最終更新:2024/5/1
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【パラディーススの庭】 (ぱらでぃーすすのにわ) 男女可2人。 どちらも一人称が「私」になっていますが、 男性がご担当下さる場合、「俺」「僕」など、自由に変えて下さって大丈夫です。 語尾なども、言いやすいように変えて構いません。 有償版販売ページは
こちら
。 【配役表】 モデル: 画家 : ======================================= 001モデル:こんにちは。 今日、予約を入れている者なんですけれども。 002画家 :はい、こんにちは。 お待ちしておりました、お荷物頂戴します。 コーヒーと紅茶。 どちらをお持ちしますか。 003モデル:えっ。 お茶が出るんですか。 004画家 :お出ししていますよ。 お子様がいらっしゃいましたら、ココアやホットミルクなんかも。 炭酸飲料でも。 アルコール以外でしたら、なんでも。 005モデル:ふうん。 あ、紅茶、頂けますか。 006画家 :畏(かしこ)まりました。 ご用意して参りますので、あちらで先に、お着換えの方を。 007モデル:はい。 008画家 :お召し物、如何(いかが)ですか。 きつかったり、逆に、大きかったりしませんか。 009モデル:大丈夫です、多分、ぴったり。 010画家 :ならよかった。 011モデル:どうです、大丈夫そうですか。 012画家 :はい。 ぴったり、でございますね。 013モデル:よかった。 014画家 :簡単にご説明差し上げますので、お掛け下さい。 そちら、召し上がって。 015モデル:はい。 016画家 :ええーと……。 まず。 制作に二時間程、お時間を頂戴します。 よろしいですか。 017モデル:<苦笑する> 勿論。 予定、ここだけなんで。 018画家 :その間、出来得る限り、動かないよう。 019モデル:はい。 あの、質問いいですか。 020画家 :どうしました? 021モデル:休憩とかって、できますか? 022画家 :勿論。 先程二時間、と申しましたが、制作自体に掛かるお時間ですので。 お体にご負担が掛かるかと思います。 疲れたなと思ったら、お声掛け下さい。 023モデル:よかった。 二時間もジッとしていられる自信、なかったから。 024画家 :ここに来られる方、皆さんそう仰いますよ。 025モデル:あと、もう一つ。 026画家 :はい。 027モデル:笑っていないと、駄目ですか。 こういうモデルって、笑顔で描かれている事が多いかな、と思うんですけども。 そういうの、苦手で。 028画家 :そうですね。 私の方で、笑顔で、描かせて頂きます。 ですが、必ずしも私が描いている間、あなたが笑顔でなければならない、という訳ではありません。 029モデル:そういうものですか。 030画家 :はい。 先程、ちらと笑っておられましたので。 そちらを私が覚えているので、問題ありませんよ。 031モデル:よかった。 ちょっと心配だったんです。 032画家 :そうでしたか。 ……んー。 割と人当たりの良い方(かた)だと思っていたんですが。 033モデル:愛想笑いです。 多分。 034画家 :成程。 人当たりが良い、というよりは。 社交的な方なんですね。 035モデル:少なくとも、厭世的(えんせいてき)ではないと思います。 036画家 :なら、なにも心配はありません。 説明は以上になります。 何か、ご不明点や不安な事はありますか。 037モデル:いえ、大丈夫です。 038画家 :では始めましょうか。 こちらへどうぞ。 039画家 :<苦笑する> ……お喋りは、大丈夫ですからね。 040モデル:えっ。 あ、ああ……。 座ってみると、緊張するものですね。 041画家 :皆さんそう、仰いますね。 緊張するとね、余計に筋肉が強張って、疲れます。 リラックスして下さい。 042モデル:難しいな……。 043画家 :まあ、ですよね。 044モデル:はい。 ……さっき、飲み物の話で。 045画家 :はい。 046モデル:お子様がいらっしゃった時の事、お話されてましたよね。 047画家 :ああ、はい、たまに。 小さいお子様も、描かせて頂きますよ。 048モデル:そうなんですね。 大変そう。 049画家 :お行儀の善し悪しの割合は正直、大人とそう変わりないですよ。 050モデル:そうなんですか? それは、お行儀の良い子が多いのか、そうでない大人が多いのか。 051画家 :後者かな。 大人の方がね、辛いと音を上げる方、結構いるんですよ。 052モデル:そうなんだ。 こうして描かれた物は、保管とかされるんですか? 053画家 :いいえ。 すぐ、出荷になります。 054モデル:じゃあ、向こうに見えるあの風景画は? 055画家 :私が描いた物ですね。 056モデル:へええ。 すごい、写真みたい。 057画家 :恐縮です。 あれらは災害や紛争で、もう見る事が叶わない景色なんですよ。 058モデル:ああ、成程。 059画家 :もう少し、顔を上げて。 060モデル:あ、すみません。 061画家 :いいえ。 疲れてきましたか。 062モデル:ちょっと。 慣れない事って、難しいですね。 063画家 :そうですね。 休憩のお申し出は、いつでも。 大丈夫なので。 064モデル:ええ、まだ、大丈夫です。 065画家 :そうですか。 すごいな、集中力があるんですね。 