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【付喪神の件 八話】 (つくもがみのくだん はちわ) 男性2人:女性2人。 これまでのあらすじ:双子、進路相談の時期。 有償版販売ページはこちら。 【高野 里歌(たかの りか)】 16歳、高校一年生。流歌の双子の姉。 流歌より社交的だが学校の成績は悪い。ギャルっぽい見た目で厚化粧。 国を問わずお伽噺や古典文学が大好き。周囲には隠している。 流歌と同じ学校の文系のクラスで授業を受けており、将来の夢は翻訳家。 高校卒業後に留学をしたいと思っている。 ​ 【高野 流歌(たかの るか)】 16歳、高校一年生。里歌の双子の弟。 里歌より学校の成績が良いが内向的。休み時間も黙々と勉強している。 天体が好きで、将来は数学者を目指している。 里歌と同じ学校の理系のクラスで授業を受けており、将来の夢は数学者。 【空木(うつぎ)】 鏡の付喪神。女性型。 前の持ち主の所にいた際欠けた事で、人間の情を取り込み欠けた箇所を 補おうとした過去があり、人の心を読む事ができる。 現と空木は対の鏡として置かれていたものの、空木は人の情まで映してしまい 本来鏡に映らない筈の物が映り気味悪がられ、目利きの骨董品屋を転々としてきた。 【現(うつつ)】 鏡の付喪神。男性型。 空木の様な欠けはなく、人間の真似が上手い。とにかく器用。 空木が上記の通り人の情を映してしまう為、過去現の鏡だけを買いたがる客がいたが、 空木と離れる事を厭い空木を真似、こちらも本来鏡に映らない物を映してきた事で 結局空木と一緒に目利きの骨董品屋を転々としてきた。 【配役表】 高野里歌: 高野流歌: 空木  : 現   : ======================================= 001流歌:その日はいつも通り、本当にいつも通りのつまらない日だったんだ。 <流歌、家に帰ってくる。里歌、リビングでケータイを弄っている。> 002里歌:おかえりー。 003流歌:ただいま。 あー、だっる……。 004里歌:集中学習期間、だっけ。 大変だねえ。 005流歌:まあなあ。 理数なんて入るんじゃなかったわ。      ほんと、マジで、勉強詰め。 今何時。 006里歌:八時。 007流歌:十時間近く勉強させられんの流石に苦痛だわ……あれ、二人は? 008里歌:部屋で動画見てるよ。 海外の神話まとめてる動画にハマってる。 009流歌:おぉ。 で、リカは何してたん。 010里歌:そろそろルカ帰るかなって思って、時間潰してたトコ。      お夕飯まだだから食べようよ。 温めるね。 011流歌:んー。 ……え、何時に帰った? 012里歌:二時半くらいかな? 013流歌:洗濯物、干しっ放しなんだけど。 014里歌:あ! ごめんごめん、忘れてた! 015流歌:いや、いいけど……。 016里歌:友達と映画行ってさ。 その感想を二人に話してたら夢中になっちゃって。 017流歌:ほー……。 018里歌:よかった、洗濯物雨に降られなくって。 019流歌:で、帰って何してたん? 020里歌:え? や、普通に二人と話してー、それからお夕飯準備して、ゆっくり? 021流歌:いいなぁ。 俺マジ理数入るんじゃなかった……、ってお前。 022里歌:ん? 023流歌:先生にちゃんと勉強しろって言われたんじゃなかったのかよ。 024里歌:ま、まあ? 一日くらいね? 025流歌:お前さ、高校受験の頃もそんな感じじゃなかった?      三者面談でギリギリとか言われてなかったっけ。 026里歌:え、なんで知ってんの。 027流歌:俺廊下で待ってたから普通に聞こえてたんだよ。 028里歌:ああー。 029流歌:翻訳家になりたいならさ、ちゃんとしろって。      俺お前に話聞いてからちょっと調べたんだけどさ?      留学っつーか、英語での実務経験とか、日本語能力試験? とか。      文化的背景知ってなきゃいけなかったり、トイックで何点以上、とか。      結構色々勉強しなきゃいけない事ってあるんじゃねえの。 030里歌:え、 031流歌:知らなかったとか言うなよ? 求人サイト調べたらすぐ出てきたぞ。      留学したとて、仕事に繋がんなかったら意味ねーじゃん。      大学受験で躓いてる場合かよ。 032里歌:や、でも、その。 ほら、映画で文化的背景勉強してきた、みたいな? 033流歌:それが大学受験に通用すればいいんだけどな。 034里歌:うっ。 ……っちぇー、やっぱ理数科はしっかりしてるんだなあ。 035流歌:お前がしっかりしてないだけだって。 洗濯物も出しっぱなしだし。 036里歌:それは、ルカが取り込んでくれたってよかったんだよ? 