最終更新:2024/5/1
利用規約
をご一読下さい。
★
してはいけない事→脚本のコピー&ペースト/ページURL以外の配布/アーカイブ等の7日以上の公開
告知や配信画面の為に画像や動画を作らず、使わなければ、お金を支払う必要はありません。
アーカイブ等の7日以上の公開は、有償版の購入と別途申請が必要です。
わからない事がありましたら羽白深夜子までご連絡下さい。
サイト掲載版を使う方は
使用申請フォーム
からご申請下さい。
【帝都短歌事件録「上へ参ります」】 (ていとたんかじけんろく「うえへまいります」) 男性5:女性3~5 有償版販売ページは
こちら
。 【春日 天真(かすがてんま)】 22歳男性、探偵所所員。 東北から帝都へ上京し、一話「秋待つ鮮血」の事件を切っ掛けに天之川探偵所に就職。 平々凡々だが気の優しい、機転が利く青年。 【天之川 昴(あまのがわすばる)】 35歳男性、天之川探偵事務所所長。「雷」の怪異を扱う。 過去警察に所属しており、独立し探偵事務所を構えている。 仕事はできるが壊滅的に不器用で、「破壊神」と呼ばれる程の生真面目なドジ。 警察時代自らの怪異で小さな漁村を壊滅させ、「事故死」として処理された事がある。 【若葉 景織子(わかばきょうこ)】 外見は30代女性、探偵所所員。「氷結」の怪異を扱う。 遥か昔人魚の肉を食べた事で不老不死、「八百比丘尼」となっており 当時と変わらない外見を隠す為各地を転々とする中で昴と出会い、「天之川探偵事務所」設立に立ち会う。 我儘で飽き性だが愛情深い女性。 【香鹿 閏(こうがじゅん)】 23歳男性、探偵所所員。「時間操作」の怪異を扱う。 天之川探偵事務所に所属している青年。 喧嘩っ早いが面倒見が良く、年下や弱者に親切で優しい。 可愛い物、文房具に目がない。 【八尋 久々利(やひろくくり)】 18歳女性、探偵所所員。 天之川探偵事務所に所属している少女。 書類整理からお茶出しまで、細々した雑務をテキパキこなす。 「超記憶症候群(ハイパーサイメシア)」と呼ばれる症状で、物心ついた頃、3歳頃からの記憶を全て覚えている。 【天之川 珠(あまのがわたま)/天之川 珠枝(あまのがわたまえ)】 4歳・28歳女性、猫又。「俊足」の怪異を扱う。 乳児の頃山中に捨てられた半妖の猫又。猫耳のついた幼い姿と成人女性の姿を持つ。 五話「猫の子一人いない」の事件をきっかけに、天之川探偵事務所で昴の遠縁として暮らし始める。 ※4歳児の姿(脚本上「珠」)と、28歳の姿(脚本上「珠枝」)と 演じる方を分けても構いません。台詞数が少なくなる事をご了承ください。 【伊良部 啓太(いらべけいた)】 25歳男性、洋食屋「七福堂」店主。 おっとりしてマイペースな怪力の青年。幼馴染で夫人の美姫(みき)と七福堂を営む。 二話「寂寞の所在」内、自身の短歌怪異解決後は天之川探偵事務所の所員達に場所や料理、 噂や情報を提供している。 【本間 健一(ほんまけんいち)】 20代男性。 デパートでひったくりを働いた事で、天之川探偵所所員一同から追い掛けられるハメになる。 【宮下 亜芽理(みやしたあめり)】 20代女性、エレベーターガール。 イギリス人とのハーフ。デパートでの勤務中、たまたま事件に遭遇する。 ※「珠(珠枝)」との兼役が可能です。 【店員】 壬生さん。30歳以上男性、百貨店店員。 たまたまひったくり現場に居合わせてしまった三階責任者。 すごくうるさい。 ※「春日天真」「伊良部啓太」「本間健一」役のどなたかが兼ねて下さい。 【女性客】 女性。健一に荷物を引っ手繰られてしまった女性客。 ※台詞は一言のみ。「八尋久々利」役の方が兼ねて下さい。 【配役表】 春日天真 : 天之川昴 : 若葉景織子: 香鹿閏 : 八尋久々利: 珠/珠枝 : 伊良部啓太: 本間健一 : 宮下亜芽理: 店員 : 女性客 : ======================================= <天之川探偵事務所内。> 001昴 :──私設アマノガワ探偵事務所。 通称短歌事件という、怪異事件を追う専門の探偵事務所。 百人一首から歌を頂戴して、事件状況や事件背景、動機などがその歌と似通った状況になっており、 人間には成し得ないだろう方法が用いられている事件を、我々はそう呼んでいる。 この短歌怪異。 物品に付随させられる後天性のものと、人が生まれながらに持っている 先天性のものとがある事が最近わかった。 この収穫は大きく、 002珠 :<昴の台詞中に昴の膝に登る。> にゃっ、にゃ、にゃー。 スバル。 にゃー! スバルー! 003昴 :調査はつつがなく順調、 004珠 :スバルー! 遊べー! 005昴 :なんだが…… 006珠 :スバル! スバル! タマと遊べ! 007昴 :タマ、スバルは今仕事をしている。 あっちのお部屋で良い子にしていなさい。 008珠 :あそぼ! あそぼ! 009昴 :こら、スバルは忙しいんだ! テンマやククリと遊んでいなさい! 010珠 :テンマもククリもお仕事だもん! 011昴 :じゃあ何故スバルの邪魔はするんだ! スバルもお仕事をしているんだ、あぁあ、こら! 012景織子:……何をしてるの? 