最終更新:2024/5/1
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【亡骸メメントモリ】 (なきがらめめんともり) 男性1、女性1。 反社会的描写を含みます。 有償版販売ページは
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。 【大島 和冴(おおしまかずさ)】 無職(男娼)。27歳男性。 高校を卒業し単身上京、男性相手に売春をしながら過ごしている最中、里桜に出会う。 【来栖 里桜(くるすりお)】 SMクラブ勤務。27歳女性。 新宿区内の高層マンションに一人で住みながら、SMクラブに勤務している。 【配役表】 大島和冴: 来栖里桜: ======================================= <京都、ホテルの一室。> 001和冴:──楽しかった。 じゃあな。 002里桜:ドライブが? 一緒に暮らしたのが? 003和冴:<舌打ち> お前、寝たフリかよ。 趣味悪ぃな。 004里桜:さっき寝たのが? ねえ、どれ。 005和冴:教えない。 006里桜:そんなお別れみたいな言い方してるの聞いたら、気になるじゃん。 ねえ、寝直そうよ。 一人で行っちゃったら、私ちゅーで起こせないよ。 007和冴:……。 008里桜:……あの車、レクサスって言うんだね。 ケータイのニュース見たよ。 009和冴:……なんて。 010里桜:新宿区内のホテルで、資産家夫婦が何者かに頭部を強打されて重体、今治療中、 ご主人の車が持ち去られたって。 011和冴:いつ、見た。 012里桜:インターに止まった時。 013和冴:は。 じゃあお前、俺が強盗犯だってわかってて寝たのか。 014里桜:別になんも変わんないよ。 私にとっては。 015和冴:何考えてるんだよ。 016里桜:カズサ、警察行こう。 017和冴:行かない。 俺は、戻らない。 018里桜:そっか。 じゃあどこに行こっか。 019和冴:……。 020里桜:お願いって言ったの、叶えてくれたからさ。 今度はカズサが決めていいよ。 ……カズサ。 021和冴:お前、なんでそうなんだよ。 022里桜:そうって? 023和冴:始めっから、全部、何もかも、どうしてそうなんだよ。 <繁華街路地裏。蹲る和冴と、通りかかる里桜。> 024和冴:<激しくむせる> 025里桜:ねー、何でそんなトコでゲロっちゃってんの。 026和冴:……。 027里桜:大丈夫? <肩に手を置こうとする> 028和冴:<手を振り払う> 029里桜:おっと。 わかった、触るのはノーね。 水飲める? 飲んだ方がいいよ。 ここに置くね。 <しばらく和冴を見た後> ……んー。 あのさ、触りもしないし、警察も呼ばないからさ。 一旦落ち着こうよ。 家、どこ? 030和冴:……。 031里桜:わかった。 私今から家に帰るんだけどね、タクシー呼ぶからさ。 うちにおいでよ。 すごい顔してる、匿(かくま)ってあげる。 嫌だったら呼んでる間に、そこからいなくなって。 水、飲んでいいから。 032和冴:……。 <里桜の家。和冴が脱衣場から出てくる。> 033和冴:は、……いや、アンタ、何してんの。 034里桜:髪切ってる。 似合う? 035和冴:おい。 おい、待てって! 036里桜:やっぱり、まともに喋ってくれた。 さっきタクシーの運ちゃんとは普通に喋ってたもんね。 ねね、髪の長い人がダメ? 女の人がダメ? 037和冴:いい、それ以上は切らなくて。 038里桜:なんで? 039和冴:いい、いいんだ。 040里桜:そっか。 ご飯食べる? 041和冴:……めし。 042里桜:食べていきなよ。 調味料と冷食の買い置きしかないんだけどね。 あ。 チンするご飯はあるよ! 043和冴:……作って、おくか。 044里桜:え? 045和冴:簡単な物なら。 046里桜:えー! ありがとうめっちゃ嬉しい! 