最終更新:2024/5/1
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【蓮華草】 (れんげそう) 登場人物については
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。 崇司、寝室で本を読んでいる。栞は物陰からじっと崇司を見ている。 ======================================= 001崇司:──……なんだよ、お前。 いつまでそうしているつもりだ。 002栞 :あなたの機嫌が直るまでです。 こちらもストライキ、ですよ。 003崇司:もう直ってる。 004栞 :ほんとですか!? 005崇司:嘘を吐いてどうする。 ストライキ中どこで寝るつもりなんだよ。 006栞 :布団を居間に持っていって、更に半纏を着こんで寝ます。 007崇司:俺の着物で勝手に作った半纏だろ、それ。 008栞 :あっ。 あの子、裏切りましたね!? 009崇司:人聞きの悪い。 大変適切な告発で感謝をしている。 010栞 :いいですよーだ、私だって不貞腐れてやるんです。 この半纏に包まれて、ああ恋しい、ああ恋しいとさめざめ泣きながら寝るんです、今日は。 011崇司:ええい鬱陶しい、お前のはストライキじゃなくて駄々だ、子供と同じだ。 012栞 :私本当に怒っているんですよ!? 013崇司:ああ恋しいと宣(のたま)いながら顔が笑ってるんだよ、お前。 014栞 :……本当にもう怒ってないんですか。 015崇司:怒ってないから、お前は何に怒ってるのか聞いてるんだ、こっちは。 016栞 :この間一緒に寝てくれなかった事です! 017崇司:あ、だから最近布団を離して寝てたのか。 018栞 :ええ! 手を払ったの、根に持ってますよ、私! 019崇司:昨日まではここで寝てたろ。 020栞 :今日またあの子とお茶をして来ただなんて言うからです! いつからそんなに仲良しになったのですか!? やきもちが大繁盛です! 021崇司:わかった、わかったから。 手を払ったのは悪かった、すみませんでした。 ほら、これでいいだろ。 022栞 :……。 023崇司:なんだよ。 024栞 :すみませんだなんて言葉、知ってたんですね? 025崇司:てめ、この……! <溜息> ああもう、いいから、ほら。 こっち来いって。 026栞 :んふふふ、いいですよ、許してあげます。 <寝室に入る> あぁ、やっぱりこうでなくちゃ。 ね? 027崇司:なんだ、その。 女性と茶を飲む時は事前に一言、声を掛けた方がいいのか。 028栞 :それは然程問題ではありません。 一日何があったか、いつもお話してくれるじゃありませんか。 でも、手を払う時は事前に言って下さい? 虫の居所が悪いので今から軽微(けいび)ながら暴力を振るいます、ってね。 029崇司:面倒だな。 030栞 :こちらも倍にして返す心の準備ってモノがありますので。 031崇司:……面倒だな。 032栞 :じゃあ上手くやって下さい? いくら同じ家に住んで長いとはいえ、私達結局は他人なんですから。 033崇司:それもそうだな、わかった。 機嫌が悪い時は先に言う。 034栞 :上等です。 035崇司:だからお前も、勝手に俺の着物を持っていくな。 一言言え。 036栞 :言ったら譲って下さるんですか? 037崇司:それを検討する為に、お前もお伺いを立てるくらいの事はしろ、と言ってるんだ。 全く、箪笥(たんす)に知らない服が増えてるかと思えばいつの間に着物が半纏になっているし。 038栞 :知らないお洋服は私の給金で買っているんですから、別にいいじゃないですか。 039崇司:構わないがなんで男物の洋服なんだよ。 お前、箪笥を開けて覚えのない男物のシャツが見えて肝が冷えた俺の気持ちがわかるか。 040栞 :わかりません? 041崇司:コイツ……。 042栞 :どうもね、女性モノがあまり好きじゃないんですよ、私。 まあまあ背が高いでしょう? 男性モノの方がしっくりくるんです。 043崇司:はいはい、わかったわかった。 