013昴 :キョウコ、助かった! タマを預かってくれ! 014珠 :スバルがいい! スバルと遊ぶの! 015久々利:<応接室に駆けてくる> タマちゃん、待たせてごめんね! ……あらら。 016天真 :<応接室に駆けてくる> タマちゃんいた? あー、そうしてると親子みたいですね。 017昴 :親子……!? 018珠 :おやこ。 019昴 :違うぞ! 僕にこんな大きい子はいない! 020天真 :いやわかってますよ! 021珠 :おやこー? 022久々利:タマちゃーん。 ほら、こっちで遊ぼ? ご飯もあるよー。 023珠 :ごはん! ごはん! <久々利に飛びつく> 024景織子:まあまあ、よろしいんじゃないですか。 鼻の下伸ばしちゃって。 025昴 :の……っ!? 伸びて……!? <触って確認する> 026天真 :伸びてないですよ、大丈夫ですよ! 027久々利:<小声> ヤキモチだ。 028珠 :やきもち! 029景織子:違う! 030閏 :おーいタマー! ほらほらほら、猫じゃらし取ってきたぞ! ほら! 031珠 :にゃ! にゃー! <閏に駆け寄る> 032閏 :あああ……お前ほんと、子供の姿だとふくふくしてて可愛いなあ……。 猫の耳までついててさあ……実態は成人女性だなんて俺絶対信じねえ……。 033珠 :にゃー? 034閏 :にゃー!(なー!) 035天真 :鼻の下を伸ばすというのは、ああいうのをいうんだと思うんです、僕。 036久々利:まさしく、ですね。 037昴 :僕は鼻の下を伸ばしてなんかないぞ! 038景織子:はいはいはい、暑苦しい。 039昴 :暑……!? 040景織子:それで。 今日はタマちゃんのお洋服を買いに、百貨店まで行こうと思ってるんだけど。 はい、一緒に行く人、挙手。 041久々利:はい! はいはいはいっ! 042天真 :百貨店! 僕行った事ないんです、一緒に行ってもいいですか!? 043景織子:いいわよ。 044昴 :僕は暑苦しくなんかないぞ! 045景織子:わかったから! 046珠 :ひゃー、かてん? 047閏 :百貨店。 タマも行った事ねえだろ、お前の洋服を買うんだと。 048珠 :よーふく。 049閏 :俺は留守番してるから、可愛いの買ってもらってき、 050景織子:ジュン、タマちゃんの面倒見なさいよ。 051閏 :ああ!? なんで俺が! 052景織子:文具屋さん入ってあげるから。 053閏 :タマ! 今日は絶対に俺から離れるなよ! 一日きっちり面倒見てやるからな! 054珠 :んんん? 055天真 :じゃあ、今日の留守番はスバルさんに、 056昴 :僕が、留守番……? 057久々利:お願いしてもいいですか? あ、勿論ちゃんとお土産は買ってくるんで! 058昴 :みんな、出掛けるのに……? 059久々利:うっ……。 060昴 :僕だけ留守番、なのか……? 061景織子:依頼人が来たらどうするのよ。 062昴 :来ないかもしれないだろ!? 063景織子:来るかもしれないでしょ! 064天真 :あ、あ、あのー! ごめんなさい僕が留守番するんで! 065昴 :いや! テンマは百貨店行った事がないんだろう! 行きたいよな!? 066天真 :えっ、あ、はい。 067昴 :ククリも! 百貨店行きたいよな!? 068久々利:へっ。 あー……そうですね、行きたい、ですね……。 069昴 :奇遇だな僕も行きたい! よし行こう、みんなで行こう! 070珠 :スバルも行く? よーふく行く? 071昴 :ああ! スバルも百貨店行くぞ! 072閏 :……姉さん。 俺、残るか? 073昴 :みんなで行こう! 074景織子:だそうよ。 075閏 :あー、はいはい……。 <帝都、繁華街。> 076珠枝 :すごいな! 人間いっぱいいるな! テンマ! 077天真 :あー、タマちゃん、いや、タマさん……? 078珠枝 :ん? どうしたテンマ! 079天真 :いやあ、大きくなってるタマ、……タマエさんをどうお呼びしようかなって。 080珠枝 :タマはタマだぞ! あれ? タマはタマちゃんじゃないのか!? 081天真 :ああ、うん、タマちゃんだよ、大丈夫。 082景織子:大きくなれば猫耳はしまえても、中身は小さいままだから。 ジュン、ちゃんとお守りしなさいよ。 083閏 :大丈夫だって。 ほらタマ、自分の名前言ってみろ。 084珠枝 :アマノガワタマエです! タマちゃんです! スバルの遠縁? の、親戚? です! 085閏 :よし! 086景織子:うーん……。 087天真 :今日はこのくらいで。 少しずつ教えてあげたらいいじゃないですか。 088景織子:まあ、そうね。 089昴 :ククリ! 百貨店に着いたら何を買うか! 090久々利:まずはタマちゃんのお洋服ですよ。 091昴 :お前は! 何が欲しいんだ!? ほらほら、何でも言ってみなさい! 僕はネクタイを新調して、ハンカチを買い足すぞ。 ククリはどうする!? はっ……! 屋上にレストランがあったな、みんなでハンバーグでも食べるか! 092久々利:百貨店、すごく行きたかったんですね……。 093閏 :姉さんはあのでっかい子供、どうにかしてくれよ。 094景織子:面倒臭い。 