上がったら食べながら話しよ、覗かないでね? 047和冴:覗かねえよ。 048里桜:<笑う> キッチンも部屋も、好きに見ていいから。 <部屋を見回した末、パソコンのデスクトップに目を止める和冴。> 049和冴:……、これなんだ、画面、夜景か……? <リビング。> 050里桜:里に桜って書いて、リオって読むの、本名だよ。 はいこれ名刺。 051和冴:スタジオA? リエコ? 052里桜:SMクラブだよ。 頂きます。 053和冴:……どっち。 054里桜:気になるの? あはは、どっちだと思う。 まあM嬢には見えないよね。 S嬢。 本物の女王様だよ、しかもお店の看板商品。 055和冴:看板商品。 056里桜:うん、遊びに来てくれていいよ。 リエコってこれ源氏名なんだけど、指名しますって言ってね。 057和冴:いい。 058里桜:そう? 若いお客さんって珍しいし、来てくれたら嬉しかったんだけどな。 てかこれめっちゃ美味いね。 餡掛けの唐揚げ丼! 059和冴:竜田揚げ丼。 060里桜:どっちでもいいよ。 料理好きなの? 061和冴:……まあ。 062里桜:あーねえ、じゃあさ。 ここに住みなよ! 063和冴:はあ? 064里桜:お金とかいらないし食費も私が出すから、ご飯作ってくれたらめっちゃ嬉しいんだけど。 私こういう丼モノ超好き。 あ、煙草吸う? 065和冴:吸うけど。 066里桜:早く言いなよ。 セッタだけどいい? はい。 067和冴:…… <黙って煙草に火をつける> 068里桜:喫煙者ならますます歓迎するんだけどなぁ。 069和冴:この部屋、アンタの持ち家か。 070里桜:リオって呼んでくれなきゃ返事しない。 071和冴:……リオの家なのか。 072里桜:うん、そう。 名前は? 073和冴:なんで俺を家に上げた。 074里桜:一個答えてくれたら一個答えてあげる。 075和冴:オオシマ。 なんで俺を家に上げた。 076里桜:弱ってる人がいたら助ける、当たり前でしょ。 下の名前は? 077和冴:カズサ。 何が目的なんだ。 078里桜:だから、丼モノ好きなんだって。 ご馳走様、どういう字を書くの? 079和冴:……平和の和に、冴える。 080里桜:え、かっこよくない? 源氏名? 081和冴:一個答えたら一個答える。 082里桜:だからー、丼モノが好きなの。 083和冴:<溜息> 本名。 一番最初、匿うって、言った。 084里桜:訳アリだと思ったから。 あれ、違った? 違うならよかった。 歳は? いくつ? 085和冴:二十七。 086里桜:あ、タメ。 ほら免許証。 ね? あはは、タメだ。 087和冴:……、俺が、犯罪者だったらどうするんだ。 088里桜:……まじ? 089和冴:逃亡中の犯罪者かもしれないだろ。 090里桜:んー、私殺してココにいてもいいよって言う。 091和冴:はあ? 092里桜:だって、犯罪者じゃないでしょ。 キッチンも部屋も、好きに見ていいって言ったのにさ。 部屋荒らした形跡が無い。 それにさ、キッチン、目に付く所に包丁あったっしょ。 お風呂の鍵開けといたのに殺しに来ない。 093和冴:……。 094里桜:あ、ビール飲む? 煙草もあと二つカートンあるし、好きに吸って。 095和冴:なんだお前、変な女。 096里桜:変じゃなきゃ、S嬢なんてやってないし。 097和冴:金は入れる。 098里桜:それって綺麗なお金? 099和冴:金に綺麗も汚いもないだろ。 俺が稼いだ金。 100里桜:そっか。 お金入れなくていいから、通販でもなんでも、寝具だけちゃんと揃えて。 あっちの部屋物置にしてたんだけど、そこ空けるから。 先に言っとくけどあんたと寝る気、ない。 101和冴:……そりゃ好都合だ。 102里桜:でしょー? あはは、見た感じ、ヒモ志望って訳でもなさそうだもんね。 103和冴:毎週、火曜、木曜、金曜の夜、出掛ける。 日曜は午後から。 ……終電前には帰る。 