最終更新:2024/5/1
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【唐菖蒲】 (とうしょうぶ) 登場人物については
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。 栞と撫子、喫茶店で茶を前に話している。 ======================================= 001栞 :今日はね、事前にマドレーヌを注文しておいたから好きに食べなよ。 002撫子:こんなに。 003栞 :こんなに。 どうせ食べるんだから、逐一呼びつけるのも悪いだろ。 004撫子:それもそうね。 ねえ、それで、どうなったの? 005栞 :なんだい? お前さんが何かしらに興味を持つだなんて明日には槍が降るな。 006撫子:名前の無い男。 007栞 :ああ。 それね、何だか事情が変わったらしくて、柳の君は手を引いたよ。 008撫子:事情? 009栞 :依頼の破棄。 ……って私は聞いたけど、恐らく違うんだろう。 010撫子:じゃあ、何? 011栞 :多分お前様は、知らなくていい事。 012撫子:そうなの? 013栞 :ああ。 折角興味を持ってくれたのに申し訳ないが、また話せそうな時に話してやるよ。 こういうのは時間が肝心だ、そのうち話せる日がくる。 楽しみにしてなよ? 014撫子:無理に聞きたい訳じゃない。 私にとってはこの本の中のお話と同じ。 無理をする事はないと思うけれど。 015栞 :別に無理なんてしてないさ。 お前さんが聞きたいだろうと思って面白そうな話を仕入れるのは楽しいんだよ。 016撫子:そう? 017栞 :お前さん、なんで、どうして、って。 子供みたいで可愛いからね。 018撫子:知らない事を知りたいのは当然でしょう? 私には知らなくていい話が沢山あったり、世間知らずは自覚しているから。 019栞 :そう拗ねないでおくれよ。 私みたいな脛に傷持った人間ってのは、お前さんみたいな無垢な子を守った気になって、 先を歩いてる気になって、そうしているのが一番の娯楽なんさ。 ちっぽけだと思うかい? 020撫子:そもそもあなたの脛にあるのは傷じゃない。 面白可笑しく暮らしてるんでしょ。 脛に傷がある人は、夢色の同棲生活だなんて言わないでしょう。 021栞 :あらそう。 戸籍の偽造までやらかしてるんだ、ご大層な傷だと思うんだがね。 022撫子:自分を卑下するなんて珍しい。 どうしたの。 023栞 :私も面白くないんだよお。 実は私も何も聞いてないんだ、名前の無い男の事。 024撫子:どうして? 025栞 :さあ? 名前の無い男の話をすると途端不機嫌になっちゃってさ。 寝てる隙に書類を探ってみてもどこにも書き留めてないし。 こんなの初めてだよ、私も参っててさあ。 026撫子:愚痴? 027栞 :そう、愚痴だよ。 028撫子:本当に珍しいのね。 あなたがそういう話をすると思わなかった。 029栞 :愚痴を言いたくもなるさ、愛しのキミとさあ蜜月を、 まずはお手手の温もりからと思って手を伸ばしたらあの人何したと思う? 030撫子:払われた。 031栞 :払われたなんてモンじゃないよ、機嫌が悪いってそのままふて寝しちゃってさ。 こんな良い女が誘ってるんだよ? 酷い話だと思わない? 032撫子:機嫌が悪い事を知らせてくれるなら、それはそれで親切だと思うけど。 033栞 :親切なモンか。 まぁ、健やかに寝息なんて立てちゃってさ。 こっちは退屈してるっていうのに! 本当に忌々しいよ、名前の無い男。 034撫子:そこまで? 035栞 :当然! 一緒に夢の同棲生活を満喫していようがね、人間の時間なんて有限なんだ。 あの人と過ごす一秒たりとも無駄になんてできる訳はない、そうは思わない? あの人も私もどんどん歳とってくんだ、いつまでも今みたいに何回も楽しめる訳じゃ 036撫子:<遮る> それで。 今日は愚痴を言いに来たの? 037栞 :なんだよぉお前様まで、最後まで聞いてくれたっていいじゃないか。 038撫子:疾しい話になりそうだったから。 