095昴 :何か言ったか!? ほらほらみんな遅いぞ、早く歩け! レストランが混み始めてしまうぞ! 096久々利:百貨店は逃げませんから! もう、少し落ち着いて下さいな! 097景織子:ククリちゃんが面倒見てるからいいのよ。 私、手が掛かる男って嫌いなのよね。 098閏 :うっわ、姉さんおっか(ない)、もごご! <天真に口を塞がれる> 099天真 :あははは、その、素直なお気持ちはそうだったんですね! いつもご親切にありがとうございます! これからもよろしくお願いしますね! 100景織子:あら。 ちゃんとお礼が言える子は好きよ。 ありがとうね、テンちゃん。 101閏 :何すんだよテンマ! 102天真 :<小声> 僕はただ円滑に暮らしたいんです! 凍りたいんですかジュンさんは! 103閏 :凍りたくは! ……ない! 104天真 :でしょう! 僕だって同じですから! 105景織子:じゃあ良い子にしてなさいねー。 106啓太 :あれぇ。 皆さんお揃いで、こんな所でお会いするなんて珍しいですねえ。 107景織子:ケイタくんじゃない。 今日は一人なの? 108啓太 :はい。 ミキちゃんへ結婚記念日のプレゼント、選びにきたんです。 内緒にして下さいね。 109珠枝 :だ、誰、誰だ? 110天真 :タマちゃん。 この人はケイタさんって言って、僕達と仲良しなんだよ。 111閏 :ケイタ、コイツうちの新人。 よろしくな。 112啓太 :おお! またお綺麗な方が入られたんですねえ。 僕はイラベケイタです、探偵所の調査協力をしているんですよー。 よろしくお願いします。 113珠枝 :…… <じーっと啓太を見ている> 114啓太 :ん? 115珠枝 :お前、ハンバーグの匂いがする! 116啓太 :へ? 117天真 :タマちゃん! 118閏 :ばっかお前、こういう時はな、自分の名前とよろしくって言うんだよ! 119景織子:ごめんねケイタくん! この子その、人見知りなのよねー! 120啓太 :は、はあ……? 121珠枝 :そうなのか! アマノガワタマエです! タマちゃんです! スバルの遠縁? の、親戚? です! ハンバーグよろしくな! 122啓太 :あ、うん、うん……? ハンバーグ作るね……? 123閏 :悪いなケイタ、その、またちゃんと話すから! 124昴 :お! ケイタくんじゃないか! 奇遇だな! 百貨店に行くのか!? じゃあ一緒に行こう! 125久々利:もースバルさん! ちょろちょろしないで下さいー! 126珠枝 :スバル、スバル! 今日はだっこしないのか!? 127啓太 :だッ!? 128景織子:こんなデカい子だっこできる訳ないでしょ! ほら、手繋いであげるから! 129閏 :今日は俺がタマの面倒見るって話だったろ! 姉さんはククリ手伝ってやれって! 130久々利:キョウコさん助けてー! 131天真 :すみません、すみませんケイタさん! これには深い訳が……あーっ! スバルさん信号! 信号ちゃんと見て歩いて下さい! 132啓太 :あー、あははは……賑やかな人達だなあ……。 <百貨店内。> 133景織子:買い物はこんな所かしらね。 気が済んだ? 134昴 :ああ! 135珠枝 :スバル、キョウコ、帰ったらこれ着るぞ! 明日はこれ! 136景織子:そうね。 折角買ってもらったんだから、大事に着るのよ。 137閏 :所長の買い物ばっかりじゃねえかよ……。 ククリと姉さんの買い物よりなげえ……。 138天真 :シーッ! 僕も思いましたけど、シーッ! 139久々利:何か言いました? 140閏 :いいえ! 141天真 :いつもお買い物にお連れ頂いて大変充足した時間をありがとうございます! 142久々利:うむ! よろしい、ですよ! 143天真 :ふーっ! <一仕事した顔> 144閏 :なんでえ、ヘラヘラおべっか使いやがってよお。 145啓太 :こうして大勢で買い物するのも楽しいですねー! ミキちゃんへのプレゼントも買えたし! キョウコさん、本当にありがとうございました。 146景織子:うん、大事にしてもらえるといいわね。 147啓太 :ええ! でも、そのぉ。 プレゼントに下着を勧められたのはびっくりしちゃったなあー! 148閏 :<吹き出す> 149久々利:きょ、きょ、きょ、キョウコさん!? 150景織子:何? いいじゃない、新婚なんだから。 ねー。 女の子の持ち物って高いのよ。 よく覚えておきなさいね? 151昴 :そうなのか!? 152景織子:ちょっと黙っててもらえる? 153昴 :キョウコすごい沢山持ってるじゃないか、 <景織子に殴られる> 痛い!? 154啓太 :わあ! やっぱりご存じなんですねぇ! 155景織子:スバルは! 人の洗濯物勝手に取り込むの! いい加減止めなさいよ!? 156昴 :いだ、痛い! じゃあ半日も放っておくな! 先に自分で取り込めばいいだろ!? 157天真 :僕らは何を見せられているんでしょうか。 158久々利:所謂(いわゆる)、痴話喧嘩ですね。 159啓太 :でもでも、本当に勉強になりました! ありがとうございます! 物知りですごいなぁ、都会のお姉さんって感じですねえ。 160景織子:あら。 