最終更新:2024/5/1
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【ライクヘイト】 (らいくへいと) 男性1、女性1。 「納豆ご飯とコーラを一緒に食べられるか」のお話。 私は余裕で食べます。 有償版販売ページは
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。 【向坂 秋人(こうさかあきひと)】 17歳、高校二年生。 小春と付き合い始めて一ヵ月、初めてのデートでウキウキしている。 「納豆ご飯とコーラを一緒に食べられない」、イマドキの優しい男の子。 【堺 小春(さかいこはる)】 17歳、高校二年生。 秋人と付き合い始めて一ヵ月、初めてのデートでウキウキしている。 「納豆ご飯とコーラを一緒に食べる」、気の利く優しい女の子。 【小梅ばあちゃん】 名前のみ。 名店古民家カフェ「七福堂」を一人で切り盛りするばあちゃん。 値段設定は格安、色々世話を焼いてくれる上にサービス精神旺盛なすげーばあちゃん。 【配役表】 向坂秋人: 堺小春 : ======================================= 001秋人:──俺達は今日、初デートをしに来た筈だった。 002小春:どうしてそんな言い方するの!? アキヒトは人の気持ちがわからないの!? 003秋人:ちゃんとわかってるから言ってるんだよ! コハルこそ、そんな惨(むご)い事するなんて、お前の身勝手じゃないのか!? 004小春:そんな言い方しなくてもいいじゃん! 私には私の食べ方があるのよ! 005秋人:じゃあ俺だって俺の食べ方があるんだよ! 納豆と! コーラと! 一緒に食べるなんて有り得ねえだろ!? 006小春:有り得なくないもん! 私は! 今までコーラがある時は一緒に食べて来たもん! 007秋人:──そもそも、俺達はなんでこんな喧嘩をしてるのか。 そこから簡単に説明しようと思う。 まず、さっきも言った通り。 俺達は付き合い始めて……丁度一ヵ月になるかな。 テストや色々な行事が重なって、やっと校外で初めてのデートができた。 つっても。 学校帰りで買い食いとか、ちょっとしたデートはしてたんだけどさ。 008小春:アキヒト! ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった。 009秋人:二分だけだろ、別にいいよ。 遅くなったうちに入んねーよこんなの。 010小春:ちゃんとね、約束の時間の前に来たかったんだけど……。 011秋人:いい、いい。 今日暑いし。 お前そんな急いで来て、疲れてない? 大丈夫? 012小春:大丈夫だよ。 えーっとね、先に……。 013秋人:何? 014小春:はい、これ! 015秋人:……おおお、クッキー!? 作って来たの!? 016小春:うん! 017秋人:マジ、えー、マジで!? 俺なんも用意してねえんだけど! 018小春:いいよ別に。 私が作りたかったから作って来ただけ。 019秋人:うっわー……。 俺、女の子に手作りの菓子もらうの初めてだ。 ありがとな。 020小春:<笑う> 今日は私が行きたいカフェ、連れてってもらうんだし! そのお礼だよ。 ほら、行こ行こ! バイクって初めて乗るんだけど、どうしたらいいかな? 021秋人:──いや、カフェに連れてくだけで手作りのクッキー用意してくれるって。 大袈裟だなーとか、大変じゃなかったのかな、とか。 色々思いはしたけど、俺めっちゃ嬉しくって。 022小春:当たり前だけど、早くてちょっとびっくりしちゃった! バイクすごいね! 023秋人:大丈夫だった? 024小春:大丈夫、大丈夫。 ああでも、足が地に着くのちょっと変な感じするね。 025秋人:ん。 <手を差し出す> 026小春:へ? 027秋人:手。 繋いでやる。 028小春:えっ、……あ、ありがと……。 029秋人:ん。 バイク、学校には黙ってろよ。 