104里桜:私の勤務時間が、大体十六時から夜の一時。 不定休。 あとはー、まあヘルプで急に昼から出るかもしんないのが、たまに? 105和冴:<鼻で笑う> 女王様も大変だな。 106里桜:でしょ。 でもうち、老舗だから。 バックはいいんだよね。 <数日後、里桜の家。> 107里桜:ベッド届いてるよ、キングサイズって。 108和冴:デカい方が寝やすいから。 109里桜:へー、激しいんだね。 寝相の事だよ? 寂しくなったらそっち行っていい? 110和冴:どうせ来ねえだろ。 111里桜:カズサが寂しくなったら、ちゅーして起こしてあげるよ? 112和冴:馬鹿か。 <更に数日後、里桜の家玄関。> 113里桜:<溜息> ……かーずーさ。 114和冴:……あ? 115里桜:玄関で腹出して寝てるのはマナー違反だと思う。 116和冴:……ああ。 <寝る> 117里桜:起きてよ、ご自慢のベットで寝てよ。 ああーもう、担ぐ、よ、っと! 118和冴:うえ、 <せき込む> ……力あるんだな、お前。 119里桜:そうだよ。 大の大人一人、ふん縛ったり吊るしたりするんだもん。 女王様も腕力ないとやってらんねえの。 120和冴:あー、そうかそうか。 えらいなあ。 121里桜:酒臭……。 ほら、おやすみでちゅよーカズサくん。 122和冴:うっせえ黙れ、消えろ。 123里桜:酒癖ひでえな! ……で、この鞄いっぱいの諭吉は見なかった事にするね。 124和冴:ああ。 そうしろ。 <更に数日後、里桜の家キッチン。> 125里桜:ちょ……ちょっと待って、何この肉! ひゃ、百グラム二千円!? 126和冴:なにか、変なのか。 127里桜:こんなの、どこで買ったの!? 128和冴:いつも使ってる通販。 129里桜:いや、……あー! 今度一緒にスーパー行こ! 近くにあるし! 130和冴:不満なら俺一人で食う。 131里桜:食べるけども! 132和冴:なんだ、女王様も結構庶民的なんだな。 133里桜:そりゃそうだって! こんな良い家買っちゃったからさあ、結構カツカツだよ! 134和冴:客に貢がせたらいいだろ。 135里桜:そういうサービスはしてないの! リエコちゃんはリエコちゃん、私は私! 136和冴:へえー。 <更に数日後、里桜の家、和冴の部屋。> 137里桜:ねえ! また壁殴ったでしょ! 138和冴:うるせえな、金払ってんだろ。 何か文句あんのかよ。 139里桜:ある! 近所からクレームきてるし、私はここに一生住むつもりなんだから止めて! 140和冴:あーはいはいわかったわかった! <一万円札を複数枚わし掴んで投げ付ける> これでいいんだろ。 141里桜:そういう事を言ってるんじゃない! 142和冴:じゃあ手前が客に払わせた金でどうにかしろよ! お前俺よりもらってんだろ! 143里桜:……。 144和冴:人を好き放題勝手に虐(しいた)げて扱った金で、女一人でこんな家に住んでいい身分(だよな) 145里桜:かーずさっ! 私もカズサも、今冷静じゃないんだよね。 明日また話そ! 私が気に入らないなら、ここ出て好きな所に、行っていいから。 ね? 146和冴:……。 147里桜:でもこれだけ。 誤解されてるのは嫌だからさ。 私は、人の事を好き放題なんて、してない。 客の要望に応えて、喜んで帰ってもらうって、私の仕事はそうなんだと思う。 多分。 確かに高いお金はもらうんだけどさ。 それに見合った商品になる、苦労はしてる、つもり。 それだけわかって。 148和冴:……悪い。 149里桜:ううん。 じゃ、おやすみー! 150和冴:──……何なんだよ、気味の悪い女だな。 <更に数日後、里桜の家リビング。> 151和冴:リオ? 帰ってんのか。 電気点けろよ、パソコンの前で何やってんだよ。 152里桜:あー……うん。 153和冴:顔真っ青だぞ。 どうした。 154里桜:貧血。 たまになるんだよ、大丈夫。 155和冴:大丈夫に見えねえよ。 