161閏 :<小声> ものすごく年上のお姉さ <景織子に足元を蹴られる> いっだッ!? 162啓太 :ミキちゃんへの贈り物に困ったら、また相談にのって下さいー! 163景織子:あらあら! 勿論いいわよ。 ケイタくんね、ミキちゃんと食べるようにこのお金でお惣菜でも 164女性客:キャーッ! 引ったくりよー! 165珠枝 :にゃ? 166閏 :何だ? 引ったくり……? 167店員 :アアーッ! ワタクシはたまたま偶然居合わせたこの百貨店の店員なんですけれども、 突如疾風の如く現れた引ったくりにより大切なお客様の大事なお荷物がーッ! 168閏 :あ? 169店員 :ワタクシは、いやワタクシ共は! 販売に従事する身故どうする事もできず! 無力! 唯々無力! け、警備員ー! 警備員ー! いや、警察の方ー! お客様の中に公的権力をお持ちの方はいらっしゃいませんかー!? 170昴 :どれ、力を貸そうか。 すみません、我々── 171店員 :あああああああああ警察の方でございましたか! なんという幸運! ワタクシ生粋のラッキーボーイでして! しかし今日あなたに巡り合えた以上の幸運がございましょうか! 是非ご協力の程お願い致します! 172昴 :あの、 173店員 :ワタクシこの三階責任者のミブと申します! 憎き引ったくり犯は所謂バックヤード、裏へ向かった様子! この百貨店の裏側です、従業員用通路をお使い下さい! 何、犯人さえ掴まれば物品の一つ二つ三つ! ワタクシミブが全責任を負いましょう! なんせそう! 三階責任者! ですから! 174昴 :あ、ああ、三階責任者のミブさん、どうも……。 175店員 :ささささお早く! お客様の安全はワタクシ共が確保致します! どうか犯人をひっ捕らえて下さいましー! 176昴 :わ、わ、わかりました。 ほらみんな、行くぞ! 177閏 :何だってんだよ全く……! 178景織子:無駄口叩かないの、足動かしなさい! 179珠枝 :キョーコキョーコ、どこ行くんだー? 180景織子:ジュンはこの子のお守りなさい! 181閏 :ああ!? 182昴 :あとでウサちゃんパンケーキ奢ってやるから。 頼むな、ジュン。 183閏 :よっしゃ任せろ! タマ、ちゃんと俺の言う事聞くんだぞ! 184啓太 :あ、あのぉ……勢いでついて来ちゃったんですけど、僕はどうすればー……。 185久々利:ケイタさんは私とご一緒しましょう! 186啓太 :え、いいの? 187久々利:はい! テンマさんも、……あれ? 188景織子:テンちゃん? あ、いたいた、あの子何して── 189天真 :ミブさん。 この百貨店にはエレベーターがいくつもありますよね。 それぞれ止まる階が違ったかと思います。 従業員用通路と合わせて、全体がわかる地図か何かございますか? 190昴 :すっかり、立派な参謀役だな。 <百貨店内、搬入口付近。> 191健一 :──……よし、よし、よし! へへ、思った通りだ。 こんなデカい百貨店なら金持ちもいらぁな。 まさかここまで追い掛けてくるなんてこたぁないだろ── 192久々利:見つけた! あなたがひったくり犯ですね! 193健一 :なんっ……だぁ、子供じゃねえか。 194久々利:<銃を向ける> そこを動かないで下さい! 195健一 :銃なんか向けたって……銃!? 196久々利:盗った物を足元へ置いて! 両手を挙げて! 197健一 :……ど、どうせ玩具だろ、嬢ちゃん。 悪いな、ままごとはまた今度、 <久々利、発砲する(威嚇射撃)> 198健一 :にぃ!? 199久々利:まだ玩具に見えますか? 大人しく両手を上げて! <上階から机が降ってくる。> 200健一 :ひいっ!? 201久々利:ええっ!? 202啓太 :よい、しょっと…… <机を持ち上げながら、下を覗き込む> おーい、ククリちゃん大丈夫ー? 203健一 :な……ッ 204久々利:け、けっ、ケイタさん!? あああ、危ない! そのように大きな机は、持ち上げて投げる物ではありませんよ! 205啓太 :いやあ、引ったくり犯を捕まえる為だって言ったら、店員さん達がどーぞどーぞって……。 驚いたぁ。 銃声がしたからククリちゃんが撃たれたのかと思って、慌てて投げちゃったー。 206健一 :投げ……!? 207久々利:もおっ! 危ないですよ! 208健一 :そ、そうだそうだ! 209久々利:次からはちゃんと、どこに投げるか目測をつけてからにして下さいね! 210健一 :そうじゃねえんだ!? 211啓太 :うん、そうしようと思っ、て! <啓太、机を健一と久々利の間に投げる。> 212健一 :うわあああああ!? 213久々利:そう! その調子です! 214健一 :その調子じゃねえんだよ! 215久々利:さあ。 216健一 :おい、 217久々利:見ての通り。 こちらからは出られませんよ。 <拳銃を構え直す> 218健一 :おい! あれ嬢ちゃんの仲間か!? だったら止めさせ── 219啓太 :止めないよぉ。 お兄さん、武器持ってるんだろ? そんな物を持った人とククリちゃんが対峙したら、危ないじゃないか! 220健一 :拳銃! この嬢ちゃん拳銃持ってんだ!? 221啓太 :それはそれ、これはこれー。 <机を持ち上げる> 222健一 :ひいっ、 223啓太 :怪我したくなかったら、大人しくしてて下さいね! 224久々利:そして、お縄について下さいませ! 225健一 :ひいい! <逃げ出す> 226久々利:あっ、こら! 待ちなさい! 227啓太 :あー、ええっと……。 こらぁー。 人の物、勝手に持っていっちゃ駄目なんですよー! <百貨店内、従業員通路階段。> 228健一 :くそ、何なんだあいつら……! 仕方ねえ、このまま階段で一端上の階に── 229閏 :いいかータマ。 お前の初仕事だからな。 230珠枝 :仕事! タマも仕事する! ご飯獲るんだろ!? 231健一 :ご飯……? 232閏 :あー違う違う。 いいか? 捕まえたからって、食っちゃ駄目だからな? 233珠枝 :食っちゃ駄目なのか!? 何でだ!? お兄ちゃんは食ってたぞ!? 234健一 :食……!? 235閏 :何でもだ! あ、殺しちまうのもナシだからな!? 236健一 :殺ッ……!? 237珠枝 :んん? あ、いたー! ジュン、ジュン! うんと下だ! アイツ! アイツだろ!? 食うのも殺すのもナシ! なんだな! アイツ捕まえたらいいんだな! 238健一 :ひっ……! 239閏 :おお、流石耳が良いな。 なあ、兄ちゃん? 悪い事した人間は、警察に引き渡して、反省してもらわねえとなぁ。 240珠枝 :そうなのか! にーちゃん! 241健一 :な、……な、何なんだよ、お前ら……! 242珠枝 :お返事ないとわからないぞ! 243健一 :うるせえ! く、来るな、こっち来るなよ! そこ何階だ! 244珠枝 :なんかいだ? 245閏 :六階だな。 246珠枝 :ろっかい! だぞ! 247健一 :なんだアイツ……! いいか、そこから! 下りてくんな! 248珠枝 :そっち行かないとにーちゃん捕まえらんないぞ! タマのお仕事だからな! ケーサツに、引き、うんと、うん……? 249閏 :あ。 もっとわかりやすい言い方があったな。 ネズミ捕りだ。 250珠枝 :んんん? アレ、人間だぞ? ネズミじゃないぞ? 251閏 :悪い事をした人間を、ネズミって呼ぶ事があるんだよ。 252珠枝 :そうなのか! わかったぞ! 人間、すぐ死んじまうからな。 殺さないようにすりゃいいんだろ? 253健一 :く、…… <包丁を取り出す> 来るな! おい、刺すぞ! そこから下りてきたら刺し殺す! 俺は本気だからな!? 254珠枝 :さす? なんだそれ、キラキラで綺麗だな! 255健一 :な…… 256閏 :やあ。 残念だったなあ、兄ちゃん。 ちっとばかし運が悪かったな。 詳しい事は言えねえが、俺達、警察と連携してる探偵事務所の人間でなあ。 包丁程度じゃあ。 ──お前の常識じゃ、俺達は脅せないぞ。 257健一 :は、……はあっ!? 258閏 :まあ。 新人教習だと思って、付き合ってくれや。 259健一 :<駆け出す> 260閏 :タマ! ネズミ捕りだ、お前得意だろ! 261珠枝 :一番得意だぞ! 任せろ! 262閏 :階段を下りたら、刺し殺すんだったな。 タマ! 飛び降りろ! 263健一 :は、 <珠、階段の手すりから健一の近くの手すりへ飛び降りる。> 264珠枝 :にゃ! 265健一 :ひっ、 <後退る> 266珠枝 :そのキラキラ、いいな! タマにちょーだい! 267健一 :な、……何っ、な、……!? 六階だろ、お前、いたの……! 268珠枝 :ん? そうだぞ! それちょーだい! 269健一 :六階から飛び降りて、なんで平然としてんだよ……!? 270閏 :よっと。 ひひ、追いついたぞ。 タマ。 こういう時はちょーだい、じゃねえんだ。 271珠枝 :んにゃ? 272閏 :こっちに寄こせ。 その凶器と引っ手繰ったモンを、こっちに寄こせ。 わかったか? 273健一 :っひ、ひいい! <逃げ出す> 274珠枝 :あー! ジュン、ジュン! アイツ行っちゃったぞ! 275閏 :ありゃ。 店内へやっちまったのはマズったな。 ま、俺ぁお守りしろとしか言われてねえしなあ。 どーにも、生きてる人間相手はやりづれえ。 276珠枝 :ジューンー! 277閏 :はいはいはい。 ……ま、あっちなら追い掛けた所で、俺らの仕事ないだろうしな。 <百貨店内、一階。> 278健一 :どけどけどけどけ! くそっ、正面出口、エレベーターの方が早、いっ!? 279景織子:ようこそー。 お客様、慌てて如何(いかが)なさいましたかー? 280昴 :我々は、なんやかんやあって警察から同等の権力を委託されている探偵だ。 281景織子:<小声> なんやかんや。 282昴 :<小声> 短歌怪異は公表できないからな。 283景織子:<小声> わかってるけど、もうちょっと言い方なかったの。 284健一 :<舌打ち> さっきから何なんだよ! <包丁を取り出す> 285昴 :ふむ、包丁か。 286景織子:何ていうか、芸がないのねえ。 287健一 :あぁ!? 手前、ぶっ殺すぞ! 288景織子:今なら窃盗と傷害罪だけで済むの。 わざわざ殺人未遂まで上乗せする事ないんじゃない? 289昴 :お前は煽りたいのか説得したいのか、どっちなんだよ。 290景織子:両方ね。 