030小春:うん、わかった。 031秋人:でー……。 ここで合ってる? 来たかったカフェって。 032小春:そうなの、古民家カフェ! おばあちゃんが一人で切り盛りしてるんだけど、メニューがなんでも美味しいんだって。 いこいこ! 033秋人:ふーん。 七福堂(しちふくどう)、ねえ。 034小春:──今までの買い食いって、一緒にコンビニで買ったりだとか、駄菓子屋覗いてみたり、その程度で。 アキヒトはコンビニの辛いチキンが好きで、アメリカンドックにもマスタードだけかけたり、 辛いの好きなんだあ、私、辛いの食べれないからすごいなあ、とか。 思う事って、それくらいだったんだよね。 035秋人:へー……美味そうだけど、結構量多そう。 コハル、食べきれるか? 036小春:こっちのデザートを食べたかったから、これだけにしようかなって。 037秋人:それだけじゃ足りないだろ。 いいよ、食べきれなかったら俺、食べるから。 こっちのメシどれか頼めよ。 038小春:いいの? 039秋人:いいよ。 俺今日、お前の分も奢る気で来たし。 040小春:えっ。 041秋人:お前の分まで食えた方が得だろ? 042小春:いいよ、悪いよ! 私もちゃんとお金持って来たから、 043秋人:この後プラネタリウム行くんだろ。 その後食う晩飯はちゃんと割り勘。 はい、チケット。 044小春:じゃあ私、このプラネタリウムの方はお金出すから! 045秋人:いいんだって! ……その。 初デートなんだからさ。 クッキーまで、もらっちゃったし。 ちょっと張り切ってんの! 俺の顔立てろって。 046小春:……わ、かった。 ありがとうね。 047秋人:おう。 それでいいんだよ。 何食うか決めよ。 048小春:──学校で食べる物も、購買のパンとか、お互いのお母さんが作ったお弁当で。 049秋人:あ、あー……コウメばあちゃん、俺らばあちゃんの話、後でゆっくり聞きたいからさ。 先に注文、取ってもらっていい? 050小春:──ある程度決められたメニューを食べて来たから、何ていうか……。 051秋人:えっと。 俺がこの、アジフライ定食大盛り。 んで、こっちがハンバーグの定食。 こっちは普通盛りで、あと食後にこの紅茶のパウンドケーキ、頂戴。 まーじで!? これ、デザートもコウメばーちゃん一人で作ってんの!? すげーね!? 052小春:──自分で選んで一緒に食事をするって、この日が初めてだったんだよね。 053秋人:ばあちゃん一人で大変じゃない? 俺ら出来上がったら運ぶから言ってよ。 いーっていーって! 話聞かせてくれるんでしょ、じゃあその分手伝う。 な、コハル? 054小春:──あんな事で喧嘩になるだなんて、思いもしなかったな。 055秋人:あ。 二人とも、飲み物コーラで! 056秋人:おお、美味そうー。 色々ありがと、ばあちゃん。 057小春:すみません、良くして頂いて……。 058秋人:俺ら食い終わったら、また話聞かせて。 んじゃ、食いますかね。 059小春:うん。 頂きまーす! 060秋人:頂きます。 って、あれ。 メニューに納豆なんて載ってた? 061小春:あ、私のも付いてる。 おばあちゃーん、この納豆……。 062秋人:……えー、マジ!? 食っていいの!? サービス!? 063小春:すみません、ありがとうございます! 064秋人:すっげ、こんだけ食って七百円とか。 購買のパンが一個百三十円とか馬鹿らしくなるな。 065小春:ね。 全部美味しそうだし。 066秋人:え、お前納豆から食うの? 067小春:ん? ああ、納豆ご飯にしようと思って。 068秋人:えー、ハンバーグと? 069小春:うん。 アキヒトは納豆食べないの? 070秋人:ああ、俺お代わりするつもりだから、納豆はそっち。 アジフライ定食なんだから、先そっちで食べようと思って。 071小春:そっか。 すごいね、ハンバーグも美味しそうだけど、アジフライも美味しそう。 072秋人:おー。 