気付いたんだから。 037流歌:俺十時間勉強して帰ったばっか。 疲れてんの。 038里歌:ちょっと歩いて取り込むだけじゃん。 039流歌:それができないくらい勉強で疲れてんの。 040里歌:勉強勉強って、家の事殆ど私がやってるんだからさぁ。      ちょっと目についた時だけでも、やってくれたらありがたいんだけど。 041流歌:いいじゃん、お前今日遊んで来たんだから。 042里歌:今日だけの話じゃなくて、 043流歌:あーもーわかった、わかった。 気付いた時な。 気付かないようにするわ。 044里歌:……そんな態度なら、お母さんに家にいて家事やってって言えばいいじゃん。 045流歌:は? それとコレ関係ねーだろ。 046里歌:あるって。 お母さんいてくれたら、私家事する必要、今よりは少なくなるし。 047流歌:そしたら勉強しますって? いや、お前母さんいても遊び歩いてるだろ。      母さんいてもいなくてもお前の成績変わんねーだろ。 048里歌:成績だの勉強だの、それしか言う事ないの?      成績以前に、私やウツツが家事やらなかったらこの家で生活できないと思うけど。 049流歌:だから、それを勉強しない言い訳にするなっつってんだよ俺は。      今日家事だけしてた訳じゃないんだろ? 遊び歩いてんじゃん、映画見に行ったんだろ。      映画見た二時間でいくつ英単語覚えられると思ってんだよ。 050里歌:勉強できたって、食事も掃除も自分でできないって人としてどうなの?      私がやる事に口出すならまず自分で自分の事できるようになったら? 051流歌:……お前だって。 留学したいとか、夢がどーこー言ってたけど。      結局ただ海外に遊びに行きたいだけじゃん。 052里歌:は? 053流歌:求人サイト見たけど、留学してないとできない翻訳の仕事の方が少なかったし。      遊んで暮らしたいだけだろ、どうせ。 054里歌:それを言うならルカだって人より勉強できる自分に酔ってるだけじゃん。 055空木:なんだなんだ、どうしたんだよ。 056現 :もしかして喧嘩してる? 057里歌:……ウツツ。 今日から食事の準備、しなくていいから。 058現 :え、リカ!? どうしたの急に! ねえ! <里歌、部屋へ向かう。現、それを追いかける。> 059空木:<苦笑する> やれ、最近は親しくしていると思ったんだがなあ。 060流歌:……ああーもう、なんだアイツ!? 急に突っ掛かってきやがって! 061空木:うん。 062流歌:家事だなんだって、母さんの事まで引っ張り出してさ! 063空木:うむ。 064流歌:アイツ、母さんに自分が家事をやるから父さんの所に行けって言ったんだよ。 065空木:そうか。 066流歌:それを自分が勉強しない言い訳に使ったり、母さん呼び戻せってのは違うだろ、      自分は映画見に行って遊んでた癖にさ! 067空木:おう。 068流歌:俺はさ、アイツにも夢があるってわかったから、勉強もしろってはっぱ掛けただけで! 069空木:そうだな。 立派な夢があって、けれどお前と違って奔放で、羨ましいな。 070流歌:……、羨ましい? アイツが? 071空木:違うか? 妾(わらわ)には終始、そう聞こえていた。      心は読んでないぞ、お前の言(げん)だけ聞いていた。 072流歌:う、らやましい、っつか……。 073空木:長時間の勉強で疲れておったのだろう、それはよく頑張ったな。 母君の件も、立派な事だ。      お前も母君に、自分達の事はいいから、父君の所へ行けと言った。 そうだな? 074流歌:……言った。 075空木:その心はえらいさ、立派だ。 しかし、母君が担っていた家事はどうするつもりだったんだ? 076流歌:それは、……そこまで考えてなかった、けど。 リカがやるって言ったから。 077空木:そうか。 そうだな、いくつか質問をする。 078流歌:何? 079空木:ルカ、風呂掃除の洗剤の買い置きはいくつある? 080流歌:え、わからない。 081空木:使っている柔軟剤の香りは。 082流歌:……知らない。 083空木:揚げ物の時に使った油の始末、やり方は? 084流歌:わからない、やった事ない。 085空木:ああ、そうだな。 同じ質問をリカにしたら、きっとすぐに答えが返ってくる。 086流歌:……お前も、家事しろって言うのかよ。 087空木:そこまでは言わないさ、妾はな。 妾もリカとウツツに任せきりだ、面倒だからな。      お前達が言い合った事、どちらも正論だ。      学生は勉強が本分で、されど生活も蔑ろにできぬ。 どちらも悪くない。 088流歌:でも、 089空木:でももだってもない。      ……まあなあ。 