291健一 :ごちゃごちゃうるせえ! <景織子に向かって突っ込む> 292昴 :お、っと! <健一の手元を蹴飛ばす> 293景織子:動きが単調になれば、アンタが勝手にどうにかするでしょ。 294健一 :うおあっ!? <包丁を取り落とす> 295景織子:そちら、素敵なバックでございますねー。 金も出さねえで! いいご身分だこと! <健一に蹴り掛かる> 296健一 :ひいっ!? 297景織子:それ、いくらするかわかってんの!? <健一に蹴り掛かる> 298健一 :うわああっ! 299昴 :妙に威勢がいいと思ったら、そこか。 300景織子:あの引っ手繰られたバッグ、エルメスのケリーバッグよ、高級品よ! 私が欲しいくらいだわ! 301昴 :そうか、じゃあ誕生日に贈ろう。 誕生日いつなんだ? 302景織子:それ今しなきゃいけない話なの!? 303健一 :俺は何を見せられてるんだ!? 304昴 :まあ、冗談冗談。 ──キミは今、丸腰になった訳だ。 この通り。 包丁はこちらで確保したぞ。 305健一 :……ッ! 306昴 :先に話した通り、我々は警察と同等の権限を持っている。 ここで今、キミが大人しくしてくれたら。 どうにか便宜は計ってみようじゃないか。 307景織子:上手くいくかどうかはわかんないけどね。 ほら、わかったらソレ── 308健一 :<ナイフを取り出し、景織子に突っ込む> うるせえええええええええええ! <景織子、健一に足払いをして転ばせる。> 309健一 :いッ!? 310景織子:──こんなチンケなナイフじゃなくて、そっち。 アンタが引っ手繰ったバッグを寄こせっつってんのよ。 311昴 :まだ刃物を持っていたか。 <健一に歩み寄る> なあ、キミ。 312健一 :<徐々に後退る> いっ、 313昴 :先程から、俺じゃなくてキョウコを狙うのは。 女性だからか? 314景織子:こんなんでも探偵だからね。 アンタみたいな小悪党、一人でどうにかできちゃうわよ。 残念ね。 年の功、だったりして。 315健一 :ひっ……。 316景織子:ガキ。 まだお姉さんの言う事が聞けないのなら、 317昴 :我々で足止めした上で、特大の雷が落ちる訳だが。 318健一 :……っ、クソ、クソ! <駆け出す> 319昴 :脅かし過ぎたか。 ……あっちは正面エレベーターだな。 320景織子:屋上近くにしか止まらないんだっけ? どうにか、無事に確保できそうね。 321昴 :……待て。 322景織子:何よ。 323昴 :……このデパートの正面エレベーター、確かエレベーターガールが搭乗していたな……? 324景織子:待ってる場合じゃない! 何してんの、急いで追い掛けるわよ!? ほんとポンコツなんだから! 325昴 :あ、ああ! <百貨店内、エレベーター内。> 326健一 :くそ、動くな! 動くなァ! 全員、手挙げろ! 327亜芽理:お客様、 <ナイフを突き付けられて悲鳴を上げる> 328健一 :アンタも! 客殺されたくなかったら大人しくしてろ! 屋上へ行け、いいな!? 329亜芽理:は、はい、はい! 330健一 :エレベーター閉じろ! 331亜芽理:はい! <エレベーターが閉まる。> 332健一 :よし。 いいか、俺の指示に従えよ。 屋上だ、屋上へ行け。 どれくらいで着く。 333亜芽理:数分、掛かります……。 334健一 :わかった。 おい。 屋上に着いたら、そっちの家族連れは下ろしてやる。 こっちの兄ちゃんは俺が逃げる時に下ろしてやるよ、わかったな!? <溜息> ……よし、よし。 大人しくしてりゃ、殺さねえよ……。 <数秒、間。> 335健一 :……悪いな。 偶然とはいえ、こんな事になっちまってよぉ。 336亜芽理:え。 337健一 :裏口から逃げるつもりだったんだ。 それが、妙な連中に追い掛けられて。 あ、 <ナイフを下ろす> 悪い。 ナイフ突き付けられて身の上話なんかされても、困るよな。 338亜芽理:……。 339健一 :エレベーターガール、だっけか。 340亜芽理:は、はい。 341健一 :どういう仕事なんだ。 こうして一日中、エレベーターに乗ってるのか。 342亜芽理:あ……左様でございます、その。 お客様の、ご案内を……。 343健一 :働いてるとはいえ、そんな綺麗な身形してんだ。 あんたもどーせ、金持ちのお嬢さんなんだろ。 344亜芽理:……。 345健一 :ああ、悪いな、答え難いよな。 八つ当たりだった、すまん。 俺もアンタみたいに、真っ当な仕事に就けたらなあ……。 346亜芽理:真っ当な、仕事。 347健一 :もう、俺にはこれしか手がねえんだ。 臭い飯食って生きるのは構わねえ、そっちの方がマシなんだ。 348亜芽理:……。 349健一 :……あんたらみてえな、何も関係ねえ人間を巻き込んじまったのは本当に申し訳ないと思う。 恨むなら恨んでくれや。 檻の中からでよければ、いくらでも詫びはするからよ。 350亜芽理:あの、……申し訳ありません。 351健一 :んあ? 352亜芽理:臭い飯、とは……? 353健一 :……あ? 354亜芽理:あ、あなたが、罪悪感を抱いているのはよくわかりました。 でもごめんなさい。 ……私その、母が英国人でして。 355健一 :あ、ああ。 