156里桜:……女の子が来た。 157和冴:それが? 158里桜:ダメだなあ、何回やっても慣れない。 159和冴:女相手が? 160里桜:うん。 私より若かった。 なんで、こう、なんで、……。 161和冴:リオ。 162里桜:……あんな事、したがるんだろうなあ。 163和冴:そういう性癖なんだから仕方ないだろ。 164里桜:にしたって、一生痕が残るのは駄目だと思うんだよ。 165和冴:その客は満足して帰ったのか。 166里桜:多分。 喜んでたと思う。 167和冴:ならいいだろ。 お前、仕事したじゃん。 168里桜:……そうかな。 169和冴:そうだろ。 その、なんだ。 よくわかってねえけど。 客の要望に応えて、喜んで帰してやるのがお前なんだろ。 170里桜:<笑う> ……そう聞くと、滅茶苦茶いい仕事に聞こえんね。 何なんだろうね、私の仕事って。 <更に数日後、近所のスーパー。> 171和冴:おい、なあ……百グラム、四百円……? 172里桜:これが普通なの。 てかちょっと高い。 173和冴:マジか。 豚も鳥も買うぞ。 174里桜:え、私そんなにお金持って来てない。 っかー、ココのスーパーが一番安いと思って来たんだけどな。 175和冴:俺が持ってる。 176里桜:出た謎万札……まぁ、今日はお言葉に甘えるけど。 やっぱ特売の日じゃないとダメだな、高いな。 177和冴:もっと安いのか。 178里桜:特売の日はね。 179和冴:あっちはなんだ、全部百円で買えるのか。 <里桜の服を引っ張る> 180里桜:っちょ、服伸びる! 待って! 181和冴:もう七時半回ってる、そろそろ閉店だろ。 182里桜:ここ二時までやってるから! 183和冴:……マジ? 184里桜:マジ。 お高いデパートじゃあるまいし。 185和冴:すげえな。 リオ、リオ、焼肉の材料買って、あっちの百円で買える所見に行くぞ。 186里桜:え、うん、あはは。 ほらカズサ、あっちでお惣菜が半額になってるよ。 <更に数日後、里桜の家リビング。> 187里桜:……売り専。 188和冴:そう。 189里桜:フリー? 190和冴:ん。 金持ってるオヤジ専門。 一回五万から、ホテル代メシ代別。 金さえ積めば何でもアリ。 191里桜:ふうん。 ポン酢とって。 192和冴:何も聞かねえの。 193里桜:聞いたら答えてくれんの。 194和冴:質問による。 195里桜:でしょ。 あんだけ金持ってて、殆ど毎日出掛けるじゃん。 太客(ふときゃく)何人いるの? すごいね。 196和冴:すごいモンかよ。 197里桜:グラム二千円の肉しか知らない訳だわ。 198和冴:……まあ。 199里桜:そっかー同業かあ。 ねえ、金持ちのオッサンって、なんであんな変な趣味拗らせてるんだろうね。 200和冴:同業ではないだろ。 201里桜:そう? 202和冴:お前、S嬢なんだろ。 203里桜:ああ、サービス業ってくくりで見てた。 204和冴:サービス業、ねえ。 205里桜:何その不満そうな顔。 206和冴:むしろ、お前なんでそんな割り切ってんの。 207里桜:七年こんな仕事してたら、そりゃねえ。 割り切れない事はいくらでもあるよ。 208和冴:……胡麻ダレ。 209里桜:ん。 あ、ちょ! そのタン私の! てかタン胡麻ダレで食べんの!? 信じらんない! 210和冴:うるせえな、塩とか食った気しねえだろ。 <更に数日後、里桜の家の和冴の部屋。> 211里桜:かーずーさ。 もらい物したんだけど、食べない。 212和冴:んあ? 何。 213里桜:シュークリーム。 214和冴:お前甘いの駄目じゃなかったっけ。 215里桜:客にもらったの。 216和冴:ふーん。 貢物はもらわない主義じゃなかったか。 217里桜:押し付けられたの。 218和冴:……。 リオ、スーパー行くぞ。 219里桜:何、急に。 220和冴:金曜の客、金払いすげえいいって話、したろ。 