066モデル:きっと仕事柄でしょう。 067画家 :何のお仕事を? 068モデル:エスイー、プログラミングを。 069画家 :おお。 私パソコンは、さっぱりで。 すごいな。 そしたら何時間も、そうして座っていらっしゃったんですね。 070モデル:ええ。 でも意識して体を動かしたりは、していたので。 こうしてただただジッとしているのも、難しいなって、今。 071画家 :<笑う> 072モデル:画家さんも、すごいですね。 もうずっとそうして、鉛筆を動かしているじゃないですか。 全然止まらない。 073画家 :こういうのはね、勘とか、慣れってモノなんです。 きっと。 074モデル:私はそっちの方面が、からっきしで。 自由に線が引けて、見た物を描けるだなんて。 私には途方もない事に感じます。 075画家 :私にとっては、入力という法則に則って物を作られるというのが。 何とも果てしない話に聞こえます。 076モデル:そういうものですか。 077画家 :隣の芝は蒼い、んですかね。 078モデル:まあ、きっとそうなんでしょうね。 079モデル:……こうして、絵を描いて、どれくらいになるのですか。 080画家 :どれくらい……ああ、でも。 随分長い事、描かせて頂いていますね。 081モデル:元々、絵を描くのがお好きなんですか? 082画家 :はい。 まさに、天職。 ですね、私には。 083モデル:絵というのは。 そうして描いていて、飽きないものなんですか。 084画家 :私は飽きないですね。 飽きた事がないです。 むしろ、寝食を惜しんでやるタイプです。 085モデル:ああ、本当に天職ですね。 086画家 :はい。 あなたにとっては、その、プログラミングは。 087モデル:天職……どうだろう。 天職を探すのを諦めて、なんとなく、かな。 お恥ずかしい話ですけれども。 088画家 :恥ずかしい事はありませんよ。 大層に立派だと思います。 そして。 私のようなタイプが、稀なんでしょう。 089モデル:羨ましいな。 寝食を惜しむなんて事、一度もなかった。 090画家 :小さい頃、憧れていたものは。 あ。 踏み入るような話になってしまいますが。 091モデル:いえいえ。 今はもう、明かすアテもありませんし。 こういう時くらいは。 092画家 :ならよかった。 093モデル:小さい頃は。 ……パティシエ、になりたかった、かな。 094画家 :ほう、パティシエ。 095モデル:ああ、まあ。 よくある感じですよ。 テレビに出てくるお菓子が、それを作っている人が、素晴らしく見えたっていう。 096画家 :わかります。 飴細工とか、すごいですよね。 097モデル:そうそう、まさに、です。 飴細工が乗ったケーキ。 夢でしたね。 098画家 :あと、何段も重なったケーキ。 099モデル:ああー。 大人になって、アレはちゃんと支えが入っていて。 食べられる場所の方が少ない、って。 知った時の残念さったら。 100画家 :なんだっけ、シュークリームが沢山くっついた……。 101モデル:クロカンブッシュ。 102画家 :そう、それだ。 アレシュークリームの下、画用紙だったりするんですよね。 103モデル:<笑う> そう、画用紙を丸めた塔。 104画家 :あれを知った時の虚しさというか。 105モデル:わかります、わかります。 106画家 :……そう思うと。 大人になる、というのも。 虚しいものですね。 107モデル:そうですね。 ああ、成人式、なんてありますが。 私捻くれていたので。 アレは親とか、そういう、身の回りの人達のものだよな、って。 108画家 :ですねえ。 109モデル:そういう、周りの方へのお祝いが大事だって、 ……知るのは大人になってからなんですけれどね。 110画家 :ああ……。 111モデル:あの頃は、自分の為のお祝い、自分が主役のお祝いだって。 でも自分でそう思っていたら、そういうものなのか。 112画家 :かも、しれませんね。 そういえば、自分で自分の為に、祝い事を催すというのは。 あまりないですね。 113モデル:確かに。 ああ、だから、ケーキ。 114画家 :ああ。 自分へのご褒美、というヤツですか。 115モデル:だからこそ大人になった今でも、ああしてケーキに盛り上がれるのかもしれませんね。 ケーキ、すごいですね。 116画家 :すごいですね。 そう、それこそ。 祝い事の象徴だ。 117モデル:確かに。 118画家 :捻くれていた、と仰いましたが。 119モデル:はい。 120画家 :どんなお子さんだったんですか。 121モデル:どんな、……。 んん。 捻くれていた、普通の子供、だったかな。 122画家 :運動が好き、とか。 123モデル:運動は苦手でしたね。 室内で遊んでいる方が、好きな子供でした。 124画家 :おお、そうして集中力を。 125モデル:さっきから集中力、褒めて下さいますね。 126画家 :中々いらっしゃらないんですよ。 こうして長時間、あまり身動ぎせず、休憩も取らない方って。 127モデル:ちょっと慣れてきたかもしれません。 128画家 :いいですね。 その調子で、リラックスしていて下さい。 129モデル:画家さんも、お話が上手ですよね。 130画家 :ん、私が? 131モデル:はい。 お陰様で、雰囲気に慣れてきた感じが。 132画家 :おお。 それは初めて言われました。 恐縮です。 133モデル:そうなんですか。 134画家 :はい。 