お前なりの心配の仕方だというのは、わかるんだが。 090流歌:ん? 091空木:最近はすっかりなりを潜めていたが、そういえばお前達は心底仲が良い、という訳ではなかったなあ。      ふふふ、それで我らが心配になって顔を見せた、そうだった。      その過程で、あのようにつっけんどんで。 伝わる訳ないだろ? 092流歌:いや、俺はただリカが言ってる事が気に入らなかっただけで、 093空木:後半はそうだな。 でも翻訳家の仕事について調べたのは何なんだ? 094流歌:それは、 095空木:おうおうそうか、求人サイトを片っ端から調べるだけでなく、留学の資料まで取り寄せて。      うんうん、そうだな、国によっては治安が心配だな。 096流歌:読んでるな!? 今は心を読んでるな!? やめろよ! 097空木:ああ、履歴にあった海外治安ホームページとはそれか。 わざわざ下調べまでして。 098流歌:パソコン譲ってやったろ、俺のパソコン二度と使うな! 099空木:確かに教師もお前が留学を希望してると思うだろうな。 訂正しない辺りお前も中々強(したた)かだ。 100流歌:だから! 101空木:なんと言ったかなー……そうだ。 102流歌:んあ? 103空木:立派なシスコンだぞ、胸を張れ。 104流歌:張れるか! ちげーし! 105空木:ツンデレでもあるな。 106流歌:余計な言葉ばっかり覚えやがって……! 107空木:まあまあ。 お前は母君に、リカに家事を任せるから父君の所にいて構わないと。      冷静になった今も、そう胸を張って言えるか? 108流歌:……その言い方は卑怯だ。 109空木:だろ? そういう事さ。 ちなみにな、もう一つ教えてやろう。      風呂、お前が帰るだろう時間に合わせたからな、そろそろ沸いている頃だぞ。 リカがやってくれた。      夕食を遅らせるのもリカの提案だったんだがな。 妾と先に食うか? <里歌の部屋。> 110現 :リカ、事情は分かったから。 もう泣き止みなよ。 111里歌:泣いてない! 112現 :泣いてるよ。 113里歌:……だって、最近やっと話せるようになったなって、ちょっと嬉しかったのに。 114現 :うん、そうだね。 115里歌:なのにさ、ルカ、ずっと勉強勉強ってそればっかりでさ。      自分が勉強しか取り柄がないからって、私にそれを押し付ける事なくない?      なに、話すようになったからって、マウント取りたい訳? 116現 :マウント、えーっと……。 117里歌:自分が得意な事で言い負かしたいのかって、優位に立ちたいのかって事! 118現 :ああ、ありがと。 ふうん、面白いスラングだね、言い得て妙だ。 119里歌:関心してないでよ! 120現 :ごめんごめん。 121里歌:もうマジ、話すんじゃなかった。 夢の事とか、色々。      結構嬉しかったのに、馬鹿みたいじゃん。 122現 :話さない方がよかった? 123里歌:よかった! 数学者とか、勉強できるのってそんなにえらいの?      そりゃ、さあ。 映画見て来たけど、でも。      それって友達と約束してたから見に行ったんだし。 急に断れないじゃん。 私も見たかったし。 124現 :うん。 125里歌:普段家事を何もしないで口だけ出して、もー何アイツ、知らないし、もう。 126現 :えらいよ、ルカは。 夢の為に長時間勉強してるの。 127里歌:学生ってそれだけが、勉強できる事だけがえらいの? 128現 :家の事全部担ってるリカもえらいよ。 今日だって映画終わったら、まっすぐ帰ってくれたんだろ。 129里歌:……うん、まあ。 買い物とか行きたかったなって、思った。 130現 :そうだよね。 俺が手伝ってるのも料理作るってそれだけだし、気が回らなくてごめんね。      明日からは別の事も教えて。 131里歌:……ん。 132現 :でも、リカの本分は勉強だ、それはルカが正しい。 リカもわかってるよね。 133里歌:……。 134現 :翻訳家になりたいから。 それは、リカが選んで頑張らなきゃいけない。      誰の所為じゃない。 学費の事も、二人ともイーブンだ。 それはこの間の話でわかってるよね。 135里歌:うん。 136現 :なんていうのかな……真面目だから、リカ。 きっと詰め込み過ぎちゃうんじゃないのかな? 勉強。      勉強だけじゃなくて、家事とか、色んな事。 ルカの方が要領がいいのかもね。      そういう、要領良くやるコツ、聞いてみたらどう? 137里歌:イヤだよ、話したくない、今は。 138現 :話したくない? 139里歌:……ママ、あ、お母さんにさ、ルカも、お父さんの所に行っていいよって、言ってて。 140現 :あぁ、うん。 