小遣いもらったから、ビールと半額総菜全部買って来ようぜ。 221里桜:いいよ、私は。 行っておいで。 222和冴:何でだよ。 223里桜:いいの。 224和冴:……わかったよ。 俺は行ってくるから、一人でそうしてろ。 225里桜:うん、ごめんね。 226和冴:帰るまでに機嫌直せ。 俺、帰ったらパソコン使いたい。 227里桜:いいよ。 ウケるよね、あれやこれや一通りやった後にさ、シュークリームくれるって。 228和冴:ウケねえよ。 一人でぬぼおっと、パソコンの前に立ってんの怖えんだよ。 229里桜:そっか。 <更に数日後、里桜の家リビング。> 230和冴:……え、お前俺にそれ聞くの。 悪趣味。 231里桜:いいじゃん。 本番なんてとんとご無沙汰だし。 他人のピロートークって興味ない? 232和冴:ええー……。 逆にS嬢って客となんの話するの。 てか、風俗みたいに話とかすんの。 233里桜:んー? んー……。 客による。 キャラ維持しとく人もいるし、お疲れ様でした、ありがとうございました、とか。 234和冴:<吹き出す> マジか。 235里桜:店長にキャラ維持してよって言われた事はある。 店の方針とか何とか。 でも指名を数取っちゃえばね、私が正義ですよ。 236和冴:何だかなあ。 237里桜:人気商品様だぞー、ってね。 カズサは? 話すり替えないでよ。 238和冴:……大体仕事か嫁の愚痴。 それをうんうん言って聞いとけばいい。 239里桜:てきとー。 240和冴:営業トークに使えそうな事は覚えてるよ。 この間言ってた仕事どうなりましたか、とか。 嫁さんと仲直りしましたか、とか。 241里桜:えー正しく適当、めっちゃ敏腕。 喜ぶでしょ。 242和冴:喜ぶ。 稀に愚痴聞く為に呼ばれたりとか、する。 243里桜:上手い事やってんね。 244和冴:いつまでこんな事やってんのか、って思うけどな。 245里桜:何も考えない方がいいよ、難しい事は。 時々、生きてるのか死んでんのか、よくわかんなくなるけど。 246和冴:……。 同じような事してんじゃん。 俺だって何も考えてない。 247里桜:そう? 248和冴:ないよ。 まともな頭してたら、野郎に組み敷かれるとか発狂すると思う。 249里桜:カズサはまともだよ。 セレクトショップとかで働いたら、モテそう。 250和冴:今更、そんな仕事できると思うか。 251里桜:だよねー。 252和冴:……お前だって、パソコン打つの早いし、事務とかできそう。 253里桜:できないよ。 できるわけない。 私は看板商品のリエコちゃんなの。 そうして死ぬまで、生きていくんですよ。 254和冴:……そうか。 <更に数日後、里桜の家玄関。> 255和冴:リオ、リオ。 256里桜:あれ? お帰り、早いねー。 257和冴:財布とケータイだけでいいから、持って来い。 258里桜:何? コンビニ? 259和冴:違う、急げ。 <都内を走る車内。> 260里桜:……車、運転できたんだ。 261和冴:好きだった。 262里桜:だった? 263和冴:……。 264里桜:……ねえ、車でどこに行くの。 265和冴:どこ行きたい。 266里桜:嘘、決めてないの? 267和冴:いや、……パソコンの、デスクトップの画像。 268里桜:……。 269和冴:京都だよな、あそこ。 調べた。 あそこに行こうと思う。 リオを、あそこに帰す。 270里桜:……なんて? 271和冴:何かあれば、あの画像見てるだろ。 送ってやる。 その後は、自分でどうにかしろ。 272里桜:後って何? カズサはどうするの。 273和冴:帰るよ。 274里桜:ねえ、カズサ。 この車どうしたの。 275和冴:買った。 276里桜:そんなパッと買えるモンじゃないでしょ、 277和冴:五時間は掛かる、寝てろ。 インターで起こすから。 278里桜:……わかった。 <京都、小高い丘。> 279和冴:着いたぞ、ほら。 280里桜:うん。 