食い切れなかったら食うから、無理すんなよ。 073小春:わかった。 074秋人:……って。 075小春:ん、何? 076秋人:……いや、お前納豆混ぜた箸でハンバーグ食うの……? 077小春:え? あ、ごめんね! そっか、アキヒトが食べるかもしれないもんね。 この辺りは私が食べるね。 078秋人:ああ、うん。 079小春:お行儀悪かったかな……。 コウメおばあちゃん、割り箸もう一膳、もらっていいですか? 080秋人:<苦笑する> ……いや、ちょっとビビったわ。 081小春:ごめんね、……アキヒト、舐(ねぶ)り箸。 082秋人:ん? 083小春:その、食事中に箸を舐めるの。 ちょっとお行儀悪いよ。 084秋人:んえ? いやだって、みそ汁にアジフライの油、入ったら嫌じゃん。 085小春:迷い箸! 086秋人:あ、ああ……そうだ、コレ駄目なんだよな、ごめん。 家で食ってる時の癖で……。 087小春:わかる、外で食べると出ちゃうよね。 088秋人:でも、コハルは食い方すげー綺麗だよな。 089小春:そう? お母さんが厳しかったんだよね。 アキヒトは寄せ箸しないの。 090秋人:あ、コレ寄せ箸っていうんだ。 俺よくやっちゃうんだよね。 うち両親共働きでさ、俺一人でメシ食う事が多かったか、ら……? 091小春:ん? 092秋人:……お前、今、コーラ飲んだ? 093小春:ん? うん、飲んだよ。 094秋人:納豆食いながらよくコーラ飲めるな……。 095小春:えー? 嘘、変かな? 096秋人:変ってか、合わなくね? 097小春:あんまり気にしないな。 098秋人:マジで、だってさあ、 <箸を置く> 099小春:渡し箸しないの、ちゃんと箸置きあるじゃない。 100秋人:お、おう……。 いや、あのさあ。 コーラってなんか、……納豆じゃなくね? 101小春:まあ、言わんとしてる事はわかるよ? 102秋人:ピザとかさあ、まあ、焼肉、とかまではギリギリわかる。 103小春:うんうん。 104秋人:って相槌打ちながら納豆ご飯食ってコーラ飲むのな……。 105小春:へ? 106秋人:いや、味想像して食欲失せるっつか……そしてハンバーグを食べるのな……。 107小春:えーっ。 そんなにおかしい? 108秋人:まあ、……ハンバーグとコーラもわかる。 でもそこに納豆って。 109小春:だって、折角出してもらってるんだし。 110秋人:折角出してもらってるから、一番美味しく食べようとは思わない? 111小春:私にはこれが美味しいんだもん。 112秋人:……まーじで。 113小春:まじ、まじ。 え、むしろ何がダメ? 114秋人:いや、……なんかぁ、合わないじゃん。 115小春:そればっかり。 116秋人:結構ゲテ物食いなんだな。 117小春:ゲテ物、そんな事ないでしょ。 え、朝ご飯にさあ、目玉焼きと納豆と一緒に出ない? 118秋人:だから、そこにコーラが参入するのが有り得ないんだって。 119小春:有り得ない事ないでしょ、私は普通に食べれるもん。 120秋人:家でどういうメシ食ってんの。 121小春:普通のご飯だよ。 122秋人:いや普通じゃねえよ、コーラはなぁ……。 123小春:寄せ箸。 124秋人:すみません。 125小春:……あのさあ、さっきから私の食べ方に色々ケチつける前に、 箸使うお行儀どうにかしなよ、見苦しいよ。 126秋人:……いや、見苦しいって。 俺からしたら納豆ご飯とコーラ一緒に飲み食いしてんのも見苦しいんですけど。 127小春:はあ? さっき食べ方綺麗だよなー、とか言ってたじゃん! 128秋人:それは納豆ご飯食ってコーラ飲み出す前の話! 129小春:……さっきから黙って聞いてればさあ、人の食べ方にごちゃごちゃ言って……! 130秋人:お前だってさっきから、何とか箸だの何とか箸だのうるせーじゃん! 131小春:それはお行儀が悪い事だって私は両親から教わってきたから言ってんの! じゃあアキヒトは! 納豆ご飯と一緒にコーラ飲むのがお行儀悪いって誰かに言われたの!? 