356亜芽理:日本語……ちょっと難しいのは、その……。 357健一 :<呆気にとられた後、苦笑する> ああ、だからそんなに美人なんだな。 あ、美人、ってのはわかるか? 罪悪感はわかるんだよな? 358亜芽理:わかります。 359健一 :そうか。 まあ、こんな美人におっかねえ思い、させてんだから。 捕まっても仕方ねえよなって事だ。 ……何やってんだろうなあ。 なあ、俺だってさ、上京した時は、ついこないだまでは。 自分がこんな悪さするなんて思ってなかったさ。 360亜芽理:……。 361健一 :……陳腐な、話なんだけどよお。 実家の母ちゃんが体壊してさあ、危篤だ、って……。 一度でいい、ちゃんとした病院に掛かれる金ができりゃ、それでよかったんだよ。 362亜芽理:お母さんに。 363健一 :ああ。 アンタ、母ちゃんエゲレス人なんだっけか。 こっちにいんのか。 364亜芽理:いいえ、英国にいます。 365健一 :会いたいよなあ。 366亜芽理:そう、ですね。 367健一 :……前科者の母親、生かした所で、なあ。 368亜芽理:罪悪感があるのなら。 369健一 :ん、 370亜芽理:人を害するのは悪い行いです。 でも、罪悪感があるなら。 あなたにも、きっとまだ生きる道は、まだまだ沢山あります。 お母様の体調が、どうあれ。 何事でも神の御心(みこころ)に適う事を、私達が願うなら。 神は聞き入れて下さいます。 371健一 :……あ? 372亜芽理:誰かの御心を知るには、まず、その人が私達に心を知らせる必要があります。 神様も、それは同じです。 どうしよう、と悩む前に、誰かに知らせなくては。 そうして善い行いをして、正義を求めるのです。 ……あぁ、その。 あなた一人で悩んでは、駄目です。 善い行いをすれば、神様は必ず見ていて、叶えて下さいます。 373健一 :……、やっぱお嬢さんは、喋る事から違うなあ。 374亜芽理:私はただのエレベーターガール。 あなたの言う通り、恵まれて育ったのだと思います。 でも、私は父のコネで仕事をしてるだけ。 そうして、自分で生きる道と、生かしたい人を決められるあなたが、私はちょっと羨ましい。 ……なんて。 375健一 :あ、ああ……。 376亜芽理:上へ、参ります。 必ずですよ。 今よりも。 きっと。 大丈夫です。 377健一 :……根拠は、あるのか? 378亜芽理:あなたは、罪悪感をきちんと持っているから。 379健一 :……そうか、そうかよ。 380天真 :あの。 お話の最中、とっても恐縮なんですが。 <健一の腕を掴む> 381健一 :へ? 382天真 :セエエエエエイ! <天真、健一に一本背負いを決める。> 383天真 :ん。 やっぱり持つべきは知識、ですね! 護身術の指南書を読んでおいて正解でした! 恐れ入ります。 僕、あなたが妙な連中と仰っていた人達と同じ、探偵事務所の所員なんですよね。 <百貨店屋上。エレベーターのベル音。> 384昴 :おお。 385天真 :十二時五十三分、確保しました。 エレベーターに乗られていた皆さん、怪我はありませんよ。 386昴 :よくやったな、テンマ。 さ、キミ。 387健一 :……ホンマケンイチ。 住所はねえ、無職。 388昴 :反省の意はあるようだな、何よりだ。 389景織子:<エレベーターの中に向かって> もう大丈夫ですよ、警察と救急車を呼んでいます。 気分が悪い方、いらっしゃいませんか。 あなたも一度降りて頂けるかしら。 お仕事中にごめんなさいね。 390亜芽理:ええっと……。 391景織子:我々は警察と同等の権限を持っています。 ちょっとお話を伺いたいので── 392閏 :なんだ、テンマの手柄になっちまったのかよ! 393珠枝 :なんだよ、ネズミ捕り、もうおしまいか? なあなあ、もうおしまいか!? タマ、もう一回やりたい! 394久々利:私達と一緒にいれば、また何回もできるから。 今日はおしまいですよ。 395珠枝 :ほんとか!? またできるか!? 396啓太 :あぁ、ドキドキしたー……! でも、僕犯人確保に協力したんだよって、ミキちゃんに自慢しちゃおー! 397久々利:大変勇ましくてとても心強かったですよ。 机が降ってきた時は驚きましたが! 398閏 :お前また机投げたのかよ……。 っと、警察着いたみてえだな。 399健一 :っ、おい! あんた、あんた! エレベーターガールのお嬢さん! 400亜芽理:私? 401健一 :名前! 何ていうんだ! 402亜芽理:え、 403健一 :俺、ケンイチ! ホンマケンイチだ! 404亜芽理:……ミヤシタ、アメリです! 405健一 :務所出たらその……俺、またミヤシタさんのエレベーターに乗るから! 親が決めた道でも、何でも! 頑張って働けよ! ありがとな! 406亜芽理:……その時は! 臭い飯じゃなくて、美味しいご飯! 食べましょうね! 大丈夫、必ず! 上へ参ります、です! 407健一 :ああ! じゃあな! 408景織子:……なんで良い感じになってんの? 409天真 :<笑う> なんででしょうね。 いや、早めにお助けするべきか迷いましたが……水を差さなくて本当によかった。 410閏 :なんだ、何があったんだよ? 