135モデル:飽きない、お話に飽きない、というか。 136画家 :老若男女、問わずにいらっしゃいますからね。 ここは。 137モデル:そうなんだ。 138画家 :始める前にご説明した通り。 無理に笑う事はないのですが。 それでも自然体な方が、私も描きやすい事に、変わりはないので。 こうしてお話して頂いていると、描きやすい。 だから、無意識に上手い事やっているのかもしれません。 139モデル:強張っていると、ですか。 140画家 :そうです。 強張っちゃうと、どうしても。 141モデル:へええ、そういうものなんですね。 142モデル:……こうして、ゆったりしていると。 143画家 :はい。 144モデル:考えがまとまっていいですね。 適度に、話を聞いて下さる方もいるし。 145画家 :それは、わかります。 146モデル:……なんて、手を動かして頂いていて、アレなんですけども。 147画家 :<笑う> いえ、そこは全然。 148モデル:……こういう時間が、もっと取れたらなあ。 149画家 :難しいですよね、中々。 そうもいかない。 150モデル:ええ。 今のこの時間も、絶対に体験できない事では、あったなあって。 151画家 :絶対に体験できない。 152モデル:こうして、私の絵を描いてもらうなんて。 153画家 :巡り合わせですよ。 154モデル:<苦笑する> そうですね。 155画家 :何事も、そういうものだと、私は。 156モデル:そうですね。 そう、ですね。 157画家 :もう直(じき)に、描き上がりますよ。 158モデル:え、もうそんなに。 159画家 :はい。 そろそろ、二時間になります。 160モデル:……そうだったんですね。 161モデル:……あの。 162画家 :はい。 163モデル:少しだけ、お行儀を、悪くしてもいいですか。 164画家 :ん。 どうなさいました。 165モデル:いえ。 描き続けて頂いて、大丈夫です。 お邪魔はしません、きっと。 166画家 :ああ、はい。 167モデル:……もっと、色んな事。 頑張れたかもしれなかったなあ、って、思って。 夢とか、ケーキとか、……もっと色んなものに、賴れたんじゃないかなあって。 168画家 :……そんな事、ありませんよ。 きっと。 169モデル:そうでしょうか。 170画家 :ええ。 あなただけではなく、ここにいらっしゃる方、皆さんそうだと思うのですが。 頑張った末、辿り着いたのが、ここなのだと。 171モデル:そうなんでしょうか。 172画家 :私は、そう思います。 173モデル:……そうですか。 174画家 :そう思うから。 今、ここで、あなたを描いているんだと。 思いますよ。 175モデル:巡り合わせ、ですか。 176画家 :はい。 きっと。 177モデル:……そう、ですね。 もう何を言っても、仕様がない。 178画家 :さて、と。 <手を払う> お疲れ様でございました。 完成しましたよ。 179モデル:……見ても? 180画家 :勿論。 181モデル:なんか、緊張しますね。 182画家 :気に入らない個所があれば、何ヵ所でもお申し付けください。 183モデル:言っていいんですか? 184画家 :勿論。 あなたにご満足頂かないと、意味がない。 185モデル:じゃ、じゃあ。 見ますね。 186画家 :はい。 こちらになります。 187モデル:──……私、ですね。 188画家 :はい。 189モデル:笑ってる、私。 190画家 :私と話している最中。 笑っていた、あなたです。 191モデル:……鏡で見るのと、少し違う。 192画家 :<苦笑する> お気に召しませんでしたか。 193モデル:いえ、……描いてもらうと、こう見えるんだなって……。 194画家 :はい。 私の目には、こう。 195モデル:……これが。 私の生前の知り合いみんなの、記憶になる。 196画家 :そうです。 あなたが旅立ち次第、お知り合いの皆様の記憶に。 お気に召しましたか。 197モデル:勿論。 ……ああ、この絵を、覚えていてもらえるなら。 198画家 :自殺してよかった、ですか。 199モデル:え。 200画家 :そう仰る方、多いんですよね。 こうして笑っている顔を覚えていてもらえるなら、安心だって。 201モデル:……ちょっと違うかな。 202画家 :おや。 203モデル:この絵があれば。 もう、私自身はどこにでも行けるな、って。 ちょっと思ったんです。 204画家 :成程。 ……それは、あまり聞かない見解ですね。 ですが、私は好ましく思います。 ありがとうございます。 205モデル:<笑う> いいえ。 ……ここが、終点だと聞いていたのですが。 206画家 :はい。 207モデル:持って来た荷物は。 208画家 :一足先に、旅立っております。 209モデル:あ、そうなんだ。 ……そうなんだ。 210画家 :お出口は、あちらになります。 良い旅路を。 211モデル:はい。 素敵に描いて下さって。 本当に、ありがとうございました。 212画家 :──ここは、パラディーススの庭。 パラディーススとは、ラテン語で「天国」。 自ら命を絶った人間が、自らの足で。 最後に訪れる流刑地の名前。 2020.11.18 初版 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子
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