132秋人:そもそも食事中にコーラ飲むって 133小春:それは二人とも今飲んでる! ファミレスとかドリンクバーにコーラ置いてる! 今そこは関係ない! ちょっとだけ目つぶんないと話進まない! 134秋人:そうだな! 全国のメニュー開発の皆さんを危うく敵に回しかねない所だった! いやだってさあ! 135小春:箸を白米に立てるなぁッ! 136秋人:それはすみません! そもそも行儀行儀って、行儀ってなんだよ! 137小春:行儀とは! 礼儀の面からみた立ち居振る舞い! また、その作法、規則! 138秋人:お前……ッ! 国語の成績が良いだけあるな……! 139小春:学年トップ、ですから……! 140秋人:グッ……! じゃ、じゃあお前、コハルは、折角出してもらってるんだから? コーラがあればとりあえず一緒に飲む感じなんだな? 141小春:そうだよ。 私、外食したら大体コーラ頼むし。 142秋人:俺もコーラ頼むけど、まあ、合わないなって思ったら今みたいに、食事の後に飲むんだわ。 143小春:言われてみたらそうだね。 そういうタイミング何回かあったね。 144秋人:駄菓子とかな。 145小春:うん。 なんで今飲まないんだろう? って思ってた。 146秋人:コハルは、折角出してもらってるから、一緒に飲むんだよな? コーラ。 147小春:う、うん。 氷溶けて薄くなっちゃったり、温くなるの嫌だし……。 148秋人:何でもコーラと一緒に飲み食いするんだな? 149小春:する、それはする。 コーラ好きだし。 150秋人:じゃあお前! インジェラとコーラが一緒に出て来ても一緒に食うんだな!? 151小春:インジェラって何!? 152秋人:インジェラとは! エチオピアを代表する主食! まあ要するに穀物を発酵させて薄く焼いた物で、現地人以外からは 「見た目はボロ雑巾で味はゲロ」っていわれてる! 153小春:ンなモン食わすな! えっ無理無理無理! 154秋人:言ったな? 無理だっつったな? ──俺、エチオピアを代表する主食だって、言ったよな? 155小春:え……? 156秋人:要するに酸っぱいクレープなの。 まあ、見た目はボロ雑巾って、言い得て妙だと俺は思うんだけど。 酸っぱいってだけで、別に本当にゲロの味がするわけじゃない。 エチオピアじゃあ肉でも魚でも、クレープやらガレットに載ってるおかず系のモンは インジェラに乗って出て来んの。 エチオピアならではの料理って訳。 157小春:う、うん、それが……? 158秋人:納豆ってさ。 発酵食品だよな? 159小春:うん。 160秋人:国民食な訳だ。 161小春:う、うん。 162秋人:外国人から見たら、有り得ない食い物じゃん。 163小春:まあ、そう言われてるね……。 164秋人:お前はこれだけ納豆と似てるインジェラと! コーラを! 一緒に飲み食いできないって言った! 165小春:圧倒的屁理屈! 166秋人:エチオピアの人、インジェラとコーラ一緒に飲み食いしてるかもしれねーじゃん! お前にも許容できないコーラとの食い合わせがまだあるかもしれねーじゃん! 167小春:グッ……! 世界史の成績が良いだけある……! 168秋人:学年トップ、ですから……! 169小春:……てか思ったんだけど。 170秋人:お? まだ何かあんの? 171小春:今の私達の争点って、納豆とコーラの食べ合わせについてで、私の食の許容範囲ではないよね? 172秋人:……まあ。 173小春:食の許容範囲って話になるならさあ。 アキヒトは納豆とコーラ、一緒に食べた事ある? 174秋人:……ない……なあ……。 175小春:アキヒト! あーんっ! 176秋人:無理無理無理! ンなモン食わすな!? 177小春:納豆って国民食だよね!? 海外の人からしたら有り得なくてもアキヒトは日本人だもんね!? 食べれるもんね!? エチオピアの人、インジェラとコーラ一緒に飲み食いしてるかもしれないじゃん! 178秋人:ぐっ……! 