044栞 :本当にわかっているんですかね。 045崇司:男を連れ込んで、ソイツのシャツを取っておく程阿呆ではないだろ。 046栞 :よくわかってるじゃないですか。その辺は、あなたのお着物があれば十分です。 047崇司:はいはい。 ……その。 一つだけわからない事がある。 048栞 :はい? 049崇司:名前の無い男。 彼が、オオハシの、ナデシコさんの婚約相手だと。 お前はいつ知ったんだ。 050栞 :──副産物でしたよ。 あなたの所為で狸ジジイを拝む羽目になったと話したでしょう。 その時、お客人の立ち話で、偶然。 銀時計を賜っている警察官など、この町にはそう多くはない筈ですから。 051崇司:認めるのか。 052栞 :一つだけわからないと仰ったじゃあないですか。 あなたの手記とホマレさんの手記と、照らし合わせて。 私があなたの着物と化粧を使って子供になりすましてあの男の素性を探っていたのも、 私が始末屋さんに、祖父の遺産の一端で始末をお願いしたのも、あなた気付いているでしょう。 053崇司:お前程の背丈で、お前のような身形(みなり)で。 男装ができる女なんてこの町で探せば 054栞 :まだ目を逸らしたいんですか? 拳銃の密輸。 この国で知るのは密輸に関わっていた彼らと、ホマレさんとあなたと私、 ……とー、一応ナデシコさん、ですか。 高嶺の花はあなた方の話を鵜呑みにしていた。 ホマレさんを暗がりのガキ、お坊ちゃんと形容するには少々無理がある。 であればもう、一人しかいないでしょ。 あなたの胸に聞いてみて下さいな。 しかもその一人は愛嬌と手癖が抜群で、あなたの着物を数点拝借している。 この半纏と同様にね? 055崇司:どうして始末する必要があったんだ。 あの男と、なにか因縁があったのか。 056栞 :<溜息> ……ありませんよ。 強いて言えば、友人の婚約者の素行が気に入らなかった。 そんな言葉で納得しては頂けませんか。 057崇司:あの始末屋を頼れば何が起こるか、想像はできたろう。 058栞 :勿論。 想像以上の仕事をしてくれましたよ。 既に完了の知らせが届いた。 059崇司:は── 060栞 :近日中にお船で出国されるそうですよ。 ──一緒に見送りに行きますか? 061崇司:ふざけるなよ、お前、お前、自分が何をしたかわかっているのか。 062栞 :わかっていますよ。 大金をドブに捨てた、しかしそれも必要経費です。 063崇司:人間の命を奪う事がどうして必要だったって言うんだ! 064栞 :……死ねば美し、そんな所ですか。 安い品性ですね。 065崇司:あいつらの手口が杜撰(ずさん)だったそれはわかった! だったらなんだ、殺されるような事か!? 本当に殺されなきゃならない悪事だったのか!? 066栞 :言い分は以上ですか。 ──先に怒鳴りつけたのはあなたですよ。 殴りはしませんから。 <栞、崇司に掴み掛かる。> 067崇司:な、 068栞 :馬鹿だ馬鹿だとは思っていましたがここまでとは思いませんでしたよ。 じゃあ警察に私を突き出せばいいじゃないですか。 おじい様の名誉と人命の為だと言うなら。 あなたの手記と証言があれば容易いでしょ。 それもできない癖に。 今からお散歩と最後の逢瀬とでも洒落込みますか、構いませんよ私は! 069崇司:サユリ、 070栞 :ソウスケさんはね! いつも! 嫌とも何とも言わないで涼しい顔ばっかりで! やっと腰を上げたと思えば私以外の他人の為に命を捨てるような真似をして! おじい様の名前に甘える前に! 人の命だ何だ大袈裟を言う前に! 自分が生きる事を何故選ばないのですか! 私が勝手をすればこうして怒る癖に! 自分は勝手に死のうとして! なんであなたは、あの時私に手を差し伸べたんですか! <間。> 071崇司:──……お前。 そんなデカい声が出たのか。 072栞 :大変忌々しい記憶ではあるんですが、学芸会で、演劇部でもないのに人前に立った事があって。 その時に演劇部のお友達に教えてもらいましたよ。 073崇司:……初めて、怒った所を見た。 074栞 :まあ、……その、はい。 そりゃあ怒りますよ。 