最終更新:2024/5/1
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【白詰草】 (しろつめくさ) 登場人物については
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。 誉、崇司の家に怒鳴り込んで来る。 ======================================= 001誉 :全くキミはとことん僕の事が嫌いなんだな!? そして僕の話を寸分も聞いていない事がよくわかったよ! ええ!? さあその耳かっぽじって僕の高説を承(うけたまわ)り給(たま)えよ! 僕が、この社交性を体現するこの僕が! 人付き合いにおいて最も嫌っているのは悪口と人伝の言伝(ことづて)と 理解に少々頭の回りが必要な暗号だ! つまりキミが彼女に行ったそれだ! よくもやってくれたなこののっぽ! 002崇司:挨拶もなしにいきなり怒鳴り込んで来るな。 客がいたらどうするんだ。 003誉 :客がいた事なんてないだろ、見栄を張るな! 僕は彼女の前で仕事の話はしない、そう言った筈だ! 004崇司:お前がはぐらかせば済む話だろ。 005誉 :そんな頓智(とんち)を聞きに来たんじゃない! なんて口の回る男だ! それでこそ僕の幼馴染だ! 全く感服したね! 006崇司:そりゃあどうも。 007誉 :それにね、キミは僕の事をまるで誤解している様子なんだが! 僕は彼女の話を無視するようなそんな頭と器の小さな男ではないんだ! なのにその彼女から仕事の話を唐突に切り出された僕の気持ちを鑑みてご覧よ!? ああなんて可哀想なんだ、僕が! 008崇司:……なんだかんだ、思っていたより楽しそうじゃないか。 つまらん。 009誉 :楽しそう、はああ!? 今の僕が!? 血管が今にもはち切れそうだよ!? 010崇司:是非その調子で頼む。 011誉 :いいのか!? キミは!? 僕が血圧を上げて何かしら事を起こしたらきっと最高に胸糞が悪いぞ!? 絶対に絶対に化けて出てやるからな! 毎晩枕元に僕が立つ場所を空けておけよ! おい! なあ! 聞いてるのかい!? うらめしや! 012崇司:<溜息> わかった、わかった。 聞いてはいる。 なんだ。 013誉 :キミのそのふてぶてしさは好ましい所ではあるけれどね。 昔からこうしてネチネチネチネチ、報復のやり方が嫌味ったらしいんだよ……はあ。 まあ、いい。 毎度言うがね、説教をしに来た訳じゃないんだ。 014崇司:じゃあ何だ。 オオハシの令嬢から話は聞いたろ。 あれから二日か。 どうだ、なにか面白い話を持って来たんだろうな? 015誉 :手を引け。 016崇司:は。 017誉 :あの名前の無い男から、手を引け。 金輪際何もするな、動くな。 018崇司:どうして。 019誉 :もう一度言うか? キミは、動くな。 僕はこの若さで幼馴染を失いたくはない。 020崇司:なんでそんな話になるんだ。 021誉 :始末屋が動いた。 022崇司:──は。 023誉 :始末屋。 この町の正義の英雄の如く人々の頼み事を賜るキミが、彼を知らないとは言わせないよ。 キミが請け負わないソレらを好んで、それも破格で、多額の金で請け負うこの町最悪の畜生が動いた。 この意味がわかるな? 何でも屋。 024崇司:……。 025誉 :どなたかの差し金で、はした金で。 あの男の始末を仰せつかったそうだ。 満足したかい。 キミが人を、あのオオハシの令嬢を使って。 この二日で僕が得た情報だ。 随分胸糞の悪い案件を放り込んでくれたモンだよ。 026崇司:出掛ける。 027誉 :一応聞くが、どこに行くんだい。 028崇司:名前の無い男を匿う。 029誉 :待て待て待て待て。 030崇司:待つ馬鹿がいるか。 人の命が掛かってるんだぞ。 031誉 :<溜息> ……キミさぁ、本当に僕の話を聞かないなあ。 そうか、右側から話し掛けていたのが悪かったかい? 032崇司:何とでも言え。 俺はあの男を 033誉 :僕はキミにあの男を見殺しにしろと言っているんだ。 