179小春:何事も経験だと思わない? 食べた事がないのに否定するのは、おかしいと思わない? ──アキヒトは、エチオピアの人の目の前で、インジェラを否定するの? 180秋人:ぬぅ……わ、わかった、食べてみるから……。 181小春:食べたらコーラも飲んで。 182秋人:くっそ、彼女からのはい、あーんってもっとドキドキするイベントじゃなかったのかよ……! 183小春:私そんなに魅力ない? 184秋人:別の方向でドキドキしてんだよ! わかった、食って飲むから。 あー……。 185小春:はい、飲み込んだらコーラ飲んで飲んで。 ……ど? 186秋人:……やっぱねえわ……。 納豆ご飯とコーラはねえわ……。 187小春:どうしてそんな言い方するの!? アキヒトは人の気持ちがわからないの!? 188秋人:ちゃんとわかってるから言ってるんだよ! コハルこそ、そんな惨い事するなんて、お前の身勝手じゃないのか!? 189小春:そんな言い方しなくてもいいじゃん! 私には私の食べ方があるのよ! 190秋人:じゃあ俺だって俺の食べ方があるんだよ! 納豆と! コーラと! 一緒に食べるなんて有り得ねえだろ!? 191小春:有り得なくないもん! 私は! 今までコーラがある時は一緒に食べて来たもん! 192秋人:だからそれが気持ち悪いっつってんの! 有り得ねえんだけど!? 193小春:……っていうか! いつも私の事お前って言ったり! さっきの「手、繋いでやる」とか、何なの!? 何様なの!? 194秋人:なっ、それは! お前トロいから助けてやろうと思ったんだよ! 195小春:私別に頼んでないんですけど! 196秋人:それを言うなら俺だって! クッキー作って欲しいなんて頼んでねえし! さっきの何とか箸も! 一々恩着せがましいっつか大袈裟なんだよお前! 197小春:アキヒトだって! ちょっとした事、いつまでもネチネチ言うじゃん! アレほんと面倒臭いんだから! 198秋人:──その時。 いつの間にか俺達の傍に歩み寄っていたこの七福堂の店主、 コウメばーちゃんのゲンコツが、同時に俺とコハルの頭上に飛んだ。 199小春:いッ……!? 200秋人:いって……!? 何すんだよ、ばーちゃん! 201小春:──「仲良く喧嘩してるみたいだから、ばあちゃん黙って見てたけどね。 ご飯、そのままにしてずうっと喧嘩をしてるのは、駄目だよ。 折角ばあちゃんが一生懸命作ったのに、アジフライも、ハンバーグも、冷めちゃうよ。」 コウメばあちゃんはそう言いながら、私とアキヒトの右手を順番に箸に沿える。 202秋人:あ……。 ご、ごめん、ばあちゃん。 203小春:ごめんなさい、そうですよね、食事中に……。 うるさかったですよね。 204秋人:──「今日はお客さん、アンタ達だけだからね。 それは気にしなくていいんだよ。 でもね。 大きい声で怒鳴り合って喧嘩をするのも、駄目だ。 そんなに頑張って喧嘩してたら、二人とも、立ち止まる所がわからなくなっちまうよ。」 205小春:……そう、ですね。 ごめんね、アキヒト。 折角初めてのデートだったのに。 206秋人:いや、……何か、ごめん、コハル。 俺ムキになってた。 207小春:──「ばあちゃんと、ばあちゃんの旦那さんは。 今みたいに食べ物が沢山無かった頃から、沢山喧嘩したよ。 じいちゃんはね、病院でついに食べ物が食べられなくなって死んで。 ばあちゃんね。 もっとじいちゃんと一緒にご飯食べたかったなあって。 そう思ったから、この店を始めたんだよ。」 話しながらコウメばあちゃんは、一度カウンターに戻って、 今より少しだけ若いコウメばあちゃんと、おじいさんが写った写真を見せてくれた。 「あんた達もこうなるまで、仲良くしないと駄目だよ。」 そう笑いながら。 208秋人:……そうだね。 じいちゃん、すげえ、イケメンだね。 209小春:──アキヒトが言うと、ばあちゃんは嬉しそうにありがとう、と笑いながら続ける。 「納豆ご飯とコーラでも、なんでもかんでも。 