自殺みたいな、真似をして。 075崇司:我儘を叶えるのが本懐だとか、言ってなかったか。 076栞 :礎(いしずえ)を飛び回る蝶にもね、それなりに苦労はあるんですよ。 077崇司:なんだそりゃ。 ……不都合な依頼があれば、じい様の遺産を使って始末する気か。 078栞 :あなたが今回みたいな馬鹿を続けるのなら、やぶさかではないです。 おじい様の為、なんて宣ってるうちはそうしますよ、あなたが今を生きるつもりがないのなら。 079崇司:<溜息> ……手を放せ。 080栞 :……何するんですか。 081崇司:手記を燃やす。 お前も来い。 082栞 :燃や、は? <崇司、胸倉を掴む栞の手を引っ手繰る。> 083崇司:中庭でいいか。 表から見えないだろうしな。 ……始末屋に、考えなしに殴り込もうとしたのは。 悪かった。 084栞 :はい。 085崇司:でも、その始末屋を呼んだのは、お前だ。 086栞 :名前の無い男とあなたと、手が切れたらそれでよかったんです。 すみませんでした。 087崇司:だからってお前、……あぁー、そうか、お前。 088栞 :何ですか。 089崇司:釣りに出掛けりゃ湖に落ちるし、見合いが嫌で山に逃げ込むし。 英国に行くと言い出したかと思えば、実家の破産は生ゴミの処分、なんだったな。 090栞 :まるで私が短絡的なじゃじゃ馬のような言い方をしますね。 091崇司:そう言ってるんだが。 ああ、なんでエウカリスの塀で手を貸したか、だったか。 なんでだろうな。 092栞 :……いいです、それは、別に、なんでも。 093崇司:そうか、次に怒られる時までに考えておく。 094栞 :いいですって。 095崇司:怒った時の灸の据え方がとんでもない、も追加だ。 096栞 :怒らせたくて言ってますよね? 097崇司:いや、別に。 <崇司、手帳を数枚破る。> 098崇司:名前の無い男について記述していたページだ、確認しろ。 099栞 :確かに。 100崇司:万が一の時にホマレが口を割るとは考えにくいが、不安ならお前から証拠の処分を頼め。 101栞 :もう脅しつけました。 102崇司:結構。 密輸に関わっていた連中は。 103栞 :金を渡して黙らせました。 その時は警察官僚のご子息のフリをしていましたよ。 ああ、箪笥のシャツ。 それです。 104崇司:本当にとんだ暴れ馬、……あ? じゃあこの件、一番事情を知っていたのは。 105栞 :私でしょうね。 106崇司:どうやって調べた。 107栞 :変装と金で。 108崇司:……。 109栞 :何ですか、変な顔をして。 110崇司:笑ってるんだが。 111栞 :冗談でしょ、その顔で? 112崇司:失礼な暴れ馬だな。 ……いや、何。 思っていた以上にこの仕事に向いているようで何よりだと思っただけだ。 113栞 :さっきまであんなに喚いていた癖に。 酔狂な人ですね。 114崇司:お前が俺に黙って勝手に独り歩きするからだ。 115栞 :然様で、……え、それってもしかしてやきもちだったりしますか? 116崇司:<遮る> 次の案件からお前の足も使う。 117栞 :<溜息> ご随意に。 118崇司:あと。 119栞 :まだあるんですか、お説教はもういいでしょう、 120崇司:ちゃんと俺に話せ。 <間。> 121崇司:……俺も、次から、そうする。 122栞 :……わ、かりました、けども。 123崇司:けども、なんだよ。 124栞 :お咎めなしですか、もしかして。 125崇司:あった方がよかったか。 126栞 :……バレたら、あるだろうな、って。 127崇司:<溜息> 惚れた弱みだよ。 128栞 :は。 然様ですか。 129崇司:じゃなきゃ。 わざわざ戸籍を偽造してまで、一緒に住んでないだろ。 <崇司、破った数枚に火を点ける。> 2015.9.18 完成 羽白深夜子 2021.1.16 更新 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子
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