034崇司:──……。 035誉 :あの男に、キミが命を肩代わりする意義も、謂(いわ)れもない。 036崇司:何故だ。 037誉 :疑問に疑問で返すのは些か行儀が悪いが、致し方なし。 キミは、人一人助けるに足るとでも思っているのか? 038崇司:……。 039誉 :現状から憶測できうる名前の無い男の素性と罪状を鑑みても、本当に首を縦に振れるのかい。 彼の為に命を捨ててやると言えるのかい。 そして。 僕の幼馴染の命とは本当に、そんなチンケなものだったのかい。 040崇司:仕事は仕事だ。 俺はあの男から居場所を探して欲しいと依頼されている。 あの男の居場所とは記憶を失くしたまま殺される事でも、依頼先の何でも屋に 見捨てられる事でもない筈だ。 そこに俺の命云々は関係ない。 041誉 :であればキミ、殺されに出向くんだね? 042崇司:上手くやる。 043誉 :できるモンか。 僕とキミは腕っ節に関してはからっきし。 相手はこの町一のあの悪童(あくどう)だ。 勝ち目が寸分もありはしない。 だから僕はこうして忠告に出向いている。 044崇司:何も真っ向から立ち向かう事はないだろう。 どうにか手と頭を回して、そうだ、警察、……。 045誉 :そもそもさぁ。 どうして記憶を失くしている筈の人間が。 わざわざ、丁度、町中に一軒しかない何でも屋を訪ねる事ができるんだい? 046崇司:記憶は無くても、道中人に困っているだとか尋ね歩いてたどり着く事ができる。 047誉 :その尋ねられた至極一般的な、善良な人々は。 それこそ警察を勧めないだろうか。 048崇司:だから、あいつは拳銃の密輸に携わっていた警官らしくて、 049誉 :だからこそキミが助ける必要はないんだ。 050崇司:は? 何故。 051誉 :なんで警官が拳銃の密輸に携わるんだい? 052崇司:それは、 053誉 :拳銃。 名前の無い男から預かっているんだろう。 僕が処分する、貸して。 054崇司:……。 <拳銃を渡す> 055誉 :──ははあ、間違いない。 彼らは持ってるだろう。 このように。 国家権力の名の下に賜った立派な拳銃、コチラをね。 つまり警官である彼はこの拳銃を所持していてなにも問題はなかった。 056崇司:……、いや、そもそも。 警官だってソレも確証はまだないだろう。 057誉 :警官でないならそれこそ警察に出向けって話になるんだが……まあ、いいか。 名前の無い男の銀時計も、改めたんだよね。 058崇司:ああ。 059誉 :銀時計。 左側に唐草、そして中央に鳥が描かれていなかったかい。 060崇司:……雲雀(ひばり)が描かれていた。 アレは? 061誉 :間違いなさそうだな、警察学校の卒業記念品だ。 勤務時に持ち歩く時計。 毎年一人、成績優秀者のみが唐草と雲雀が彫られた銀時計を贈られる。 062崇司:……ドスを突き付けながら銀時計の警官を探しているガキがいる、そう聞いている。 063誉 :ふうん成程、キミ、分が悪くなると踏んでわざと黙っていたね? まあ、そろそろ結論を話そうか。 064崇司:結論? 調べがついてるのか、勿体ぶりやがって。 065誉 :僕の関わったあの密輸。 クーデターを企てた若い警官達が発注元だったようでね。 066崇司:は。 067誉 :ここ二日でどうにか調べ、匿名で通報した。 どうりで酷い仕事だった訳だ。 自分達の足がつかない拳銃を欲していたようだね。 何ともまあ、面の皮の厚い事だ。 そうは思わないかい? 正々堂々と声を上げる事を嫌い、暴力という手段を選び。 法という武器を持ちながら、更なる武器を手に入れようとしていた。 それがほぼ間違いなく良い事を齎さないだろうと、キミも想像に容易いだろう。 結局は仲間割れか、怖気づいたかしたらしくてね。 一人、逃げ出している。 068崇司:それが、名前の無い男なのか。 069誉 :だと僕は思っている。 あくまで僕の憶測だけどね。 という訳で。 名前の無い男は警官。 十分に自らの身を守る身体能力があり。 更には後ろ暗い事情があり、命を狙われている。 何でも屋の看板に甘え、自らのケツを拭かなかった報い。 