039栞 :疾しい事なんて何一つない! 男と女、一つ屋根の下に暮らしてるんだ当然だろ!? じゃあお前さんは子供こさえるのも疾しいって、そう思うの!? 040撫子:詭弁。 041栞 :ぐっ。 042撫子:今日は本当にどうしたの? まさか、手を払われたのをそこまで気にしてるの? 043栞 :……いんやぁ、別に。 044撫子:気にしてるのね。 045栞 :だぁって! もう数日! ここ数日! ずっとそうなんだ! もしかして機嫌が悪いのは名前の無い男じゃなくて私の所為なのかなって! 寝てる隙に書類漁ったり、出掛けてる隙に着物を拝借して私の半纏に作り変えたり、 もしかしてどれかバレた? って気が気じゃないの! 046撫子:……。 047栞 :何だよぉ、そんな盗人見るような目をして! 048撫子:盗人を見てるのよ。 049栞 :もう着ない着物は好きに使っていいって言われてる! 050撫子:じゃあ何故、バレたかどうか気にしてるの? 051栞 :好きにしろって言う癖に、いざ好きにしたら気に入らなさそうな顔をしてるからだよ! いいじゃないの、ねえ? 着古した着物に綿を入れて再利用して、 私はあの人がいなくても温もりを感じられて、着物も無駄にならない! 私の手先の器用さがあるからこそできるんだ、良く出来た嫁だと思わないか!? 052撫子:じゃあ、一人寝の時はその半纏を着て寝たらいいんじゃない? 053栞 :嫌だ、できれば本人がいい! 054撫子:それにあなた、きっとその温もり云々を本人に話すから気に入らない顔をされるんじゃないの。 055栞 :ぐっ。 056撫子:図星ね。 057栞 :半纏の出来が良きゃぁ嬉しくなるんだよ、それを見せたいって、そう、乙女心だよ! 058撫子:あの人、そういう賑やかな話は嫌がりそうだけど。 059栞 :ぐっ……! 060撫子:他には? 061栞 :……お前様はいっつもそうやって正論ばっかりだ! 062撫子:正論だとわかっているならそうしたらいいと思うのだけど。 063栞 :そうじゃない! 面白みがない! 064撫子:あなたが面白いか面白くないのかはあなたに任せるけれど、私は面白い。 065栞 :面白いか? 本当に? 066撫子:もっと色んな事をそつなくこなすというか。 手際の良い人だと思っていたから。 067栞 :お、そ、そう? 068撫子:あなたのように手際が良くなくて、面白くなくて、申し訳ないけれど。 069栞 :あ、いや、そんな事は……。 070撫子:……。 071栞 :……。 072撫子:それで? 愚痴はお終い? 073栞 :……お終い。 ああ、子供が駄々を並べてるようで阿呆らしくなったよ。 074撫子:そう。 075栞 :<溜息> 愚痴を聞いてもらったからね、お前様の愚痴を聞くけど。 何かあるかい? 076撫子:愚痴ができるような生活をしていない。 077栞 :本当に? 078撫子:本当に。 079栞 :ふうん。 あの九官鳥とも相変わらずかい? 080撫子:……そういえば。 081栞 :ん? 082撫子:柳の君からお聞きした話を、あの人にしたのだけど。 083栞 :うん。 084撫子:面白くなさそうだった。 085栞 :ほお? うん。 086撫子:何故面白くなさそうだったのか。 それがわからなくて。 087栞 :うんうん。 088撫子:あなたなら理由がわかるのではと思ったけど、どう? 089栞 :待て待て。 情報が何一つ足りてない。 090撫子:あなた曰く、ホマレさんの話は恋愛の話なんでしょう。 なら、あなたの方が詳しい。 091栞 :だからね、状況をもう少し聞かせておくれよ。 092撫子:……。 093栞 :……えーっと、まず。 柳の君から何を聞いた? 094撫子:名前の無い男の話。 095栞 :あ、思い出した。 そうだ、あの人ホマレさんを呼び出す為にお前さんにその話をしたんだっけ。 096撫子:そうだったの? 097栞 :そう聞いた。 はん、話が見えてきたなあ。 気を悪くしないどくれよ? まず、ソウジさんはそういう訳で。 ホマレさんを呼び出したいが為に お前さんに名前の無い男の話をした。 098撫子:ええ。 