美味しく食べれたらそれでいいだろう。 美味しく食べれない方が不幸だ。 あんた達は、相手を不幸にしたくて、デートしてる訳じゃないんだろう?」 210秋人:うん。 ……何か、ありがとな、ばあちゃん。 211小春:重ね重ね、お世話になっちゃってごめんなさい。 ありがとうございます。 212秋人:──ばあちゃんは、何も気にしなくていいんだよと笑いながら。 「インジェラとコーラも、美味いモンだよ。」 そう言って。 俺達の前にそっと、海外旅行、エチオピア旅行の写真を見せてくれた── 213秋人:……ば、ばあちゃん……エチオピア行った事あんの!? 214小春:<小声> インジェラの見た目ほんとにボロ雑巾だ……! 215秋人:へえ、じいちゃんと……。 すげえなばあちゃん、俺まだ日本から出た事ねえよ。 ……わかった。 もうこんな事で喧嘩しないよ。 うん、約束する。 216小春:あの、私も……。 え、アイス? 217秋人:マジ!? うん、ケーキにアイス乗せてやって! 218小春:アキヒトにもケーキ、いいんですか!? ありがとうございます! 219秋人:ねーばーちゃん、そんなにサービスして店大丈夫なの? ……んじゃあ、お言葉に甘える。 ありがと! へへへ、ラッキー。 220小春:あの、アキヒト。 ……さっきの、本当にごめんね。 221秋人:ん? ああ、……。 俺も言い過ぎた、ごめん。 222小春:でも。 223秋人:そんな気にすんな。 俺にもシフォンケーキ、出してもらえるみたいだからさ。 雨降って地固まる、ってヤツだよ。 うん。 224小春:……そうだね。 でも、コウメばーちゃんすごいね。 旦那さんと世界旅行だって。 225秋人:日本に帰って店持って、すげーな。 ……いいな、そういうの。 226小春:ん? 227秋人:お前、あーっと、コハルと、世界旅行。 楽しそうだなって。 228小春:そうだね。 その時はアキヒトの事頼ろ。 英語も成績良かったよね? 229秋人:そっちは三位なんだよな。 230小春:十分でしょ。 231秋人:コハルは理系もできんじゃん、そっちの方がすげーよ。 ……俺の事気にしないでいいから、納豆ご飯食えって。 コーラも飲んでさ。 232小春:え、なんでわかったの? 233秋人:いや、お冷飲んでんじゃん。 気にしてるんだなって思うだろ。 好きに食えって。 234小春:ありがと。 235秋人:いいえ。 ……なあ、他にそういう、変わった食い合わせしてない? 236小春:他、はー……。 ないと思うけど、ちょっとわかんない。 これから、ソレ変じゃねって思ったら言って。 237秋人:これから。 238小春:ん? これから。 私が気づいてないだけで、お行儀悪いのかもしれないし……。 239秋人:わかった。 ……あの、箸の使い方、なんだけどさあ。 240小春:箸、うん。 241秋人:……ま、今じゃなくていいや。 これからは、何か変だったらコハルに教えてもらえばいいし。 ばーちゃん、ご飯お代わり! 242小春:受け箸。 243秋人:えっ、これも!? ……わかった。 244小春:<笑う> これから、ね。 245秋人:そ、これから。 おお、ばーちゃんめいっぱい盛ってくれたな、ありがと。 あとマヨネーズももらっていい? はーい! 246小春:え、マヨネーズ? アジフライもう無いよ? 247秋人:俺も納豆ご飯好きなんだけどさ。 このついてるタレとマヨネーズが合うんだよなあ! 248小春:えっ……。 249秋人:どした? 250小春:いや、納豆とマヨネーズは、何か違うっていうか……。 251秋人:えっ。 <秋人、小春、ややあって笑い合う。> 2021.6.16 初版 羽白深夜子 2021.6.18 更新 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子
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