141里歌:喧嘩ばっかりだけど、そういう所は同じ事考えてたんだなって、嬉しかったんだよ。 142現 :それをルカに話した事はある? 143里歌:ないよ、ないけどさ。 口ではお母さんにそう言って、自分は家事何もしないで、挙句私に勉強しろって。      私家政婦じゃないし。 そういう口先だけなの、無理、嫌だ。 144現 :……。 145里歌:確かに私、今日は遊んでたよ、授業早く終わったから。      映画にも行ってた。 でも掃除したり食事作るの、サボったりしてない。      洗濯物取り込み忘れたのは失敗したけど、でも、これってそんなに悪い事なの? 146現 :悪い事じゃないよ。 147里歌:だよね? はぁもう、ムカつく、ほんとに。 ルカも全部家事一人でやればいいのに。      勉強さえしてれば一人で生きて行けますみたいな言い方してさ、 148現 :ねえ、リカ。 俺と一緒に来るかい? 149里歌:……一緒に? え、どういう事? 150現 :俺達と話した一番最初。 伊勢物語みたいに、誑(たぶら)かすんじゃないかって言ったろ?      誑かすー……、とは、また違うんだけど。 リカさえ同意してくれたら、鏡の中に招ける。 151里歌:……招く? 152現 :勿論、攫(さら)ったりする訳じゃないよ。      リカが戻りたいと思った時に帰って来れる、ちゃんと。 それは約束する。 153里歌:神隠し? 154現 :そういう言われ方もするかな。 155里歌:……。 156現 :俺達は末席の神だ。 人の思いや信仰があってこその神。 人との約束は必ず守る。      絶対に、害は為さない。 迷惑も掛けない。      リカの夢も邪魔しない。 家族からリカを取り上げる事もしない。 157里歌:じゃあ、なんで? 158現 :……心配なんだよ。      折角ルカと距離が縮まったのに、こんな些細な事で喧嘩になるだなんて、もう話さない、だなんて。 159里歌:だって、 160現 :留学だって心配だ。 海外にはきっと俺、ついて行けないんだから。 161里歌:そうなの? あ、そっか、鏡が無いと、……いや、買い物したり、鏡から離れても大丈夫じゃない。 162現 :海を渡るのは、ちょっとこの姿でいられる自信がないかな。 163里歌:なら、鏡ごと空輸してもらえば海外に行けるって。 164現 :俺は海を渡った事がない。 この日本から出て、文化も信仰も何もかも違う場所で。      こうしてリカとまた話ができるかどうか、わからない。 165里歌:あ。 166現 :ね? ……鏡の中なら、こっちとは時間の流れが違う。      頭を冷やしてみるのも悪くない、と、思うんだけどー……、やっぱちょっとアレかな。 マズいのかな。 167里歌:時間の流れが違う、って。 それ体がどーこーなっちゃったり、しないの? 168現 :それもわからない。 169里歌:え、それはちょっと怖いよ。 170現 :だよね。 まあ、その……うん、提案の一つだって思ってくれたらいいよ。 171里歌:なんでそんな事、急に。 172現 :ごめんねほんと、変な話して。 本当に心配だって、それだけで言ってみたんだ。 あまり気にしないで。      多分ほら。 リカがルカの事、ここまで拒絶したの初めて聞いたから。      最初の頃も、ここまで拒絶してなかったなって……大丈夫かなって。 173里歌:それで、頭冷やせって事? 174現 :うん、人間って脆いから。 いつ何が切っ掛けで、拒絶が別れになるかわからないだろ?      無理だって言ってたけど。 こうして喧嘩してさ、明日もしルカに何かあったら、リカは後悔しない? 175里歌:……そ、れは。 大袈裟だよ。 176現 :大げさじゃないよ。 人間って、そういうものだから。      本当に些細な事ですれ違って別れて、その後ずっと後悔して、      そうじゃないとわからない事が沢山あるものだから。 177里歌:……。 178現 :……そうだなあ。 うん、丁度いいタイミングだったのかもしれない。 179里歌:何? 180現 :少し昔話をしよう。 俺とウツギが、前にいた家の話。 181里歌:兄妹がいた家、だっけ? 182現 :そうそう。      ──……夢破れた、拒絶したまま終えてしまった、可哀想な兄の話を。      物言わぬ鏡だけが知る、あの子の最期の一礼の話を。 2016.12.28 完成 羽白深夜子 2021.1.17 修正 羽白深夜子 2022.2.13 修正 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子
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