281和冴:着いた、着いた。 はは、来れるもんだな。 282里桜:……カズサ。 283和冴:あ? なんだよ、嬉しそうにしろよ。 284里桜:ごめんね、あんな画像の事、気にしなくてよかったんだよ。 285和冴:じゃあ何でたまに見てるんだよ? 286里桜:レイプされた場所なんだよ。 287和冴:……。 288里桜:小学生の時。 近所のお兄さんが遊びに連れて行ってくれるっていうから。 車に乗せてもらって、そのまま。 馬鹿だよね。 289和冴:……え、えっ? 290里桜:大人になって来てみたら、夜景は綺麗だったんだ。 綺麗でしょ、ね。 何も知らないでいれば、夜景が綺麗な場所なんだなって、うん、それだけなんだよ。 291和冴:ごめん、悪かった。 292里桜:悪くないよ。 293和冴:悪かった。 294里桜:……。 295和冴:……ごめん、俺、知らなくて。 296里桜:話してなかったもんね。 前に喧嘩した時、勝手に虐げて扱って、って言ってたの、もしかして気にしてる? 297和冴:……。 298里桜:<苦笑する> 気にしてるんだろうな、とは思ってたよ。 でもその通りなんだよ。 あの時カズサが言った通り。 私、悔しかったから。 大人になってこういう仕事始めて、虐げる側になったんだよ。 私より年上の、えらそうなスーツ着てる、あのお兄さん今この人くらいの歳かなぁ、って人が来ると 仕事中なのに腹抱えて笑いたくなるもん。 なのにさぁ、そういう人に限って終わったら律義にありがとうございました、とか言うんだよ。 シュークリーム、持って来てくれたりするんだよ。 ……私は死ぬまで、あの店で寝起きしてそうしてお金稼いでいくんだよ。 そういう商品なんだよ。 だから、あの画像はその時の事、忘れない為っていうか 299和冴:リオ、お前のは違うだろ。 お前のは人を虐げてるんじゃなくて、仕事だ。 虐げるっていうのはもっと、人の気持ちとか、踏み躙る事を言うんだ。 300里桜:何、急に。 301和冴:女がダメなんだ、俺。 母親に階段の上から突き飛ばされて、死ぬかも、ってなってから。 302里桜:……へ、 303和冴:今もまともに町中を歩けない、買い物も全部通販だから高い肉ばっかり選んでた。 すれ違って触れただけで吐くし、同じ場所に居続けるなんてゾッとする。 マトモな仕事なんて絶対にできない。 男相手にこういう風に金を稼がないといけない。 そうしてる中で、人を踏み躙る奴なんて嫌って程見た。 お前と会った日も、今日だって、女がダメなのを知ってて、自分の嫁さん連れて来た奴とホテルに入った。 304里桜:<和冴から離れようとする> 305和冴:<里桜の腕を掴む> お前はいい、いいんだ、離れなくて。 だから、その。 なんていうか。 306里桜:何? 307和冴:まともだよ。 ちゃんと仕事して、金稼いで、生きてんじゃん。 お前、虐げる側じゃ、ない。 商品じゃない。 人間だ。 308里桜:何でそんな事言うの。 309和冴:お前がわかってないみたいだから言ってるんだよ。 310里桜:あんな事してまでいつか死ぬ為に生きてるって思いたくないんだってば。 311和冴:あんな事だろうが、こんな仕事だろうが、そこまで自分の事悪く言う事ないだろ。 肉食ってる時のお前嬉しそうじゃん、死ぬ為じゃなくて、ああいう時間の為に生きてるんだろ。 312里桜:……。 313和冴:めいっぱい美味い肉食って、ばあちゃんになって、ああ楽しかったって。 そう言って終われたらそれでいいじゃんか。 お前はそれができるよ。 弱ってる人間を助けるのが当たり前だなんて、平気で言えるお前が。 商品でしかいられないなら、そんなの世間の方がおかしい。 314里桜:……なんでそんな事、言うの。 315和冴:あの時、お前に助けられてよかったって、思ってんだよ。 助けてくれた人間の事、そういう風に考えるのが当たり前なんだよ。 お前そんな事もわかんねえの。 316里桜:……。 