絶対黙ってろ。 見た物について誰にも言うな。      話したら、……お前もどうなるか、わかんないからな。 169泉 :……。 170一臣:今日のお前、なんか変だと思ったんだ。      急に変な怪談始めたり、BLの話したり、領域展開しようとしたり! 171泉 :ちょっと落ち着けって! 172一臣:落ち着ける訳ねえだろ! 商業BLびっしりのクローゼットの中見られて落ち着ける男がどこにいるんだよ!? 173泉 :個人の趣味趣向は自由だろ! その、ちょっとびっくりしたけど! 174一臣:ちょっとびっくりしてんじゃん! あーあ! 遺書書くわ遺書! これは迷わず遺書をチョイスだわ! 175泉 :ちょ、だから! コンビニ行くノリで死のうとすんな! 呪われんな! 冷静になれって! 176一臣:ポメラニアンの呪い云々より! 友達の男が商業BLあれだけ買い込んでる方がよっぽどホラーだろうがよ! 177泉 :ノノミヤハルコ先生の「Sワン」シリーズで揃ってんじゃんって! 驚いてたんだよ! 178一臣:……え、え? もしかして、もしかしてなんだけど……      「ドS領主の俺が暴君ワンコ様を躾けてみた件」シリーズの話してる……? 179泉 :そうだよ、……俺、「元ドS飼い主領主様の嫁迎え」シリーズからしか、買ってない……からさ……。 180一臣:……お前!? もしかして「飼い嫁」の話をしているか!? 181泉 :そうだよ俺も腐男子だよ!      じゃなきゃお前のねーちゃんがしこたま商業BL買ってるなんて知ってる訳ねーだろ! 182一臣:ねーちゃん! 183泉 :実は行き会う度に滅茶苦茶オススメ布教してもらってた! 184一臣:弟にも布教しないのに! 全部教えろ! 185泉 :お前は! ……なんかぁ、隠したいんだろうなって、思ったから……。      ココで俺から打ち明けるのも、もしクローゼットの中が姉ちゃんの物だったらって思って、      お前から教えてもらえるの、待った方がいいかなって考えてたんだよ……。 186一臣:腐男子バレした友人が実は滅茶苦茶良い奴だった件! 187泉 :なんか、テンパって変な話しちゃってごめんな。 救急箱探してもらったりさ……。 188一臣:腐男子バレした友人が実は滅茶苦茶良い奴だったけどテンパり方が斜め上ぶっ飛んでる件! 189泉 :あと! どうしても言いたかったんだけど! 190一臣:何だ! 友人! 191泉 :指怪我してそのままって作品普通にあるから! 192一臣:それな! 「指先から始まるマブダチ以上」最高だよな! 193泉 :俺は! 恋愛対象女の子だから! 194一臣:盟友よ! 俺もだ! 195泉 :ところで「指マブ」借りてもいい!? 196一臣:よっしゃ全巻貸してやる!「Sワン」シリーズも持ってけ! 197泉 :うわぁしゅごい……宝の山だぁ……。 198一臣:俺、ノノミヤハルコ先生が島サーに居た頃から追っ掛けてるからよ……。 199泉 :筋金入りの腐男子だぁ……。 200一臣:姉ちゃんのせいで、七歳から腐男子だからさ、俺。 201泉 :思ってたより年期入ってたな、七歳って漢字習う前からじゃん……。 202一臣:ま、双丘(そうきゅう)とか注挿(ちゅうそう)とか淫靡(いんび)とか、      その頃には読めてたから問題なかったよ。 203泉 :うん、そっちに掘り下げるの止めよ……? 204一臣:でも、俺のこれってその、所謂(いわゆる)普通、ではないじゃん。 だからこう、なんか……。 205泉 :……まあ、俺。 ハマりだしたの最近だけどさ。      さっきも言ったけど、趣味趣向は適度であれば自由だと思うよ。 206一臣:だからこそ、こうして同志に会えたのが嬉しい訳だしな。 207泉 :そ。 あーあ、スッキリした! へへへ、酒買い足して推しの布教し合おうぜ。 208一臣:おー。 そうだお前、姉ちゃんから布教してもらったの全部教えろよ。 あの人が買うの全部名作なんだぞ。 209泉 :わかるわー。 とりあえずお前の姉ちゃんが進めてくれたの読めば間違いないんだわ。 210一臣:俺ん家って親父含めて一家でBL好きだからさぁ。 211泉 :ん? 212一臣:大量に商業BL持ってるんだけど。 姉ちゃんが買うのは格別なんだよなー。 213泉 :待って待って待って待って。 新情報なんだけど、え!? 親父!? あの銀行員の親父さん!? 214一臣:そうそう。 あ、明日爺ちゃんにも連絡して、出版が昭和のも読んでみるか? 215泉 :親子三代で腐男子!? 216一臣:母方の爺ちゃんは平成に入ってからの方が好みだって言ってたから、そっちには無いかもだけど……      とりあえず連絡とって、オススメ送ってもらうか! 両家から! 217泉 :待って!? 心遣いは嬉しいけど! 情報が多すぎて! 怖いんだけど!? 2022.11.3 初版 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子 サイトへ戻る