099栞 :お前さんはソウジさんの思惑通り、ホマレさんに名前の無い男の話をした。 100撫子:そうよ。 101栞 :ホマレさん、それが面白くなかったんだろう。 お前さんをダシに使われるのがさあ。 102撫子:それだけ? 103栞 :ああ、それだけだよ。 104撫子:そうなの。 105栞 :謎は解けたかい? 何か思う事は? 106撫子:特に。 107栞 :イーッ。 ホマレさんはね、そう、そうして他人にお前さんが使われる事が面白くないと、 そう思うくらい、お前さんを大事にしてるんだよ? 108撫子:大事に。 109栞 :そうだよ。 110撫子:でも、あの人無駄話ばかりで肝心な事は何も話してはくれない。 111栞 :そりゃあさ、大事だからだって。 112撫子:あの人、私に話してない仕事もしているのよ。 113栞 :大事だからだって。 114撫子:便利な言葉ね、大切にしているから、それだけで大方済んでしまう。 115栞 :キミが為、摘んだ蕾(つぼみ)は紅(べに)の色。 116撫子:そうね。 誰しも見栄(みば)えの良い花を育てた気になれば満足するんでしょう。 117栞 :飛び越えたな。 ま、そういうモンさね。 お前さんとて、その話ホマレさんにしていないんだろ? 118撫子:どれ? 119栞 :私に話してない仕事もしてる、それが面白くないって。 120撫子:話してない。 121栞 :どうして? 122撫子:言った所で無駄だろうから。 123栞 :それ、みろ。 お前さんとて、咲いた花の色を見てそれで満足している。 124撫子:私は知らなくていい事だと隠されてしまうから。 なら聞くのも無駄でしょう。 125栞 :それこそ詭弁だ。 こうして愚痴るくらいなら本人に言っちまえばいいのよ。 お前様がホマレさんに興味を持ってると知ったら。 あの人飛び上がって喜ぶんじゃないかい。 126撫子:そうかしら。 127栞 :私の勝手な憶測だけどね。 128撫子:ふうん。 じゃあ、そうする。 129栞 :ああ、そうするがいいよ。 ちなみにいつ話すつもりだ? 130撫子:次に会った時。 131栞 :それがいつだって聞いてるんだよ。 132撫子:わからない。 133栞 :ああ、そうだったな。 お前さんが本を読んでる所に現れるんだったか。 134撫子:そう。 135栞 :「もしかしたらあなたに会えるかと思って、キャピュレット家の門を潜ったのです」。 そんな具合かね。 ああ、こちらはキャピュレット家じゃなくて喫茶店だけれど。 136撫子:……驚いた。 随分懐かしいものを。 137栞 :懐かしいだろ? 覚えてるかい。 138撫子:覚えてる、学芸会。 139栞 :アレも散々だった、大仰な衣装を着せられてさあ。 140撫子:でもとても似合っていた。 141栞 :お前さんもやればよかった。 お淑やかだから、私よりずっと適任だったろう。 オオハシのお嬢さんがと話題にもなったろうに。 142撫子:無茶を言わないで。 ロクジョウのお嬢さんも十分話題だったわ。 143栞 :無茶なもんか。 私はやったのだから、お前さんにだってできるだろ。 144撫子:級内(きゅうない)の人気者も大変だと、そう思って見てた。 145栞 :あんなのは台詞を覚えちまえばどうって事ない。 問題はその後だ。 ありがたいんだけどねえ、人の波が引くまで数日掛かった。 146撫子:でしょうね。 147栞 :ロミオとジュリエットか。 思い返せば退屈な話だったな。 148撫子:そう? 149栞 :おや、そうは思わない? 好みじゃないと言ってなかったっけか。 150撫子:好みではないけど、退屈だとは思わなかったわ。 まあ、あなたは退屈なんでしょうね。 151栞 :まあなあ。 よくもまあ、あんな勘違いで死ねるものだ、とは思ってたかな。 2015.9.17 完成 羽白深夜子 2021.1.16 更新 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子 引用 「ロミオとジュリエット」 ウィリアム・シェイクスピア
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