411天真 :後でお話しますよ。 ──何事でも神の御心に適う事を、私達が願うなら。 か。 412久々利:えっ? 413亜芽理:母校の校訓、です。 お兄さん、さっきは本当にありがとうございました。 414天真 :あ、いえいえそんな! あなたの説得があったからこそ、僕は機を伺う隙ができたので……! 素敵な校訓ですね。 ちなみに何という学校の校訓でしょうか? 415亜芽理:聖エウカリス女学院といいますよ。 416天真 :ほうほう! 聖書か何かの引用でしょうか。 417亜芽理:ええっと、確か引用だったと……? 学校で習った事、きっと沢山混ぜてしまっていて。 418久々利:──……ヨハネの手紙。 第五章十四節から、十五節、ですね。 419天真 :お、 420亜芽理:あら。 あなたはもしかして、後輩でしょうか? 421久々利:あ、えと……はい、一応……。 422亜芽理:一応? 423久々利:……自主退学、したので……。 424亜芽理:そうでしたか。 探偵さんと聞きました、今度お礼をお持ちしますね。 425天真 :おお、ククリちゃんも女学校に!? 聖書、詳しい!? 僕も目を通した事はあるけど如何せん難しくて……! 今度、詳しく教えてもらっても!? 426久々利:……勿論。 いいですよ! 427閏 :おーい、解散だ解散! こんだけの騒ぎ起こしちまったんだ、今日はレストランじゃなくて 七福堂(しちふくどう)にするってよ! 428天真 :あ、はーい! 429亜芽理:ククリ、さん? 後輩がこんなに活躍しているなんて、とても嬉しい。 何かご馳走、させて下さい。 今度お礼と、ゆっくりお話でもどうですか? 430久々利:え、っと、ええ。 ……その。 431亜芽理:なあに? 432久々利:……その時でも、いつでも。 エウカリスの校訓について、お話して下さいませんか。 あの校訓は、私には── <七福堂、店内。> 433啓太 :ね、猫又……。 へええ。 434珠 :ケイタ! ハンバーグ美味い! 435景織子:美味いじゃなくて、美味しい、ね。 436珠 :ハンバーグ美味しいぞ! ケイタ! 437啓太 :そっかぁ、美味しいかあ、よかった。 そうしてキョウコさんとスバルさんの間に小さい子がいると、ご家族みたいですねー。 438昴 :そうか? 439景織子:そんな事ない! 微塵もない! 440珠 :キョーコ、タマいるの嫌か? 441景織子:ええい、子供が増えた……! 442閏 :お母さんも大変だなあ。 443景織子:お母さんじゃないッ! 444珠枝 :でっかければ嫌じゃないか!? キョーコ、タマの事好きか!? 445啓太 :おお……! 446景織子:でかかろうが小さかろうが好きだから! 早くハンバーグ食べちゃいなさい! 447珠枝 :うん! 448天真 :あはは。 ご覧の通り、大きかったり、小さかったり、なんです。 449啓太 :す、すごいね……? でも中身は変わらないんだね……? 450天真 :みたいです、あはは。 451久々利:ほらタマちゃん。 口の周り、ちゃんと拭きながら食べましょうね。 452昴 :ククリも人の世話ばかり焼いてないで、めいっぱい食べるんだぞ。 453久々利:些か腑に落ちませんが、はい! 454珠枝 :ククリはガリガリだからな! タマのメシちょっと分けてやろうか? ちょっとだぞ!? 455久々利:お気遣いありがとうございますいりません! 456珠枝 :う? 457景織子:タマちゃん。 458珠枝 :にゃ。 459景織子:メシ、じゃなくて、ご飯、ね。 460珠枝 :にゃ。 461景織子:お返事は、はい。 462珠枝 :……はあい。 463景織子:全く。 ジュンが面倒見てる所為かしら、言葉遣いがまるで育たないのよねえ。 464閏 :ああ!? 今日一日面倒見ろっつったの、姉さんだろ!? 465天真 :ククリちゃん。 466久々利:ん、はい。 どうしました? 467天真 :いやね、そのー……エウカリス女学院の話してる時、様子がおかしかった気がしたから。 僕、ちょっと興奮しちゃってて。 嫌な話だったかな……? 468久々利:ああ、いいえ! そんな事ありませんよ! そういえば、まだお話してなかったですよね。 私が女学校に通っていた事。 469天真 :──こうして、デパートでの大捕り物は幕を閉じた訳です。 今回、怪我人を一人も出さずに犯人を確保できたのは、彼の悪心を取り除いたのは。 「上に参ります」。 ──エレベーターで働く彼女のこの言葉だったと、僕は感じています。 言葉とは時に人を救い、そして時に言葉とは、刃に成り代わる。 470久々利:あの女学院での言葉は、私にとって。 少々、難しかったもので……。 471天真 :──それは、人の言葉でも、神の聖典すら、同じ強度で我々に降りかかるものなのです。 2021.4.14 初版 羽白深夜子 2021.7.23 更新 羽白深夜子 2021.12.9 更新 羽白深夜子 2022.4.4 更新 羽白深夜子 2024.5.1 更新 羽白深夜子 引用 新約聖書「ヨハネの手紙」
猫の子一人いない←
◆
→
サイトへ戻る
◆
文字サイズ変更:
A−
A
A+
行間変更:
詰
普
広
ナイトモード:
★