それだけだ。 記憶が本当に無いのか、無いフリをしているのか。 それすらも定かではない。 もう一度聞くよ。 その男にキミが命を懸ける理由は本当にあるのか? 070崇司:ある。 俺は何でも屋だからだ。 071誉 :キミの客の為にという矜持は十分、存じている。 だからこそだ。 キミは金輪際、あの男を救ってはならない。 072崇司:それが何故だとさっきから聞いてるんだ。 下らない問答なら、 073誉 :お節介を承知で更に言おうか。 ソウスケ。 074崇司:その名前で呼ぶな。 075誉 :人を佑(たす)き尊(たっと)ぶ事に殉じたおじい様の名を通名として騙る、成程理解の及ぶ浪漫だ。 僕は以前、キミを物語に出てくる英雄のようだと評したね。 しかしキミは英雄ではない。 断言しよう。 こればっかりはよくお聞きよ。 キミはあの、鉛玉を吐き出して命を奪うだけのただの道具に執着したばっかりに人の道を踏み外し、 人の理(ことわり)をも握り潰し、ただ力で己が正義を邁進しようと、そう企てた愚者を守って 命の取り合いをするべきではない。 キミは英雄ではないから。 おじい様の名を守る。 ──たったそれだけの英雄譚にしがみつく、ただのナガセのバカ息子なんだから。 076崇司:……。 077誉 :……懷かしいな、ソウジのおじい。 僕だって人生を巻き戻す事が叶うなら、あの人のように誰彼構わず守り抜く、そんな人になりたかったさ。 078崇司:俺はまだ諦めていないぞ。 面倒な両親を言いくるめてまで得た店と名前なんだ、俺は 079誉 :キミには可愛い黒猫がいるんだからさ。 080崇司:何でここでサユリが出てくるんだ。 081誉 :常々惚気話を聞いているからね。 惚気話を聞いていて僕、ああ、ソウスケはあのソウジのおじいが他の人みんなに、 誰彼構わず向けていた情を、この子一人に向けたのだなぁと思っていたんだよ。 082崇司:……。 083誉 :誰も彼も、他人の人生を歩む事はできないんだ。 人はね、己にできる事しかできなくて。 己に守れるものしか、守る事はできないんだよ。 084崇司:お前、お前だって。 常々ウチに遊びに来てウチのじいさんを見ていただろう。 この店はお前の物だって、俺の頭を撫ぜるあのじいさんを見ていただろう。 両親と下らない言い合いをした俺をいつも迎え入れたじいさんを見ていただろう。 だから、俺は、この店を、その為に、……。 085誉 :その為にキミの命まで捨てろと、それはおじい様の言伝かい。 それとも、キミの妄執かい。 あのソウジのおじいは。 沢山を尊んだおじいは。 たった一人の孫にそんなモノしか遺していかなかったのかい。 086崇司:……。 087誉 :それは大変残念な話だ。 小さい頃の僕には、もっと違うモノに見えていたよ。 088崇司:……つまらん、疲れた、寝る。 089誉 :おやそうかい? 気が変わったようで何よりだ。 そうだね、昼寝には絶好の天気だと思うよ。 090崇司:夢見が悪くなったらお前の所為だからな。 091誉 :それは夢でも僕と話してくれるという事か? それは光栄だな。 どれ、次はちゃんと左から話し掛ける事にするよ。 092崇司:……顛末は、俺の耳に入れろ。 093誉 :ああわかった。 どうなってもすっきりサッパリとはいかないんだろうけどさ。 キミ、覚悟しておきなよ? その時になってまた不貞腐れても僕は無視を決め込むからな。 全くいちいち手のかかる幼馴染様だ。 一体全体僕はどうしてこんな女々しい奴と付き合っているんだ。 094崇司:類は友を呼ぶ。 095誉 :その理屈だと僕もキミと同じ部類の人間になってしまう訳だが。 096崇司:そうだぞ。 097誉 :そうかい。 お互い性分なんだろうな。 2015.9.17 完成 羽白深夜子 2015.9.19 更新 羽白深夜子 2021.1.16 更新 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子
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