317和冴:……寒いな、車、戻ろう。 318里桜:……。 319和冴:リオ。 320里桜:……うん。 <京都、ホテルの一室。> 321里桜:すごいなー、寝てみると滅茶苦茶広いね、キングサイズのベットって。 322和冴:だからってそこまで離れて寝る奴がいるかよ。 馬鹿萎えるんだけど。 323里桜:……えー。 324和冴:あーのさー! わかれよ、ほら、はい、こっち。 325里桜:いいの? 326和冴:俺、オッサンのだっせえ誘い文句しか知らねえんだよ。 327里桜:あはは、お邪魔します。 328和冴:ちゅーして起こすんじゃなかったのかよ。 329里桜:起きる時にはね? してあげるよ、ご所望なら。 330和冴:……じゃあ、しろよ。 331里桜:うん。 もう寝る? 332和冴:寝る以外に何すんの。 333里桜:やだ、えっちー。 334和冴:お前さ、 335里桜:助けてくれた、って、思ってるんだよね? 336和冴:……おう、まあ。 337里桜:おかしいのは、私じゃないんだよね? 338和冴:……ああ。 339里桜:じゃあ。 辞めさせてよ、商品。 何でもない女の子に、カズサがしてよ。 お願いだから。 <冒頭続き。京都、ホテルの一室。> 340里桜:ねえカズサ、なんで怒ってるの? 怒ってるから、私の事置いて行こうとしたの? 341和冴:俺を家に上げた時も、一緒に住み始めた時も、何をするにも、なんでそう軽いんだよ。 342里桜:だから怒ってるの? 343和冴:そうだよ。 お前、訳わかんなくて怖い。 人の事、何て事ない顔して助けておいて、同じ顔で生きるだの死ぬだの言い出して。 344里桜:私の事置いてどっか行っちゃう気でいたなら、なんで抱いたの。 私そっちの方が怖いよ。 私がたまたま起きなかったら、カズサもうココにいないつもりだったんでしょ。 345和冴:それは、 346里桜:カズサ。 私が一人で肉食べてる時も、あんなにご機嫌だって思ってる? そんな訳ないじゃん、そこまで頭めでたくないよ。 347和冴:……思ってねえよ。 348里桜:どんなにお金派手に使っても、一人じゃなんも面白くなかったよ。 カズサが一緒にいてくれなくちゃ面白くない。 349和冴:……。 350里桜:まだ、いまいち、わかってないかもしれないんだけど。 きっと私、カズサが思ってくれてる事と、同じ事思ってるよ。 351和冴:じゃあどうしろって言うんだよ、なあ。 俺、強盗犯なんだぞ? そうでもしなきゃ、お前の言う商品っての、やめられなかったんだぞ。 352里桜:わかんないよ、だから二人で考えようよ。 353和冴:リオだけならまだどうにでもなる。 354里桜:カズサと一緒じゃなきゃやだ。 355和冴:こんなとこで頑固になるなよ、わかれよ。 356里桜:わかりたくない。 357和冴:じゃあどうしたら幸せになれるんだよ、俺達。 358里桜:──……。 359和冴:やっと商品じゃなくなったんだ、物じゃないんだ、金が絡まないんだ、 もう誰かを傷つける事も、虐げられる事も、傷つけられるもないんだ。 360里桜:……カズサ、 361和冴:なあ、言えよ。 俺達、どうしたら、幸せになれたんだよ。 362里桜:……。 363和冴:何か言えよ。 364里桜:……わ、かんないよ、そんなの……。 365和冴:なあ、答えてみろよ。 じゃあ、どうしたら、俺達は幸せになれるんだよ。 366里桜:…… <逡巡して、何か言おうと息を吸う> 2015.5.2 初版 羽白深夜子 2019.10.10 更新 羽白深夜子 2021.7.28 更新 羽白深夜子 2023.1.25 更新 羽白深夜子 2023.1.31 更新 羽白深夜子 2023.2.17 更新 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子
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